軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19-09 ラインハルト受爵

11月7日、仁の屋敷に来訪者があった。

「やあ、ジン、いい屋敷だな!」

ラインハルトである。今回、女皇帝からお呼びがかかったそうだ。

「ジン様、この度の『帝室名誉顧問』拝命おめでとうございます」

先日の『反動魔法討論会』の時、ベルチェは出席していなかったため、この場で仁にお祝いの言葉を述べた。

「ありがとう」

仁も素直に祝辞を受ける。

「ラインハルトも今度男爵位を授かるんだって?」

「ああ、おかげさまでね」

仁と共に乾燥剤プラントを立ち上げ、国に功績があったということで男爵位が与えられることになったのである。

仁のところには昨夕知らせが入った。

「大半はジンの功績なのにな。申し訳ないよ」

「なんだ、そんなことか。技術よりも、それを一般庶民で生産できるように道筋を付けたことが評価されたんだろう?」

「いや、それを言ったらトアさんのおかげだし」

ラインハルトは謙虚である。そんなところも彼らしいと仁は思う。

「で、今日はどうしたんだ?」

「あら、ご存じないのですか? 今日、 宮城(きゅうじょう) で叙爵式があるんですのよ」

「え?」

仁はエルザを見た。

「ん。知ってる」

「……俺は知らないぞ?」

「昨日の朝、ちゃんと 宮城(きゅうじょう) から連絡があった。ジン兄も聞いてるはず。ちゃんとバロウが報告していたから」

「えーと……」

前々日、シーデが遊びに来ていたので、蓬莱島で鰹節を使った味噌汁を食べるというわけにいかなかったため、昨日に繰り越したのである。

なので、仁は朝から楽しみにしていて落ち着かず、バロウの報告を右から左に聞き流したと思われた。

「あー……すまん」

「ジンは相変わらずだな」

苦笑するラインハルト。

「で、ジンがもらったという屋敷を見せてもらいに来たのさ」

「ああ、そうだったか。ならちょうどいい。ラインハルトもロイザートに来た時は遠慮なく使ってくれ」

空いている客間の好きな所を専用にしてくれていいから、と仁は笑った。

「そうか、それはありがたいな。今までは父の屋敷に寄らせてもらっていたんだが」

そう言ってラインハルトは笑った。

「それじゃあ、ベルチェと共に屋敷内を見せてもらうか」

「トパズ、案内してやってくれ」

「承りました」

ラインハルトとベルチェがトパズの案内で屋敷内を見に行くと、仁はエルザに小声で言った。

「……ラインハルトにお祝いあげなきゃな」

「うん。ジン兄、何にしよう?」

仁とエルザは考えた末、熱気球を贈ることにした。

特別仕様として、気嚢の材質を 地底蜘蛛(グランドスパイダー) の糸……『 地底蜘蛛絹(GSS) 』で作るなどする予定。

見かけは普通の熱気球だが、中身は大違い。気嚢にはラインハルトの紋章……と思ったが、

「一家を構える、なら、きっと新しく紋章を作る、と思う」

とエルザに言われ、紋章は最後に入れることにした仁である。

* * *

同日午後1時。

「それじゃあ、先に行くよ」

主賓の1人であるラインハルトは、ベルチェと共に一足先に 宮城(きゅうじょう) へと向かった。

仁たちは1時間ほどあとからの出発である。

午後2時。仁とエルザ、そしてハンナは 宮城(きゅうじょう) へ向かった。礼子とエドガーももちろん一緒である。

女皇帝直筆の通知には、ちゃんとハンナも連れてくるように、と書かれていたのである。

仁と礼子はそれぞれもらったばかりのマントとローブを羽織って。ハンナはドレス姿で。

悩んだのはエルザであった。

他の貴族、例えばテオデリック侯爵や、ラインハルトの父であるランドル伯爵が出席する公の場で、自分の立場をどうするか、ということに悩む。

わかりやすく言えば、 魔法技術者(マギエンジニア) エルザ・ランドルと名乗るのか、 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) ジン・ニドーの妹、エルザ・ニドーと名乗るのか、ということである。

父であるゲオルグが子爵位を剥奪されていたが、女皇帝からはエルザが一家を立ち上げるつもりがあるなら考慮する、と言われてはいた。

が、エルザはその返事をしないまま、今日まで来てしまっていたのである。

(……分家であるランドル家を再興する、それよりも……)

エルザは仁のそばにいたかった。できれば、妹以上の存在として。

「……決めた」

小さな声で呟いたエルザは、クローゼットから服を取り出した。

* * *

「おにーちゃん、おしろ行くの?」

ハンナは、先日顔を合わせた女皇帝からの招待と聞いてはしゃいでいる。

今回、仁たちが乗るのは蓬莱島から持ち込んだゴーレム馬車。ゴーレム馬2頭が牽くタイプのもの。

新造したもので、デザイン的に変わってはいないが、仁が拝領したマントと同じく、仁の紋章とショウロ皇国の紋章が付いている。

御者はバトラーDに任せることにした。スチュワードは今現在蓬莱島にいる。

「エルザはまだかな?」

「あ、おねーちゃん来たよ」

エドガーに伴われ、エルザが少し急ぎ足でやって来た。

「わあ、おねえちゃん、きれい!」

彼女の出で立ちは、エルザが好む若草色系のドレス。コーディネイトは洗練されており、仁も素直に綺麗だと思う。が、どこかに違和感を感じていた。

それが何かわからないまま、仁たちは馬車に乗り込み、 宮城(きゅうじょう) を目指した。

ゴーレム馬が牽く馬車は目立っていた。が、それが 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 、仁のものであることを知ると、皆納得したように頷くのであった。

「こちらへどうぞ」

「ありがとう」

既に仁は伯爵以上の地位——といっても名前だけ——である『帝室名誉顧問』であるから、堂々と城内を闊歩できる……のであるが、そこは庶民肌の仁。

案内してくれる使用人にも丁寧な応対をしつつ、会場へと向かったのであった。

会場は大広間。

ラインハルト以外にも数名、叙爵された貴族がおり、それを記念しての晩餐会も同時に開かれるのである。

「あら、ジン様」

聞き覚えのある声に仁が振り向く。

「あ、え……と、カレンさん、でしたね」

プラチナブロンド、グレイの目。ゲーレン・テオデリック侯爵の4女、カレン・テオデリック・フォン・バナーズであった。サキの叔母に当たるわけだ。

「お久しぶりですわね。遅くなりましたが、『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』と『帝室名誉顧問』に任じられましたそうで、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

そのカレンは、仁に手を取られているハンナを見つけた。

「あら、可愛らしいお嬢さん。ジン様の妹さん?」

「はい、ハンナともうします」

カーテシーで挨拶するハンナに顔を綻ばせるカレン。

「父が見たら放っておかないかも……あら、冗談よ、冗談」

顔を引き攣らせた仁を見て、慌てて訂正し笑い飛ばすカレン。

「いくらあの父でもハンナちゃんはお小さすぎますもの。あと5年経ったらわかりませんけど」

と、余計な一言まで付け加えたが。

「エルザさんもお久しぶり。……あら?」

と、エルザを見たカレンの目が見開かれた。