軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17-17 逆侵攻

「ところでバフロスクさん」

老君から指示を受け、アンが口を開いた。

「む? 何だ?」

「申し訳ないのですが、残った氏族の方々を一度集めていただけませんか?」

「どういうことだ?」

「はい、実は……」

老君からの指示。それは、『 諧謔(かいぎゃく) 』の氏族の中に、転移マーカーをもつものがいるのではないか、と言うことだった。

「馬鹿な! 裏切り者がいるというのか?」

案の定激昂するバフロスク。だがアンは平然としたままそれに対応する。

「いえ、そうではありません。意図せず、使われてしまっている方がいらっしゃるのでは、ということです。『 負の人形(ネガドール) 』は狡猾ですから」

「む……」

そうまで言われてはバフロスクもそれ以上抗弁することもできず、生き残っている氏族を全員呼び集めた。その数18名。

「これで全員ですか?」

「ん? ……んん? おい、ドネイシアはどこだ?」

「は? さっきまでそこにいたはずですが……」

「捜せ!」

バフロスクの命で、18名はドネイシアという名の氏族員を捜すべく四方に散った。

「……むう……」

難しい顔のバフロスク。アンの言葉が重みを持ってのし掛かってきたようだ。

その一方で仁(の『ダブル』)は、ガーゴイルの解析を終えていた。

「これが 魔素暴走(エーテル・スタンピード) を起こすための 魔力核(コア) のようだな」

自由魔力素(エーテル) を放出しきって半ば崩れているが、間違いは無さそうである。

「こっちが 操縦核(オペレーショナルコア) だろう。これがあれば13号の居場所もわかるはず」

その呟きにバフロスクが反応した。

「ジン! いや、ジン殿! それは本当か? 奴は一体どこにいる?」

噛み付かんばかりの剣幕である。

「今それを捜しているところだけど……今のところ北の方らしいとしか」

「そうか……」

そこへ氏族員が一人戻って来た。

「氏族長! ドネイシアを見つけました! 北へ向かって走っています」

「何?」

バフロスクの目が暗く輝いた。

「追え! だが捕らえるのは最後だ。どこまで行くのか調べるのだ」

ドネイシアが13号に操られているのだとしたら、その向かう先には13号がいるはず、という単純な考えであった。

* * *

ドネイシアは転移魔法が使えない。ゆえに身体強化だけで走っているようで、転移魔法の使える者が3人掛かりで追うことになった。

(……どこまで行く気だろうな)

(ああ。もうかれこれ1時間は走りっぱなしだぞ)

ドネイシアの疾走速度は時速40キロくらい。つまり40キロを走破して来たということになる。

そして更に10キロほど走った頃。

ドネイシアが停止した。

(お、止まったぞ)

(こんな何も無い平原でか?)

そのあたりは見渡す限り何も無い平原。灰褐色の荒野が広がっているだけの平地である。枯れた草と灌木がわずかにアクセントを添えていた。

ドネイシアが振り向いた。

「……それで付けてきたつもり?」

それは3人に向けた言葉。

何も無い平原。身を隠す物は何も無い。当然、追っ手の3人も丸見えであった。

「……馬鹿なの?」

ドネイシアは92歳。人間なら18歳と言ったところだ。

長い黒髪に金色の目。スタイルも良く、氏族の中では人気があった。ラルドゥスもちょっと気にしていたようである。そんな女魔族。

だが、今その顔に浮かんでいたのは邪悪な笑みであった。

「まだ帰らないのか?」

3人を送り出してから3時間。何の連絡も入らず、バフロスクは苛立っていた。

万が一、このまま3人……とドネイシアが帰ってこなければ、氏族は16人になってしまう。100人を数えた『 諧謔(かいぎゃく) 』の氏族が、だ。

その一方で、老君は13号が潜むと思われる場所を特定し終えていた。

同時に、情報をバフロスクに教えるかどうか考える。結局、黙っていた場合、あとで恨まれそうなので、仁は彼等に教えることにした。

「13号の基地らしい場所が判明した。ここから北北西に100キロほど行った場所。川のほとり、その地下にある」

『ダブル』がそう告げると、予想した通りバフロスクは立ち上がった。

「どうする気だ?」

その場にいたジャラルドスが声をかけると、バフロスクは血走った目を向け、答えた。

「決まっている。そこへ行くのだ」

ジャラルドスは、『何をしに』と聞きたかったのだが、血走ったバフロスクの目を見たらそれ以上の言葉が出なかった。

「残った氏族の者たちよ! 集まれ!」

バフロスクの前に15人が集まった。

「これより、我が氏族の仇を討つため、敵の本拠地に攻め入る!」

うおーっ、と言うような声が上がった。やはり怨みは鬱積していたらしい。

それから10分ほどで、『 諧謔(かいぎゃく) 』氏族は全員いなくなってしまったのである。

更には、『狂乱』『 灰燼(かいじん) 』の氏族からも数名が付いて行ったようだ。

「……老君、いいのか?」

蓬莱島にいる仁は老君と話をしていた。

『はい。ああいう性格ですから、一度ならずこっぴどい目に合わないと認識は変わらないでしょう』

「だが、あの連中で何とかなるような相手じゃないだろう?」

『それはもちろん。いざとなったら上空からの 魔法無効器(マジックキャンセラー) などで支援します』

「うーん……彼等の意識改革をするというのか」

『はい。それ相応の授業料を払わせて』

なかなか過激なことを言っているが、老君としては、仁が嫌う人死には出さないようサポートするつもりであった。

実力至上主義の過激派には、自分たちの力がいかほどのものでもないと言うことを身を以て知らしめ、当分の間大人しくしていてもらいたいのである。

『こちらも準備を整えて出発します』

ランドたちはカプリコーン1の転送機で一旦蓬莱島に戻し、交代させて転送機で送り出す。その方が手間はかかるが結果的に早く目的地に着けるからだ。

今回はランド11から30までの20体を送り出した。

「老君、13号のいる場所というのは001号の拠点とは無関係だよな?」

『はい。私……老子が001号を倒したのは前線基地と思われる場所。本命はあと300キロ程北でした』

仁は腕を組み、難しい顔をした。

「するとやはり13号がいる場所は別物か」

『はい。最近まで活動を停止していたのでしょう。そうと考えなければ、我々の探査網に引っ掛からなかった理由に思い当たりません』

「と、いうことはどんな施設なのかも不明だな」

『そういうことになります。13号はガーゴイルを使いました。あれだけとは思えません』

「そうだな」

その時、礼子が顔を出した。転送機で再度13号の拠点に赴く前に仁の顔を見たくてやって来たのだ。

「お父さま」

「お、礼子か。苦労かけてるな」

「いえ、そんなことは」

頭を撫でる仁の手に、目を細める礼子。

「もう少し、頑張ってくれ」

「はい、お任せください」

「頼む」

そして仁は、一度使ってしまった『転送銃』のエーテノールを補給する。これでまた使用可能回数が2回に戻ったわけだ。

カートリッジ式にすれば良かったな、と今更ながら思いついたが、今は時間が無い。

「それでは行ってまいります」

転送銃を受け取った礼子は仁に一礼し、司令室を出て行った。

そんな礼子を頼もしく思うと同時に、このごたごたを出来るだけ早く収束させるには、と考える仁であった。