作品タイトル不明
21-36 見つけたもの
坑道内部には『ゴリアス』が入るのは無理であるから、作業は全て隊員たちが行うことになる。
が、崩れているのは入口付近が主だった。坑道内部は、岩が散乱しているとはいえ、なんとか人一人が通れる程度には隙間が空いていた。
「狭い、が、なんとか通れそうだ」
クライン王国調査隊が先になって入っていく。とはいえ、女性騎士たちは外で待機。
また、『ゴリアス』への命令権を持つフリッツも外で待つこととなった。
「では、行ってくる」
そんな言葉を残して、クライン王国調査隊は隊長のベルナルド以下5名、そしてエゲレア王国調査隊は隊長のブルーノ以下5名に加え、ジェード・ネフロイ。
計13人が坑道内部を目指したのである。
「内部は空気が澱んでいることが多い。慎重にな、ベルナルド殿」
「承知」
魔導ランプで足元を照らしつつ、ベルナルドはゆっくりと進んでいった。
隊員たちは、どかせる岩はどかし、少しでも歩きやすくしていく。
そして一番後方のジェード・ネフロイは、工学魔法『 圧力風(ブロア) 』を使い、新鮮な空気を送り込んでいた。
そうやって進むことおよそ20メートル。
その先に広い空間があった。壁も天井も床も滑らかに加工されており、ホールのように見える。
「おお?」
「あれは?」
ホールの奥に見えたもの。魔導ランプの光を反射し、金色に輝く物が多数。それは奥に積み重なっていた。
ベルナルドが近付いてみると、それは金でできた円柱状の物体。直径は30センチ、高さは50センチくらいか。
そっと1つを揺すってみると、動く。
「ふむ、内部は空洞かな?」
ゆっくりと持ち上げてみると、重いがなんとか持ち上がる。
ぽちゃん、という音が聞こえたので、中には液体が入っているようだ。要するに小型のドラム缶である。
「ジェード殿!」
ベルナルドはエゲレア王国の 魔法工作士(マギクラフトマン) 、ジェード・ネフロイを呼んだ。
「お呼びですか?」
「済まないが、この容器は金であろうか? 調べてみて欲しいのだ」
「わかりました。『 分析(アナライズ) 』……間違いなく金ですね」
「中に何が入っているかはわからないかな?」
「はい、すみませんが、液体であること以外は……」
工学魔法『 分析(アナライズ) 』は、本人が知らない物は結局わからないのである。
「うむ、それでもこれだけの金が手に入れば、財政は一息つけるだろう」
金の容器はざっと50はあった。中身を差し引いてもその量は20キロくらいはあるだろう。とすれば全部で1トン。
時価、グラムあたり300トールとしたら、3億トールになる。
「すごい量ですな」
ブルーノも感心している。1トンの金。それは国家の予算を潤してくれるだろうからだ。
「運び出せ」
ベルナルドは部下たちに金の容器を運び出すよう命じた。
おおよそ成人男性一人分くらいの重さなので、なんとか抱えて運び出すことができた。
隊員たちは何往復かして、容器を外へ運び出していく。
容器の数が半分くらいになると、その陰に隠れていた別の容器らしき物が見えてきた。
大きさは同じ。だが、色が違う。銀黒色をしたその色に、ベルナルドは覚えがあった。もちろんブルーノにも。
「『 分析(アナライズ) 』……予想どおりですね」
ジェード・ネフロイが調べた結果、それはアダマンタイト製の容器であった。それが10。
ベルナルド持ち上げてみると、先程の物よりは軽い。金よりも稀少であるアダマンタイト。その強度は金の数百倍以上、薄く作られているのは明らかだ。
それでも、推測では1つあたり10キロ。10で100キロ。
アダマンタイトは時価にするとキロあたり1000万トール。つまり10億トールである。
加えて、アダマンタイトという稀少金属が手に入ったということは、大きな利益であった。
ベルナルドは、これも運び出させることにした。
「ふうむ、これは大層な物が手に入ったものだ」
他に何かないかと、部屋の中を探してみるベルナルドとブルーノ。
「うん?」
ブルーノが何かを踏んだ。
「これは?」
拾い上げてみると、鉄の板らしい。
このホールはかなり湿度が高いため、赤く錆び付いており、表面に書かれていたであろう文字もほとんど読めなくなっていた。
「……こ……に……を……封……触れる……ず……険……」
辛うじて読めたのはそれだけ。何が何やらわからない。
「あとは何かないのかな?」
魔導ランプの光で照らしてみるが、もうめぼしいものは見つからなかった。
「ふむ、だが、貴重なものが手に入ったようだ」
ベルナルドは、総計13億トール以上になるであろうこの発見物をどう分配すべきか考え始めていた。
その時である。
「ぎゃああああ!」
外から隊員の声が響いた。
慌てて運んで容器を持ったまま転んでしまったらしい。
「おう、どうした」
容器を置いてきて身軽な隊員がその男を助け起こそうとしたが、突然仰け反った。
「うぎゃあっ!」
「ど、どうした!?」
「手、手が!」
その隊員の掌は黒っぽく変色していた。
どうやら、容器に穴があいていて、転んで落とした際に中の液体がこぼれたようだ。
もろに被った隊員はのたうち回っている。
「液体に触れるな! 気を付けろ!」
慌てて指示を出すブルーノ。ベルナルドは反応が遅れていた。
「ど、どうしたというんだ!?」
外にいたグロリア達女性騎士たちが駆け寄ろうとしたが、ブルーノはそれを止めた。
「寄るな! 水だ、水を掛けてやれ!」
幸いにして、ボッツファ遺跡のそばには細いながら川が流れていた。
何が何やらわからないまま、女性騎士たちは大きな容器に水を汲んできて、痛さで呻く騎士に掛けた。
手をやられた騎士は自分で川まで行き、流れに手を浸す。それで少しは痛みも収まったようだ。
「……一体何があったんですか?」
騎士たちが運び出した金の容器を、『ゴリアス』で並べ直していたフリッツが、今し方遺跡から出てきたベルナルドに尋ねた。
「……よくはわからんが、容器の中身は危険物だったらしい。転んだ拍子に中身を被ってしまった結果があれだ」
治癒を担当している女性騎士、ティファニー・バルダックがその騎士の治療をしていた。
「これは酷いです……いったい何なんですか?」
両手と胸元が焼け焦げたような色になっている。水を掛け、冷やしているが、痛みはかなりのものらしい。
それでも、繰り返し水で流していると、少しずつ痛みも引いてきたようである。
「『 快癒(リカバー) 』」
ティファニーが使える最高の治癒魔法、外科用中級の『 快癒(リカバー) 』である。これにより、かなり容態は良くなったようだ。
「一安心か」
その頃には、残った隊員たちが、金の容器とアダマンタイトの容器全てを運び出していた。
「金の容器の中身は全てこの液体なのだろうか?」
「可能性は高い。危険なので金の容器に入れたのかもしれん」
ベルナルドとブルーノの両隊長は相談をしていた。
「そうすると、アダマンタイトの容器の中身はいったい何なのだろうか?」
それに答えられる者はこの場には誰もいなかった。
その日は、その場で野営することになったのであった。