軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21-26 ウーゴン集落

シーパ4頭を一瞬で斬り倒したフリッツの早業を見た、クライン王国の面々は息を呑んだ。

190センチ、96キロというその巨躯に、少々腰の引けていた女性騎士たちも例外ではなかった。

「……フリッツ様、素敵」

そんな言葉を囁き交わす部下を見て、グロリアは苦笑する。

そのグロリアが目を惹かれたのは彼の持つロングソードだったのである。

馬を急がせて、フリッツに並ぶグロリア。そして早速、剣について質問を飛ばした。

「フリッツ殿の剣は凄いのだな」

この質問の『剣』を、フリッツは『剣術』の意味で捉えた。

「ああ、ショウロ皇国騎士は馬上での剣技を重視するからな」

「いや、そうでなく……」

「ん?」

グロリアは正直に、剣の切れ味に感心した、と説明した。

「はは、そういうことか。このロングソードは別に特別なものではないぞ? さっきのは……単に力任せにたたっ斬ったんだからな」

「い、いや、それでも、相当の強度がないと、曲がるか折れるかするわけでだな」

「……そういうものなのか?」

よくわからない、という顔をするフリッツ。

「フリッツ殿は剣を折ったことがないのか?」

それにフリッツは即答。

「無いな……」

「なんだと……」

絶句するグロリア。グロリア自身、剣を何本も、いや、十何本もこれまでに折っている。

稽古でも折ったし、魔獣との戦闘でも折った。が、そのほとんどがなまくら、というか低級な剣だったわけだが。

「もし良ければ、後ほど剣を拝見したいのだが」

「ああ、構わんぞ」

その返答で満足したグロリアは、馬の位置を下げ、本来のポジションに戻した。つまり、一行の中央部である。

因みに、 殿(しんがり) すなわち最後尾は隊長のベルナルドである。

戻ったグロリアの隣に、副官が馬を並ばせてきた。

「副隊長、フリッツ様と仲がおよろしいんですね」

「ん? 単に気になることがあったから聞いてきただけだぞ?」

「……ほんとですか?」

「ああ、本当だ」

「……良かった」

そう言ってうっすらと微笑んだ副官の顔を見たグロリアは、おや? とは思ったものの、それ以上突っ込むことはしなかった。

ローランドの声が響いたからである。

「あそこにいるのはウーゴン集落の人です!」

遙か彼方に2〜3人の人影が見える。

「私が行って話を付けてきます! 皆さんはここに留まって下さい!」

そう言ってローランドは馬を走らせた。

「待て、私が付いていこう」

グロリアがそれに続いた。女性騎士なら、男の騎士よりは警戒されないだろうという考えからだ。

およそ500メートルの距離を駆け抜け、2人はウーゴン集落の者と思われる人間のそばに近付いた。

「私です。ローランドですよ」

ローランドは手振りでグロリアを押し止め、自分が先行しながら近付いていく。

そこには3人の男がいて、何かを手にしていた。地面から掘り出したものらしい。

「地蜂の巣ですね!」

ローランドの言葉に、3人は無言で頷いた。どうやら、背後にいるグロリアを警戒しているらしい。

それを感じ取ったローランドは、

「心配はいりません。あの人は私を護衛してくれているんです。私が保証します」

と言って宥める。そして背後の巨大ゴーレムや騎士たちを指差し、説明する。

「今回は、クライン王国からエゲレア王国に抜ける道を調べに来ているんです。そうそう、手土産のシーパもありますよ」

「シーパ、ですか!」

「ええ、それにいろいろ持って来ています。集落まで案内していただけますか?」

などと、説明したり宥めたり。そして最終的にグロリアに、伝言を頼んだ。

「グロリアさん、戻って隊長に伝えて下さい。この人たちに先導してもらい、集落へ行きます。100メートルほど離れて付いて来て下さい、と」

「わかった。貴殿を信用しよう」

グロリアは、親しげに話しているローランドたちの様子を見、馬の向きを変えた。

それからの行程は順調だった。速度は先導する者たちに合わせたためゆっくりになったものの、ローランドの記憶よりも集落は近くにあり、午後3時過ぎには目的地、ウーゴン集落に到着したのである。

「ほう、ここがウーゴン集落か」

一行はそれなりに歓迎された。ローランドの言ったように、獲れたてのシーパがものを言ったのである。

人口は100人くらい、皆、木で作られた家に住んでいる。造りがやや荒い以外、クライン王国の村と変わりはない。

着ている服も、やや古びてはいるものの、小群国の住民と遜色はなかった。

隊長のベルナルド以下、騎士たちは、集落の外れにテントを立て、野営の準備。『ゴリアス』も、威圧感を与えぬよう、同じく遠ざけてある。

早速ローランドは、単身、集落の長に会いに行った。長はラリアーグという名前で、今年67歳になる。

「長、ご無沙汰してます」

「おお、ローランド殿か。3年ぶりかの」

「そうなりますかね。相変わらずお元気そうで」

「はは、ここの暮らしが 性(しょう) にあっているのだな」

そんな当たり障りのない話から始まり、次第に核心へ。このあたりは、ローランドの独壇場である。

「今回の目的は2つあります」

「ふむ、伺おう」

「クライン王国とエゲレア王国を結ぶ街道を作ることが1つ」

これにはラリアーグも同意する。

「わかる。今の街道状況では、セルロア王国を経由しないと、その2国間は繋がらないからな」

「ええ、そうなんです。そして今一つは、食糧の買い付けです」

「ん? どういう意味かな?」

今一つ意図が伝わらなかったらしく、ローランドは更なる説明をすることに。

「昨年末、クライン王国やセルロア王国は不作で、しかも収穫した穀類がカビにやられたのです」

「なんだと?」

「それで、今年の3月前には食糧の備蓄が尽きそうでして」

そこまで言えば、ラリアーグにも察しがついた。

「なるほど、我々からも食糧を手に入れたい、と」

「ええ。まあ、一番は街道の整備なんです。エゲレア王国やエリアス王国は不作ではなかったようなので」

「わかった。我々とて、そうそう備蓄があるわけではないからな」

「それはわかっています。ハチミツ、シトランを買い付けていきたいのですよ」

「ふむ、いつものことだな。少し量を多めに、といったところか」

「ご明察、畏れ入ります」

こうして、ローランドの役目は終わる。これ以降は、隊長であるベルナルドが直接交渉することになった。

「シーパを狩り、その肉を王国に送りたいと思っています」

ベルナルドは、こういう交渉を任されただけあって、居丈高な話し方はしなかった。その点で、ラリアーグも心を開いた。

「ふむ、乱獲には気を付けていただきたい」

「わかっております」

獲りすぎれば数が減り、いずれ自分たちにツケが回ってくる、ということをラリアーグもベルナルドも心得ていた。

「それから、南への案内をどなたかに頼みたいのですが」

ローランドはここからハチミツとシトランを持って引き返す事になる。そもそもここまでの道しか知らないのだから当然だ。

「南への道はないが」

ラリアーグは残念そうに言った。

「ええ、それは予想していました。ですので、あの巨大ゴーレムがいるのです」

灌木くらいなら踏みつぶせるし、森を切り開くのも簡単だ、と説明する。

「食糧や装備は全て持たせるので、同行してくれるなら本当に身の回りのものだけ持っていれば十分ですよ」

「ふむ、行く価値はありそうですな」

ウーゴン集落としても、南への道ができるのは歓迎すべき事だ。

ラリアーグとベルナルドは詳細な話を開始したのである。