軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14-12 地方都市ゴゥア・2

仁たちは反省会の後一息付いて、せっかくなので幾つか新発見した項目についての話し合いをすることにした。

「 第5列(クインタ) の事前調査でもわからなかった地下室の存在だがな、特殊な結界が張られていたことはわかっている。地下へ潜った時に通過したからわかった。あれは……『減衰結界』だ」

「減衰結界?」

「ああ。普通の結界は単に遮るだけだ。角度によって反射したりはするけどな」

仁の説明に、エルザも頷く。

「……わかる。基本的に、内部と外界を隔てるのが目的、だから」

「そう。だから、探査魔法を使うと、そこだけ周囲と違う反応が現れるから、結果としてそこに何かあることがわかるわけだ」

「なるほどね、何も無い平原に囲いがしてあるようなものだね」

サキが面白い例えを口にした。

「そうだな。そんな認識でいいだろう。……で、あの結界は、探査の魔力……空間内を伝わる電磁波みたいなもの、を反射するでもなく、吸収するでもない。自然に減衰させるようだ」

「サキさんの例えを使わせて貰うと、反射するのは白い囲い。吸収は黒い囲い。減衰は……透明な囲い?」

今度はステアリーナが色に例えてくれた。なかなか的確な比喩である。

「そうそう。そんな感じ。だからなかなかわからなかったんだ。『 音響探査(ソナー) 』に関しても似た特性を示すらしくて、 第5列(クインタ) でもわからなかった、ということだな」

「……よくわかったね、ジン兄は」

尊敬の眼差しで仁を見つめるエルザ。

「ああ、旧レナード王国へ行った目的の一つが結界の解析だったからな。特に気を付けていたんだよ」

仁は、旧レナード王国上空に張り巡らされた幻影結界の謎を解き明かしたかった、と説明した。

「いったい誰が、というのも気になるが、どうやってゴーレムの目まで誤魔化しているのか知りたかったんだ」

設計にもよるが、ゴーレムの目は人間よりも優れている。望遠はもちろん、その気になれば赤外線や紫外線も見ることができるのだから。

そんな目を持つ 空軍(エアフォース) ゴーレムにも見破れなかった幻影結界。その秘密を知りたかったのである。

「まあ、引き続き 第5列(クインタ) たちに調査させてるけどな」

そう言って仁は締めくくった。

* * *

時間的にもお昼時になったので、一同昼食とする。

「あれ、ハンナはまだ外にいるのかな?」

仁がそう呟いたとき、礼子とハンナが戻って来た。このあたり、礼子はさすがだ。

「おにーちゃん、レーコおねーちゃんがもうそろそろおひるだっていうからもどってきたの」

「ああ、ちょうどいい。お昼にしよう。……ハンナ、さっきペルシカ食べてたみたいだけど、お腹は大丈夫か?」

「うん、だいじょうぶ!」

元気いっぱいのハンナ。前歯も大分生え揃い、食べるのにも不自由しなくなってきている。

「今日のお昼はうどんですよ」

ソレイユが茹でたてのうどんを運んできた。もちろん冷水で冷やしたつけうどんだ。

「うどん?」

「はい、これですよ」

「わあ、おもしろーい!」

箸とフォーク、両方が用意されている。当然仁は箸。

つゆは魚醤と昆布もどきを使い、ペリドたちが苦心の末に作り上げた特製つゆである。

「うん、うまい!」

仁は真っ先に食べ始める。冷たいうどんの喉越しが心地よい。

「うん、おいしいね!」

「……おいしい」

「おいしーい!」

「おいしいですわね」

他のメンバーはフォークを使って食べ始めたが、概ね好評のようだ。

少し量を減らしてあったので、ハンナも自分の分をきれいに食べ終えたのであった。

「ごちそうさま。しかしジン君、箸、だったわね? 使うの上手いのねえ」

「ええ、まあ。ずっと使ってきたんですから」

2本の棒でうどんをつまんでいる仁を見て、ステアリーナがその器用さを褒めた。

「ボクも練習しようかな?」

「……私も」

「あたしもー!」

他の3人がそんなことを言い出したので、結局ステアリーナも加わり、箸の使い方講座が開かれることになった。

「まずは箸の長さを決めよう。親指と人差し指が直角になるように指を開いて……そうそう。で、その長さの1.5倍がだいたい使いやすい箸の長さになるんだ」

「……わかった」

エルザは22.5センチ、サキは24センチ、ステアリーナも24センチ。そしてハンナは18センチ、という数値になった。

「次は重さだな。重めの箸がいいか、軽い箸がいいか。……最初だから、標準的で行くか」

院長先生から教わった箸の 蘊蓄(うんちく) を思い出しながら決めていく仁。

箸の材質はクェリーの木(サクラに近い)とした。堅く、粘りがある。仁の使っているのもこの木の箸だ。

因みに、使った後は『 浄化(クリーンアップ) 』や『 殺菌(ステリリゼイション) 』で箸をきれいにしている。

1時間ほど練習する。一番上達したのはハンナであった。意外なことに一番下手なのはサキ。

「くふふ、面目ない。ボクってやっぱり不器用なんだね……」

そんな事無い、練習すれば誰でも使えるようになる、と、仁は少し落ち込んだサキを慰めた。

練習の後はティータイム。暑いのでお茶でなく冷たいジュースにした。

「さて、この後どうするか」

そんな仁の言葉に答えたのはステアリーナだった。

「そうね。……ねえ、ジン君、セルロア王国に遊びに来ない?」

「セルロア王国か……」

「ええ。あたしの本宅はゴゥアってところにあるのよ。で、ゴゥアは王国の 魔法工作士(マギクラフトマン) が大勢住んでいる地方都市なの」

仁は、 統一党(ユニファイラー) とのごたごたもあって、セルロア王国はほとんど見物していないので、ちょっと心を惹かれた。

「ふむ、ジン、ボクも興味あるね」

サキも行ってみたいようだ。

「エサイアみたいに出入りの監視は厳しくないから大丈夫よ」

転移門(ワープゲート) 付きの馬車がステアリーナの本宅に保管してあるので、それを利用してステアリーナは本宅と蓬莱島を行き来していたわけである。

引き払う、といっていた件は凍結中のようだ。

「移動については問題ないか」

「そうよ。気軽に来てちょうだい」

「それなら行ってみようか」

仁も乗り気になる。

「うんうん、行きましょう! 歓迎するわよ!」

ということで、同一メンバーでそのままセルロア王国へ遊びに行くことになった。今回トータスは使わない。そしてアアルやエドガーは今度は連れて行くことができる。

寝泊まりは蓬莱島へ戻って来てもいいし、ステアリーナの本宅で泊まってもいい。そう決めて必要最低限の荷物だけ持ち、仁たちは転移した。

『しんかい』経由での転移にも皆慣れ、スムーズに移動。

「ようこそ、セルロア王国へ」

おどけたステアリーナがそんなセリフを口にした。

一行が出た場所、つまり 転移門(ワープゲート) を積んだ馬車が保管されていたのは大きな倉庫。

周囲には素材が置かれている。

「隣がわたくしの工房になっているのよ」

まずそちらへと移動。仁、ハンナ、礼子、エルザ、エドガー、サキ、アアル、そしてステアリーナという大所帯だ。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

出迎えたのはダリの別宅にいた執事風 自動人形(オートマタ) である。

統一党(ユニファイラー) の襲撃で破損したので、別宅は既に引き払っていたのだ。

「ただいま、ザフィオ。お客様が大勢いらしたからそのつもりでね。セレネにも手伝わせていいから」

「かしこまりました」

ザフィオは一礼すると下がっていき、代わってブルー・トパーズ製のゴーレム、セレネが飲み物を持ってやって来た。冷たいジュースのようだ。

「わあ、きれい!」

セレネを初めて見たハンナがびっくりしたような声を上げた。

「うふふ、ありがとう、ハンナちゃん」

ステアリーナはセレネが配ったジュースを一口飲み、嬉しそうに笑った。