軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14-11 地方都市ゴゥア・1

「たいしたものは置いてないのねえ」

セルロア王国の地方都市、ゴゥア。 魔法工作士(マギクラフトマン) が多く住む、魔法工業都市である。

「どの店見てもありきたりなものばっかり」

主街道から北へ20キロほど離れているが、 魔法工作士(マギクラフトマン) が多いと言う理由で、訪れる観光客は少なくない。

アスール湖へ続く脇街道が通っていることも手伝って、活気のある街であった。

「独創性、というものが感じられないわ」

立ち並ぶ商店。観光客向けにいろいろな種類の魔法工学製品を陳列している。

短剣、ナイフなどの護身用武器、携帯用魔導ランプ、獣除けの鈴などの旅行用品。ブローチ、指輪、ネックレスなどのアクセサリー。

「……中古品の方が面白い品物あるかもしれないわね」

先程から、通りに面した店を覗いては、すぐに不満そうな顔で出てくる少女がいた。

年の頃は14、5歳くらい。ストレートの明るい金髪を肩まで伸ばし、翠玉のような瞳をした美少女。

ただしその顔は気むずかしそうに顰められていて、機嫌があまり良くないことが見て取れる。

服装は華美ではないが質素でもなく、非常にセンスの良いコーディネイトがされている。

更に身分のあるお嬢様の例に漏れず、お付きの者が一人付いていた。少女より2つ3つ年上の少年である。

「お嬢様、そちらは裏通りですよ」

「いいのよ。表通りなんて、見てくればかりで品質の伴わない物ばっかりなんですもの。こっちの方が何かありそうじゃない?」

少女は角を一つ曲がると小走りに駆け出した。お付きの少年は慌てて後を追った。

真っ直ぐ20メートルほど駆けていった先を曲がると今度は丁字路で、突き当たりには古道具屋が一軒。少女は何の気無しにその扉をくぐった。

「うわあ……」

店の中は一言で言って混沌。

年代物の木のテーブルが置いてあるかと思えば、昨年流行ったデザインのブローチが転がっている。

数が揃っていない銀の食器の隣に、錆びた剣が置かれている。

子供が喜びそうな人形に並んで、隣国の兵士が被っていた 冑(かぶと) が置いてあったりもした。

「うふふ、これよ、これ! こういうお店は、きっと掘り出し物があるわ!」

これまでとうって変わって少女は楽しそうに微笑むと、店内を物色し始めたのである。

「あら?」

そして見つけた、一振りの短剣。

やわらかく光る金色の鞘に、緻密な彫刻が施され、細かい 魔結晶(マギクリスタル) が散りばめられている。

柄も金色。柄頭には水色の 魔結晶(マギクリスタル) が嵌め込まれている。

「……素敵」

手に取ってみる。思ったよりは軽い。

そっと抜いてみた。

「……なに、これ」

刃渡り30センチほど。材質はまちがいなくミスリル銀であろう。その見事さに少女は目を奪われた。

「お嬢様?」

ようやくお付きの少年が主人である少女を見つけたようだ。

「……見て、アンドロ。この短剣」

アンドロと呼ばれた少年は言われるままに短剣を見つめた。そしてその見事さに感心する。

「はあ、見事な物ですね」

「これ、欲しいわ」

剣を鞘に収め、少女は店の奥へと歩む。そこには店主が居り、先程から少女を見つめていたのである。

「ご主人、この短剣、欲しいのだけど」

「ほう、それに目を付けたかい。少し前、エゲレア王国のイカサナートで見つけてきたんだがね。なんでも、どこぞの軍人が売り払っていったものらしい」

「出所は問わないわ。おいくら?」

「そうさな、10万トール、といったところか」

それを聞いた少女はお付きの少年に目配せする。

「えっ、お、お嬢様、本当にお買いになるのですか?」

「そうよ。払ってちょうだい。早く!」

「わ、わかりました」

少年は懐から金貨を10枚出し、店主に差し出した。

「ほい、確かに。ありがとうよ」

「アンドロ、行くわよ!」

「お嬢様、お待ちください」

店の外へ出ると、少女は嬉しそうに短剣をかき抱く。

「ああ、いい買い物だったわ! 注文したら100万トールは下らないわね!」

「え、そ、そんな高価な剣なのですか!?」

少女はふふん、と鼻を鳴らす。

「そうよ。いい買い物だったわ」

* * *

レナード王国へ探索旅行に出掛けた仁たちは1泊しただけで蓬莱島へ戻って来てしまった。

廃墟の探索は思ったより面白くなく、精神的に堪えるものだったからである。

特殊キャンピングカー『トータス』ごとコンドル3の 転移門(ワープゲート) で戻って来たため、時刻はまだ午前10時である。

「……なんか予定が狂っちゃったな……」

食堂で炭酸入りジュースを飲みながら仁がぼやいた。

「ちょっと反省会でもしてみる?」

ステアリーナが提案した。

「ああ、いいかもな」

仁も賛成。エルザとサキも文句は無いというので、簡単な反省会をしてみようとなった。

因みにハンナは外で礼子と遊んでいる。

何をしているのかとのぞいてみれば、礼子の案内で畑を見て回っているようだ。熟し切ったペルシカを食べたりもしている。

「まあ、礼子に任せておこう」

そして反省会が開始された。

「安全管理はどうだった?」

キャンピングカーを作った仁の質問だ。

「そうねえ、キャンピングカー自体に文句は無いわ。坂で荷物が寄っちゃった以外は」

「ああ、あれな。物によっては固定することを考えるよ」

次に意見を言ったのはサキ。

「行った先が廃墟ばかりというのはめげるね。なんというか無常を感じるよ……」

「ああ、確かにな。おまけに大半の物が漁られた後だから尚更だ。行き先間違えたかもな……」

「うん、唯一の収穫は、レナード王国滅亡の、理由」

エルザの発言に全員が頷いた。

「ああ、まったく。まさか疫病を恐れて、国中こぞって転移していたとはな……」

「もしかして、だけど、精神操作を受けていたという可能性、は?」

「え……」

魔力性消耗熱騒ぎの時、仁とエルザは協力して事の収拾に当たったので、魔族が絡んでいた事をエルザは知っている。

そして魔族と言えば、精神操作。これは実の父がマルコシアスという魔族に影響を受けていた事からの連想である。

「無いとは言いきれないな……」

今となっては証拠も見つからないだろうが、可能性はありそうだ。

「ごしゅじんさま、その地下室への扉が開いたときと、地下室へ下りて行かれたときの事で申し上げてもいいでしょうか?」

「お、アンか。何だい?」

反省会を続ける仁たちの所へアンがやって来て、意見があるという。

「ありがとうございます。まず、扉を開けるときに外へ出られたようですが、安全対策としては不十分です。トータス、ですか? その車両に乗り、バリアを展開しておくべきでした。できれば数百メートル離れていてくださればなお」

「……」

「もし、爆発するような罠だったら? そうお考えください」

確かにその通りだ。トータスを準備するほど慎重になるなら、そのくらいの予防措置を行うべきだった、と仁は反省した。

「それに、地下へ潜られたのも軽率です。もう少し慎重になられるべきです。ごしゅじんさまはかけがえのない方なのですから」

アンに苦言を呈されてしまった。遺跡調査ということで少々浮かれていたかもしれない、と『多少は』反省した仁であった。

「とはいえ、 第5列(クインタ) が調査していることですし、一般人も出入りしている場所のようですので、気を付けていただくのは隠し部屋のような場所ですね」

アンは仁に忠誠を誓っているが、仁が作った 自動人形(オートマタ) ではない。故に盲従はしないし、時には苦言も呈してくれる貴重な存在である。

「最後に、老君。ごしゅじんさまに確認を取って、いえ、無断でも、航空部隊を上空に待機させておくべきでした」

老君まで注意を受けてしまった。アンという存在は貴重である、と仁は、そして仁以外のメンバーも再認識したのである。