軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22-15 更に北へ

同日夕刻。

仁一行は『森羅』の居住地にいた。その居住地は賑わっている。

仁がやって来た、という話はあっという間に伝わり、各氏族からも多くの者が転移魔法で集まってきたのである。

「ジン、久しぶりね!」

一番喜んでいたのはシオンかもしれない。

「やあ、シオン、元気そうだな」

「ジン様、お久しぶりです」

シオンの姉、イスタリスもやって来た。その右腕はネトロスの左腕に絡められている。

その意味する所を察することができないほど仁は鈍くない。少なくとも他者に関しては……。

「エルザさんも、久しぶり」

「ん、元気そうで何より」

エルザの顔を見知っているシオン。お互いに挨拶を交わす。

「こちらは、俺の仲間で、サキ」

「初めまして、サキと言います」

「サキさん、ですか。どうぞよろしく」

「私は『 乖離(かいり) 』のオケアルス。よろしく頼む」

「私は『孤高』のアネモスデウスだ」

「あたいは『 諧謔(かいぎゃく) 』のドネイシアよ」

他の氏族からも多く集まり、忙しい挨拶の場となった。

一通り挨拶も終わり、場が落ち着いたところでシオンの祖父で森羅の氏族長、バルディウスが代表して礼を述べた。

「ジン殿、その節はいろいろとお世話になった」

「いえ、こちらにも思惑があったわけですし」

「いや、それでも、だ。貴公は我等の生き方を根底から変えてくれた」

「お役に立てたなら嬉しいですね」

「温室も素晴らしい。もう我等は飢える心配が無くなった。この冬も楽に乗り切れるでしょう」

そんな前置きのあと、仁は土産を差し出した。まずはペルシカ。

大きなコンテナに詰められ、100キロくらいはある。冬である今なら1週間くらいは十分に保つだろう。それが3箱。礼子でなければ運べないだろう。

「おお、ありがたい。冬の今、新鮮な果物は貴重ですのでな」

「皆さんで分けて下さい。それから、これを」

次に出したのはトポポの種芋だ。

「これはトポポといいます。寒冷地でも栽培できる作物で、春になったら植えて下さい」

「あっ! 以前お話されていた作物ですね!」

そう言ったのはシオンの母、ロロナ。農業に詳しく、前回、トポポの話だけはしてあったのだ。

「そうです。栽培法については、『アグリー』に知識を与えておきます。でもこの場で一つだけ。芽の出たトポポ、というよりトポポの芽は毒があります。食べないように」

「わかります。害虫にやられないようにとの自己防衛ですね」

ロロナは理解力があった。さすがシオンの母である。

「ジ、ジン様、わ、私、あれから少し上達しました!」

マリッカである。工学魔法の素質があったので、魔導具や農業用ゴーレム、アグリーなどの整備をさせようと仁が仕込んだのだ。

「おお、そうか。頑張ったな」

「はい! もうアグリーの整備でしたら大丈夫でしゅ!」

最後に噛まなければもっと良かったのだが、と、仁はほんの僅か苦笑を交えた笑顔を浮かべた。

「さて、今回の訪問の目的ですが」

いよいよ話は核心に。

集まった全員が、聞き耳を立てる。

「 古代(エンシェント) 竜(ドラゴン) 、という魔物の事をご存知でしょうか?」

「 古代(エンシェント) 竜(ドラゴン) ?」

「 古代(エンシェント) 竜(ドラゴン) ……もしかすると……」

大半の者たちが首を傾げた中、1人だけ心当たりがありそうな顔をした者がいた。

「ずっと北の方に、巨大な白いドラゴンがいる、という話を聞いたことがあるわ」

シオンであった。

「ええ、あたしの記憶力は確かよ!」

『森羅』の名のごとく、記憶力では氏族一を誇る、と、薄い胸を張るシオン。

「ふむ、そういえば儂も聞いた事があるかもしれん」

同じく、森羅のバルディウスも頷いた。

手がかりらしいことを知っていたのはこの2人だけ。

バルディウスはシオンに指示を出す。

「シオン、それならばお前はジン殿に付いていき、その『 古代(エンシェント) 竜(ドラゴン) 』を探す手伝いをせよ」

「わかったわ!」

この指示に、シオンは喜々として従った。

シオンの嬉しそうな顔に反し、仁の横に座るエルザは少し憮然とした顔をしている。

「エルザさん、サキさん、よろしくね!」

それに対して、ん、とだけ答えたエルザ。そしてサキは、よろしく、と言って頷いたのであった。

「ところで、ルカスはどうするんだ?」

シオンに忠実な少年従者である。その彼は後ろの方にいた。

「……ルカスは、まだ修業が足りないって言われて、一旦あたしの従者を外されたの」

小声でシオンが理由を話す。

確かに、前回の彼の行動を見る限り、まだまだ未熟だ。仁は納得し、ルカスの矜恃も考えてそれ以上突っ込んだことを聞くことはしなかったのである。

その晩は、仁たちはカプリコーン1の中で眠る。

冬の魔族領で眠るには少々不安があったのだ。

改造の効果は大きく、仁もエルザもサキも、快適に休むことができたのである。

そして翌朝。この日、月が変わり、2月1日となった。

仁、エルザ、サキは森羅の居住地で朝食をごちそうになった。そしていよいよ出発である。

「どう、この格好?」

仕度を調えてやって来たシオンは、真っ白な毛皮のコートと雪帽子という出で立ち。

「へえ、似合うじゃないか。雪の女王みたいだ」

銀髪、白い肌に、真っ白なコートと帽子は非常によく似合っていた。

「そ、そう? えへへ」

仁に褒められて嬉しそうなシオン。対してエルザは渋い顔をしているが、仁は気が付いているのかいないのか。サキはそんなエルザを見てすこしにやにやしている。

「そうやって2人並ぶと、ちょっと姉妹みたいにも見えるな」

プラチナブロンドのエルザと、銀髪のシオン。どちらも淡い水色の目をしていて色白。それを見た仁が、

「うん、2人とも可愛い」

などと珍しく賛辞を口にしたものだから、2人は、特にエルザは顔を赤くした。

サキはと言えば。

(ジンは相変わらずだなあ……これじゃあエルザも苦労が絶えないね)

などと心の中で思っていたりする。

「ジン殿、お気をつけて」

「ジン様、妹をよろしくお願いしますね」

「シオン、ジン様の邪魔をしないようにね。ちゃんとお役に立つんですよ」

「はあい。行ってきます!」

祖父、姉、母からの見送りを受け、シオンはカプリコーン1に向かった。

カプリコーン1は地面に腹這いになるような体勢で待機している。

「では行こうか」

まず仁が乗り込み、エルザに手を貸してエアロックに引き入れる。エアロックは2人でいっぱいなので、一旦外扉を閉め、エルザを中に。

内扉が閉まったところで再度外扉を開けると、シオンが少し焦ったような顔をしていた。

「と、扉を目の前で閉めないでよ! 置いていかれるかと思っちゃったじゃないの!」

「悪い。今度のカプリコーン1は寒さ対策で乗り込み方が変わったんだよ」

そう言いながら仁は手を差し出した。その手をしっかりと握るシオン。とはいえ、防寒手袋をしているわけであるが。

そしてエアロックへ。外扉を閉めないと内扉が開かないことを仁が説明すると、シオンは感心した様に頷いた。

「ふうん、考えてあるのね。これなら、外の寒さを中へ入れずに済むわけよね」

続いてサキ、そして最後に礼子が乗り込んでくれば、全員乗り込んだことになる。

「よし、行こう。まずは北へ向かう」

「わかりました。カプリコーン1、発進します」

ランド1の操縦で、カプリコーン1は動き出した。立ち上がり、歩き出す。

それを見送るバルディウス、イスタリス、ロロナ。

彼等は、カプリコーン1が雪原の彼方に消えるまで見送っていた。

「改造したというだけのことはあるわね。前より乗り心地がいいわ!」

久しぶりに乗ったカプリコーン1に、シオンがはしゃぐ。

中は暖かいので、防寒着は脱いでいた。今は動きやすそうなニットの服姿。

エルザより一回り以上小さく、身体も細い。まだまだ少女の体型だ。

……などという感想を仁が抱いていると、シオンとエルザの双方から睨まれた。サキはといえば、窓に張り付くようにして外を見ている。

「シ、シオン、このまま北へ、でいいのかな?」

誤魔化すように仁が言うと、ジト目のままシオンが答える。

「『福音』の氏族領を目指すのよね。で、カプリコーン1の速度って時速30キロくらい? だったらまず北へ行けば川にぶつかるから、渡って更に北へ、というのが分かりやすいはずよ」

まずは『福音』の氏族領へ行き、更なる情報を得ようというのだ。

上空ではスカイ1が乗るファルコン1が支援のために待機しているので、現在地に対する心配は少ないが、やはり現地をよく知る者がいるというのは助かる。

仁たちはそのまま順調に北へと進んでいったのである。