軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20-38 閑話37 ミツホ、その後

老君は時間を掛け、アキツからコピーした 制御核(コントロールコア) の情報を解析していた。

それが終了したのは、仁が、エルザの育ての母親に会いに行った日であった。

『報告は 御主人様(マイロード) がお戻りになってからですね』

そして老君は、ジョン・ディニーのコントロールに集中するのであった。

* * *

時間は少し戻り、仁がアキツを修理した日、ミヤコの町。

ジョン=老君は、 転移門(ワープゲート) を使い、首長の部屋の奥へと戻ってきた。

扉を開ければ、首長ヒロはまだそこにいて、ジョンを見て驚いたような、嬉しいような表情をした。

「ジョン殿、戻ったのか!」

「ええ、遅くなりましたが、戻りました」

「そうか……」

緊張の糸が切れたように、首長ヒロは机に突っ伏した。

「……貴殿が戻ってきたと言うことは、アキツ様は……」

「ええ、直りましたよ。ドームに修理用の素材が保管されていましたので」

ジョンは、誤魔化すために一部、嘘をつくことにした。

「おお……!」

椅子を跳ね飛ばすように立ち上がったヒロは、ジョンに駆け寄り、その手を取った。

「ジョン殿! 感謝する! ……戻ったばかりで悪いが、もう一度私と共にアキツ様のところへ行ってもらえるだろうか?」

「ええ、構いません」

ということで、2人は再び扉を開け、 転移門(ワープゲート) により転移した。

「アキツ様……!」

首長ヒロはアキツの足元に 跪(ひざまづ) いていた。

そんな彼を、アキツは優しく促して立たせる。

「おやめなさい、ヒロ。私は単なる『 自動人形(オートマタ) 』。敬われるような存在ではありません」

「いえ、アキツ様は我々の師であり、先達であり、教官であられます。敬意を持って接するのは当たり前です」

立ち上がったものの、ヒロは敬意を引っ込めることはなかった。

「もう……すっかりよろしいのですか?」

「ええ、もうこのとおり」

アキツはゆっくりと立ち上がり、その場でくるりと回って見せた。

それを見たヒロの目から涙がこぼれる。

「……思えば、幼い頃、同期の者11名と共に貴女様の教えを受けてより幾星霜、お元気になられた貴女様のお姿にお目にかかれるとは……!」

「大袈裟ですね。ですが、その様子ですと、教えを守っているようですね」

「はい。民主主義の要諦と、愚民政治の弊害、そして最大多数の最大幸福、功利主義の危うさ、個人の人権を守ることの大切さ、などは今も耳に残っています」

「嬉しいですね。これからも努力してください」

「はい、アキツ様」

そして首長ヒロはジョンに向き直った。

「ジョン殿、どれほど感謝してもし足りない! 貴殿は我等の救世主だ」

そんな2人を、アキツは微笑みながら無言で見詰めていた。

* * *

「ジョン殿、万歳!」

「救世主ジョン殿!」

ジョンとヒロが執務室に戻り、それから『議会』に顔を出すと、もう夜も更けたというのに、全員が揃っていた。

もちろん、ジョンの成功の知らせを待っていたのである。

そして首長ヒロからアキツが健全な状態になったことを知らされると、大騒ぎになり、

「いやあ、ジョン殿、貴殿が来て下さってどれほど助かったか」

「ジョン殿、うちらの感謝の印や。どんどん飲んでーな」

と、そのまま宴会に雪崩れ込んだのである。

苦笑しつつも、ジョンは彼等に付き合う。その先にあるものを目指すために……。

* * *

「ジョン・ディニー殿、貴殿をわがミツホ国の『名誉 魔法職人(マギスミス) 』に任じる」

首長ヒロが厳かな声音で告げる。

本当なら、名誉国民、筆頭 魔法職人(マギスミス) なども贈られる予定だったが、ジョンが固辞したのである。

宴会の翌日、ジョン=老君の叙勲式が行われた。立会人は『議会』のメンバー。

「そして、これで貴殿は正式に我がミツホの国民である」

一礼をするジョン。

「さて、これからについて、希望はあるかね?」

家でも土地でも求めてくれ、とヒロは言ったが、ジョンの答えは決まっている。『他の土地にも行かせて下さい』だ。

「それは望むところだ。アキツ様のような存在が各地にいらっしゃるはずだ。彼等を全て直してもらえるなら、こんなに助かることはない」

「やってみましょう。もともと私は、広い世界を見るためにやって来たのですから」

「本当にいいのかね?」

「ええ、もちろん」

「わかった」

こうしてジョン=老君は、ミツホ国南部の地図と通行権を得る事になった。当然、路銀も。

「この地図は対外的には極秘扱いにしてもらいたい」

「それはもちろんです」

地図には、南へ向かう街道と町の名前、そして南部の地形が記されていた。

「できれば、南部の都市、オサカとナントには立ち寄って欲しい。それから、大きな町ではないが、海辺の町トサ。この3箇所は古い歴史のある町だ」

「分かりました、感謝します」

ジョンは礼を言った。

「私からの意見があるのですが、よろしいでしょうか」

「おお、もちろんだ」

首長ヒロはじめ、その場にいた全員が頷いた。

「私の師は、ジン・ニドーと申します。各国に認められた『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』です。師に比べたら、私などは子供、いえ、赤子のようなもの」

「ほう……」

多くの者が息を呑む。

「ですが、その性格は穏和にして、争い事を嫌います。そして何より、モノ作りを愛しています。もし、彼の名を聞いたら、好意的に振る舞って下さい」

「よくわかった。ジン・ニドー殿だな。その名、しかと覚えた」

ヒロが代表して答えた。

「ありがとうございます。それでこの国も更なる発展が見込めるでしょう。そしてもう一つ」

「うむ、なんだね?」

「お隣のショウロ皇国の現皇帝は平和を好むお方。その方の 下(もと) には、優秀な 魔法技術者(マギエンジニア) が集っています。出来うるなら、彼等とも友好を」

この言葉にも、全員が頷いた。

「それはもちろんだ。我々も争いは好まない」

「それを聞いて安心しました」

ジョンは深く頭を下げた。そしてはっきりと告げる。

「明日、発ちます」

「そうかね。気の早いことだが、また会えることを願っているよ」

「ええ、私もです」

「ジョン殿にはゴーレム馬がある、旅も楽であろうな」

「ええ、途中の町も訪れながら、ゆっくりと行きますよ」

「うむ、今は冬だが、南部は暖かい。旅をするには好適であろうな」

こうして、一つの山を越えたジョン=老君は、ミツホ国にまつわる謎を解くため、旅に出たのであった。