軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14-32 準備

最後に、仁たちが気になったのはヴィヴィアンのことである。

今回、彼女の元にステアリーナが訪れていた、ということが代官に知られている。

いずれ、ステアリーナが亡命したことがこちらにまで伝わってきた場合、面倒なことになりかねない。

「全員で相談しないとな」

ということで、礼子とノワールに頼み、女性陣を呼んできてもらうことにする。

「いっそ、わたくしと一緒に亡命しちゃわない?」

ステアリーナがそんなことを言い出した。

「それも悪くないわね……」

今日1日で、仁たちが只者ではないことをまざまざと見せつけられたヴィヴィアン。

しかし、まだ蓬莱島の話が出来るような段階ではない。

どうしようか、と悩む仁に、礼子が一言、助言を行った。

(語り部、ということで、過去のこともかなりご存じですから、 転移門(ワープゲート) だけは教えても構わないのでは、と老君が言ってます)

(なるほど……)

蓬莱島『ファミリー』以外にも、 転移門(ワープゲート) の事を知っているものは何人かいる。彼等とヴィヴィアンを比べても、彼女は同じように信用出来ると思えた。

( 転移門(ワープゲート) だけなら 古代遺物(アーティファクト) 扱いで教えてもいいか……)

その線で、ステアリーナと同じく、ショウロ皇国へと脱出させようか、と仁は考え、この話題を一応どうとでも取れる言葉で締めたのである。

「それじゃあ明日、我々と一緒に行こう」

「ええ、わかったわ」

「住むところは僕に任せてくれ」

ラインハルトも胸を叩いて請け合った。

「歓迎しますわよ、ヴィヴィアンさん」

ベルチェもまた、快くそれをフォローしたのである。

「ところで」

ラインハルトが我慢できなくなって口を開いた。

「それは何だい?」

エルザ、サキ、ベルチェ、ステアリーナ、そしてヴィヴィアン。彼女たちに抱かれていたり、膝の上にいたり、足元に擦り寄っていたりする小動物。

「え? 猫ですよ?」

しれっと答えるベルチェ。

「いや、猫はわかってる。何でそんなにいるんだ?」

女性陣はそれぞれが1匹ずつ猫を連れていた。

「ジン兄とライ兄がいない間、エカルトさんが侍女に言って私たちを猫部屋に連れて行って、くれた」

「そこには猫が何十匹もいてね。懐いてくれた子と一緒に戻って来たというわけさ」

エルザとサキが説明してくれた。

エルザの膝の上には昼間の白猫、アクア。サキは茶虎。ベルチェは黒猫、ステアリーナとヴィヴィアンは二人とも白猫と、それぞれ仲良くなっていた。

「……楽しそうで何より」

「うん」

アクアの柔らかな背中を撫でながら、幸せそうな顔でエルザは頷いたのである。

* * *

翌朝、朝食をご馳走になった仁たちはエカルトに礼を言って辞去。

「……まあ、大体目的を達したし、面白いこともあったし、な」

仁が言うとラインハルトも頷く。

「そうだな。船も見たし、猫も見た。ミソも味わったしな」

仁は、ほんの僅かではあるが、味噌を分けてもらってきていた。これを利用すれば、適当なコウジカビを選別することが出来るかもしれない。

そしてコウジカビが選別出来れば、味噌を作れる。そうすれば醤油へはあと2歩くらいである。

残念ながら猫はもらえなかったが。

「またいらして下さい」

エカルトは仁たちが気に入ったようで、名残惜しそうな顔で見送ってくれた。

まずはヴィヴィアンの家へ。

一夜明けても亡命の意志は変わらない、と言うので、仁たちは本格的に支援することにした。

荷造りは手分けして行えばすぐに終わった。礼子やエドガー、ノワール、ネオン、アアルらが分担して担げば大した事はない。

が、真っ昼間、そんな荷物を抱えて歩けば目立って仕方がない。

「……ここへ 転移門(ワープゲート) を運ばせようか」

人目の無くなる夜中までにはまだ時間がありすぎた。それで仁は、 転移門(ワープゲート) をこちらへ持ってくる算段をする。

具体的には、ヴィヴィアンの家の外で礼子が受け取る、ただそれだけ。人目につかないように行うよう注意し、すぐに 転移門(ワープゲート) の部品が送られてきた。

礼子なら組み立てはお手の物。ヴィヴィアンの家の1室を借りて5分で組み上げた。

「お父さま、準備出来ました」

「お、ご苦労」

礼子が準備してくれている間に、ジンはヴィヴィアンに 転移門(ワープゲート) の説明をしておいた。

曰く、 転移門(ワープゲート) は 古代遺物(アーティファクト) である。

仁はそれを複数個所有し、使う事が出来る。

仁がついていれば、仁以外の者でも 転移門(ワープゲート) を使う事が出来る。……と。

「 転移門(ワープゲート) ですって? 昔話の中に出てくるわね! すごいわ!」

伝説とも言える魔導具を目の当たりにして興奮するヴィヴィアン。ステアリーナは無言のまま微笑んでいる。

まずベルチェが、そしてラインハルトが 転移門(ワープゲート) に消えた。

「さあ、行きましょう」

ステアリーナがヴィヴィアンの手を掴んで促し、順次 転移門(ワープゲート) をくぐった。

今回は、しんかい経由でなくラインハルト邸に調整してある。

荷物を持ったエドガーが、アアルが、ノワールが、ネオンが。そしてエルザが、サキが、 転移門(ワープゲート) に消えた。

そして仁は、 転移門(ワープゲート) をくぐる前、指示を出す。

「 隠密機動部隊(SP) のエルムとアッシュは残れ。礼子が消えたら 転移門(ワープゲート) を分解して待機、夜になったらファルコン経由で戻って来い」

「はい、チーフ」

そして仁が。 不可視化(インビジブル) を展開していて見えないが残りの 隠密機動部隊(SP) が。最後に礼子が立ち去った。

ラインハルトの館、『 蔦の館(ランケンハオス) 』の地下に現在は 転移門(ワープゲート) が設置されている。

一行は 転移門(ワープゲート) から出るとすぐに1階へ向かった。出たところは玄関ホールである。

「ようこそ、ヴィヴィアン」

「お世話になります」

今、ラインハルトの館にいる使用人は秘書のアドバーグだけだ。まだ落ち着かないため、村人を雇うまでには到っていない。

本来なら経済活性化などの意味もあるため、村から人材を発掘する必要もあるのだが。

「ようやく戸籍の整備が終わった所なんだよ」

とラインハルトはいくらか照れくさそうに仁たちに打ち明けた。

「ラインハルト様、お帰りなさいませ」

物音に気が付いた侍女 自動人形(オートマタ) が一行を出迎えに現れた。

「僕が作った 自動人形(オートマタ) で『ベラ』だ」

ラインハルトが紹介した。

転移門(ワープゲート) が設置されているので、見知らぬ人間よりも 自動人形(オートマタ) の方が信頼出来る、とラインハルトは説明した。

紫色の髪は人間ではないことを強調しているのだろう。目は黒。きちんと侍女服を着ている。

「ベラです、皆様、どうぞお見知りおきを」

忙しい最中でもやはり工作馬鹿、いつの間にかラインハルトは自分用にも 自動人形(オートマタ) を作っていたようだ。

時差約2時間ということでこちらは午前7時。

「今日中に報告してしまいたいな、ステアリーナ、ヴィヴィアン、悪いが首都まで同行してくれないか?」

「ええ、もちろん」

ラインハルトの要請を快諾する2人。

「それじゃあラインハルト、俺は一旦戻るよ。多分明日、陛下に面会したいと思うから、そうお伝えしておいてくれないか?」

仁が何か考えているらしいことを察したラインハルトは頷いた。

「わかった。それじゃあ明日、午後1時ということで申請しておく。まあジンなら大丈夫だと思うけどね」

「よろしく頼むよ」

* * *

ラインハルトとステアリーナ、それにヴィヴィアンはロイザートへと向かい、仁とエルザ、サキは蓬莱島へ移動した。

サキは蓬莱島から家へ戻ると仁に告げた。

「それじゃあジン、ボクは一旦家へ戻るよ」

二人きりになったエルザは仁に尋ねる。

「ジン兄、明日ロイザートへ行くって言ってたけど、どんな、用事?」

「ああ、魔族について、きちんと説明しておこうと思ってさ。それからもう一つ考えがあるんだ」

「考え?」

「ああ。それを実現するための準備が必要なんだ。エルザ、手伝ってくれるか?」

「うん、もちろん」

「礼子も頼む」

「はい、お任せください」

仁は礼子とエルザに手伝って貰い、何やら魔導具を作り始めるのであった。