軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13-31 トカ村では

コンドル3が搭載してきた巨大 転移門(ワープゲート) を使い、 巨大百足(ギガントピーダー) の細片や、50体の 陸軍(アーミー) ゴーレム、タイタン2、ペガサス1、そしてボールトンらを避難させていたランド21から25とペリカン3は蓬莱島へ転移した。コンドル3はカイナ村北部の山に設置した超大型 転移門(ワープゲート) 経由で帰島することになる。

研究所裏手の 転移門(ワープゲート) から出たペガサス1は、魔導ライトで煌々と照らされた研究所前広場に着陸。仁、エルザ、サキは少し疲れた顔で降り立った。

そんな3人を居残り組が総出で出迎えた。

「ジン、お疲れ! 大変だったなあ! エルザ、サキ、ご苦労さん!」

「ジン様、凄かったですわね! エルザさん、サキさん、ご苦労様でしたわ」

「ジン君、やっぱり君は凄いわ!」

「ジン様、お疲れ様でした。お食事の仕度が調っております」

もう蓬莱島は夜の10時過ぎ。ミーネが気を利かせて夜食の仕度までしてくれていた。

「ああ、なんか腹減ったな。有り難くいただこう」

出迎えを受けた仁は、ほっとした顔をした。正しく今の仁にとって、ここ蓬莱島は帰るべき家なのである。

ところで時差を考えると、そろそろステアリーナは一旦帰らないとまずい。

時差5時間程度としてステアリーナが乗っているはずの馬車のいる場所はもう午後5時過ぎだろう。

「あらあ、残念ね。でもまた明日、来ていいんでしょう?」

「もちろん。待ってるよ。というか迎えを出す」

ステアリーナの質問に、仁は大きく頷いた。

『 御主人様(マイロード) 、そのための手段として、実はペリカン1を帰投させずにあの付近に残してあります』

老君が言葉を挟む。その内容に仁は感心した。

「おお、そうか! 確かに、その方が効率いいものな」

ステアリーナの馬車付近にペリカン1がいれば、行き帰りが非常に簡単である。当分その手で行くことにする。

「それじゃあジン君、みんな、また明日ね」

今日1日で随分染まったらしいステアリーナは、自分の部屋に引っ込む感覚で別れを告げた。

巨大百足(ギガントピーダー) 騒動のあった翌朝、仁はカイナ村に行ってみた。

仁の予想どおり、こちらでは異変に気が付いた者はおらず、平和な夜を過ごしていたようだ。

安心した仁は、もう一度蓬莱島へとって返し、損傷を受けたランド隊を自ら修理していったのである。

* * *

一方、トカ村。

「な、何が起きたのでしょう?」

カイナ村へ通じる街道の彼方から物音が聞こえてくるのだ。

時折、薄暮の空に閃光が走ったように光ったりして、村人は不安を隠しきれない。

因みにカイナ村では、戦闘は全てトーゴ峠の向こう側(トカ村側)だったため、音も聞こえ難く、閃光も見えなかったため、異常に気付いた者は誰一人としていなかった。

「明るくなったら私が調べに行ってこよう」

グロリアも、さすがに暗闇の中では危険過ぎると判断し、様子見は翌早朝からということにしたのである。

その後、物音も静まり異常が感じられなくなったので、村人もひとまず安心し、眠りについたのであった。

そして翌朝、午前5時。

昨夜の物音の原因を確認するため、早起きしたグロリアは馬で確認に行こうとして、村の入り口のところに誰かが倒れているのを見つけた。

「……父上!」

近寄ってみると、それはグロリアの父ボールトン・オールスタット、騎士ハインツ・ラッシュ、名も知らぬ御者らしき男。そして頭に怪我を負ったバイヤー子爵であった。

「い、いったい何が?」

確認に行くのを一時取りやめ、4人の介抱を行う事にした。

朝早くではあったが、事が事だけにまず、領主であるリシアに報告する。

「ええ? グロリアさんのお父さまが? それにハインツ様とバイヤー子爵?」

寝起きのリシアだったが、状況を聞くといっぺんで目が覚めたようだ。

当直の兵士に告げ、とりあえず兵士の駐屯所へ連れていくことにする。一応介護室もあるからだ。

すぐにリシアはバイヤー子爵の怪我を治療した。その時リシアは兵士たちの口から、思いがけない事実を知る。

「子爵たちはイナド鉱山でずっと鉱石の採掘を続けていらっしゃったのです……」

「何ですって? ……詳しく話して下さい」

リシアは、8月1日から、イナド鉱山を仁の租借地に組み入れるという話を知っていた。その鉱山を整備するくらいならわかるが、兵士の話によると半月ほどの間、ずっと採掘を続けていたというではないか。その結果、これまでに鉱石を満載した荷馬車4台が王都に送られているというのだ。

「なんという恥知らずな真似を……」

リシアは頭を抱えたくなった。

「父上もそんな陰謀に荷担を?」

一緒に聞いていたグロリアも憤っている。

「いえ、上司から命令されたら拒否できないでしょう」

「……それもそうか」

ある程度は自らの判断で動けるという自由度のある女性騎士隊とは違い、内勤の官僚では、グロリアが今回是非リシアの護衛にと主張したような我が儘はそうそう通るものではない。宮仕えの悲哀である。

「……それでも、諫言するくらいの気概は見せて欲しかったな、父上には……」

「そんな話は後にしましょう。……申し訳ないですが、私は怪我を治す治癒魔法は使えても……あ、そうだ」

リシアは、仁から借りた治癒の魔導具を思い出した。今回仁に返すため、ゴーレム馬に保管してある。それを思い出し、走って取りに行くリシア。

「……これ、を、使え、ば、きっと」

ぜえぜえと息を切らして戻って来たリシアはグロリアに質問する余裕も与えず、治癒の魔導具を使用した。

『 療治(メディケア) 』の効果を持つ治癒魔法が起動し、麻痺して横たわっていた4人に意識が戻った。

「こ、ここは!?」

「う、うわああ、助けてくれええ!」

「父上!」

「子爵!」

ボールトンは自分が今どこにいるのか訝しがり、バイヤー子爵はパニックを起こし悲鳴を上げた。

「……グロリア、か? それにそちらは……ファールハイト準男爵、だったか」

ハインツ・ラッシュは冷静に状況を分析。目の前にいるのが女性騎士隊副隊長のグロリア・オールスタットとトカ村領主になったリシア・ファールハイトであることを見て取った。

「あ、あわわわわ……」

最後の一人、御者らしい男は震えているだけ。リシアはハインツに、グロリアは父ボールトンに。それぞれ事情を聞くことにした。

「…………」

「何ですって? 昨夜の騒音は……鉱山がそんなことになっていたとは……こ、この村は大丈夫なんでしょうか? ……」

「何だって? ……なんて事を……背信行為ではないですか、父上!」

リシアは巨大な百足の脅威に打ち震え、グロリアは採掘の事実に腹を立てていた。この時、バイヤー子爵はぶつぶつと呟くだけで話にならない。精神に障害を負ったようだ。

「……状況はわかりました。グロリアさん、様子見に行かないで良かったですね」

グロリアが巨大な百足の怪物と正面から出会ってしまったら、と思うと、背筋が寒くなる思いがするリシアであった。

「だが、そんな化け物が5匹だぞ? 今から村人を避難させて間に合うのか?」

絶望的な状況を理解しているが故に快活なグロリアも顔色が悪い。

が。

「そういえば、デウス・エクス・マキナ殿が我々を保護してくれたのであったな。……彼はこの村に来られたのか?」

思い出したようにハインツが言い出した。

「え? マキナ様ですか?」

「ああ、今思い出した。我々がどうしようもなく、魔物たちから逃げていたときに、彼の指示だというゴーレムが5体現れ、我々を避難させてくれたのだ。……そこから先の記憶がないが、彼が何か手を打ったのではないか?」

「……そういえば、しばらく騒がしかったり閃光が走ったように光ったりしていましたが、じきに静かになりました」

「閃光? あの魔物は光なぞ出さなかったぞ?」

「何ですって? いえ、間違いなく、夜空に閃光が走りましたが……」

「うーむ……希望的観測になるが、マキナ殿が何かされ、その光だとすれば……」

ハインツが推測を述べる。だがボールトンは懐疑的だ。

「ええ? あんな怪物を5匹も倒したというのですか?」

「マキナ殿なら、あるいは……」

「と、とにかく、やはり確認しなくてはいけませんね。……グロリアさん、やっぱり見てきていただけますか? ただし細心の注意を払って。念のため、回復薬も持っていってください」

リシアは仁から託された回復薬の残りを1本、グロリアに渡す。

「いいですか、絶対に無理はしないでくださいね。必ず戻って来て下さい。その結果次第で、村人を避難させますから」

「わかった。任せておいてくれ。では行ってくる」

グロリアは再度馬に跨り、勇んで村を出ようとして、あることに気が付いた。

4人が倒れていたところに何かがある。近付いてみるとそれは皮紙。

そこには、

『 巨大百足(ギガントピーダー) は全て倒した。もう危険は無い。デウス・エクス・マキナ』

と記されていたのである。

村を出ようとしていたグロリアはまたも引き返し、リシアにそれを見せた。

一同、それを見て一応は安心する。が、やはり確認は必要と、今度こそグロリアは確認するために村を出て行ったのであった。