軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

03-06 製作開始!

港には、併設された小型の貸しドックがあり、そこがマルシアの作業場でもあった。今は双胴船もそこに格納してある。

「ほら、ここがあたしの作業場さ」

「よし、礼子、そこに下ろしてくれ」

「はい」

礼子は青銅のインゴットをドックの床へと下ろした。

「さて、まずはこいつを精錬しないと」

仁のその呟きを聞いたマルシアは、

「え? ジン、今『精錬』って言ったかい?」

「ああ。それが何か?」

「いやいやいや! これは買ってきたばかりのインゴットだろ!?」

だが仁は苦笑して、

「ああ、だけどな、こいつには不純物がかなり入っているんだ。砒素とかビスマスとか鉛とかだな」

「え? え? え? よくわからないけど、さっきの材料屋は、知っててそんな物を高く売りつけたのかい?」

「残念ながらそういうことだな」

仁がそう言うとマルシアは顔を怒りに染めて、

「くっそ! あの材料屋め! 文句言ってやる!」

だが仁はそんなマルシアを押し止め、

「よせよせ。時間の無駄だ」

だがマルシアの怒気は収まらない。そんなマルシアに声を掛けたのは礼子だった。

「マルシアさん、そんなことより、見ていてごらんなさい。おと……お兄さまの妙技が見られます」

「え?」

そう言われたマルシアが仁を見てみると、

「『 精錬(スメルティング) 』」

インゴットが一瞬光ったかと思うと、次の瞬間にはそこに含まれていた不純物が分離された塊になって転がっていた。

「へ?」

「これでよし」

「い、今何したんだい?」

マルシアは自分の目を疑っていた。

「え? 不純物を分離しただけだけど」

淡々と語る仁である。

「だけだけど、って、そんなことが何で簡単に出来るんだい!?」

片やマルシアは興奮している。

「何で、って、 魔法工作士(マギクラフトマン) だから?」

「何で疑問形なのかわからないけど……はあ。まあいいさね。で、次は?」

段々、仁のやり方に一々驚いていられなくなってくるマルシアであった。

「ゴーレムを形作る。…… 変形(フォーミング) 。 変形(フォーミング) 。 変形(フォーミング) 」

工学魔法、 変形(フォーミング) を連続して掛け、ゴーレムを造り上げていく。もう蓬莱島では何体も造っているので慣れたものだ。

「な、な、ななな……」

「これでよしっ、と。次は 魔素変換器(エーテルコンバーター) 、 魔力炉(マナドライバー) 、それに 制御核(コントロールコア) だ」

ポケットから 魔結晶(マギクリスタル) を3個取り出した仁。それを見たマルシアの顎が落ちそうになる。

魔結晶(マギクリスタル) は 魔石(マギストーン) の10倍以上の値が付くのだから。

「なんでそんなものが無造作にポケットから出てくるんだい!」

礼子はそんなマルシアの背中をぽんぽん、と叩いて、

「おと……お兄さまだからですよ」

マルシアはがっくりとくずおれたが、すぐに立ち直り、

「そうだよな、別にまずいわけじゃない。むしろ、ジンと引き合わせてくれた運命に感謝しなきゃな!」

意外と立ち直りが早いマルシアである。その間に仁は礼子に手伝わせて、細かい修正などの作業を進めていた。

「よし、これで大体終わりだ。あとは……」

それまで仁の製作ぶりを見ていたマルシアだが、

「……なあジン、このゴーレムって女型なのかい?」

「ん? そうだよ。というか、『 仕上(フィニッシュ) 』、と」

「…………」

そこに横たわるゴーレムのデザインを見て絶句するマルシア。

「さあ出来たぞ。……ん、マルシア、どした?」

あんぐりと口を開けているマルシアを見て仁が尋ねた。と、マルシアは我に返って、

「なあジン、あたしの目がおかしくなけりゃあ、このゴーレムって……」

「ああ、マルシアがモデルだよ」

「やっぱり!」

そう、仁が作ったゴーレムは女性型というだけでなく、マルシアそっくりだったのだ。もちろん表面はゴーレム特有の金属光沢をしてはいるが。

「操船者と瓜二つのゴーレムってなんかいいじゃないか」

「あんたね……」

かなりというかほとんど忠実なボディラインを見て、マルシアは呆れていた。と言うかどうして仁は自分の体型がわかるのだろう。

実はそれはそばで手伝う礼子のおかげ。礼子の目には透視機能も付いているのだから。体型を熟知している礼子が細かな修正を行っているのだ。

「で、と。……マルシア、ちょっと来てくれ」

ゴーレムに屈み込んでいた仁がマルシアを手招きする。

「ん?」

同じく屈み込むマルシアに仁は、

「このゴーレムにマルシアの船に関する知識を転写するから、船に関することだけを考えていてくれ」

「はあ?」

驚きの種が尽きないマルシアである。普通のゴーレムは、起動してから時間を掛けて知識を与えていくのが普通であったからだ。

「それじゃあいいか、いくぞ…… 知識転写(トランスインフォ) 、レベル3」

最近は必要に応じて 知識転写(トランスインフォ) のレベル分けが出来るようになり、楽になっている。

「うわっ!?」

知識転写(トランスインフォ) の魔力が頭を貫いたので驚くマルシア。だが仁は続けて、

「 隷属(マスタースレーブ) 。1位はマルシア、2位俺、3位礼子」

命令系統を定めてしまう。

「よし、これで全部終わった。……ん? マルシア、どうした?」

ぐったりしているマルシアを見て仁が尋ねた。マルシアは半ば呆れて、

「……何でもないよ。で、もうこいつは動くのかい?」

「ああ。今起動する。 起動(おきろ) 」

するとゴーレムが起き上がった。

「マルシア、こいつに名前を付けてやってくれ」

仁がそう言うと、

「え、あ、あたしが?」

慌てるマルシアだったが、しばらく首をひねった後に、

「それじゃ、アローにしようかな」

「ハイ、ワタシハあろーデス」

「わっ、しゃ、しゃべった!」

最早何度驚いたかわからないマルシアであった。

出来上がったゴーレム、アローをしげしげと眺めるマルシア。その結果、口にしたのは、

「やっぱり青銅が足りなかったんだね」

「え?」

「だってさ、船を漕ぐゴーレムは例外なくごつい体格の物ばかりじゃないか。だからアローを女型にしたんじゃないのかい」

そう、オールやパドルを漕ぐため、そういったゴーレムは皆、特に上半身がごつく出来ていた。だがアローはマルシアと同じ外見。腕だって男性型に比べたら随分と細い。

力が必要なゴーレムに、女性型は不利であろう。

だが仁は笑いながら、

「だってこいつは腕を使わないからな。それに、ゴーレムの力ってのは大きさじゃないんだぜ」

ちらりと礼子を見ながら仁は言った。

「ふうん? とにかく、ジンが普通の 魔法工作士(マギクラフトマン) じゃないことだけはわかったよ」

「はは、それはなにより」

そう言いながら、残っている青銅を前にした仁は、再び 変形(フォーミング) を連続して使用する。

みるみるうちに、水車のような部品と、丸い輪のような部品、そしてくねくねと折れ曲がった部品などが出来ていった。