軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13-05 結果……

「ライ兄たちは手前の客間、ジン兄は奥の客間を使って、ね」

一通りの話し合いが終わったので、一行は寛がせて貰うことにした。

モーリッツが寝込んでしまった今、仮の家長として使用人に指示を出しているのはエルザである。

「……懐かしい」

それが済むと、エルザは自分の部屋に入った。

そこは、ラインハルトと旅立つ前のとおりに保たれていた。

埃もなく、カビ臭くもない。使用人達が定期的に掃除をしていたのだろう。

ぼふっ、と、ベッドに身体を投げ出す。そのままごろりと天井を見上げれば、見慣れた、明かりの魔導具が下がっているのが見える。

「変わって、ない」

部屋は変わっていなかったが、自分は変わった、とエルザはしみじみ思う。

旅に出る前は何も知らないに等しかったが、今は。

工学魔法、治癒魔法、そして仁から授けられた科学。加えて旅で得た知識と経験。

まだまだ未熟だと言うことは自覚している。が、それでも、今の自分が成長したことは確かだった。

「誰かのため、に」

何もかも他人任せだった頃に比べたら、今は自分でできることが増えた。何より、誇れる技能を身に着けた。

そこまで考えが巡ったとき、ドアがノックされた。

「どうぞ」

「お邪魔するよ」

やって来たのはラインハルトだった。

「ライ、兄」

「……今、国からの特使が来たそうだ」

「え」

* * *

仁とエルザ、そしてラインハルトは応接室へ向かった。

そこには、国からの特使ということで、寝込んでいたモーリッツが家長代理として応対していた。

が、その顔色は紙のようで、今にも倒れそうである。

特使は女皇帝陛下から勅命を賜ってきたそうで、事務次官に相当する人らしい。

仁たちは遠くから見ていることしかできない。……と思っていたのだが、特使が彼等を見つけ、手招きした。

「ジン・ニドー殿、ラインハルト殿、それにエルザ殿。あなた方も聞く権利がある。こちらへ」

少し離れた席に仁たちは座り、成り行きを見る事になった。

特使はモーリッツを立たせ、その前で書状を読み上げる。

「配下の者が行った、国賓であるアーネスト殿下への侮辱行為。同じくジン・ニドー卿への敵対行為」

罪状を聞くモーリッツは今にも倒れそうである。

「審判買収による 魔導人形競技(ゴンクレンツ) ルールの改竄」

水中探し物のことを言っているのは明らかだ。

「加えて観客席での騒乱による国家記念式典である技術博覧会の妨害および一部設備の破壊」

証人・目撃者が大勢いる。言い逃れはできなかった。

「貴族にあるまじき行為であり、到底見逃すことはできず。よって、以上のことを鑑み、ゲオルグ・ランドル・フォン・アンバーの子爵位は剥奪。隠居申しつける」

項垂れるモーリッツ。そしてとどめの言葉が放たれた。

「同時にランドル子爵家は取り潰し。嫡男モーリッツ・ランドル・フォン・アンバーは本家ランドル家預かりとする」

「……承りました」

顔面蒼白のモーリッツは使者に対し 頭(こうべ) を垂れた。

「なお、次男フリッツ・ランドル・フォン・グロッシュについては、軍での地位はそのままとする。配置は追って沙汰する。エルザ・ランドル・フォン・ラズーラについてはラインハルト・ランドル・フォン・アダマス預かりのまま変更無し」

以上が特使からの通達であった。

ここに、傍流ランドル子爵家は消えたのである。貴族ではあるものの、爵位の無い、底辺と言うことになる。

特使が帰った後、モーリッツは再び寝込んでしまった。

* * *

「結局、モーリッツはラインハルトのところ、つまりランドル伯爵家預かりということでいいのかな?」

離れて聞いていた仁が尋ねた。こういうやり取りは苦手なのだ。

「ああ、そういうことだな。まあ、モーリッツ殿については、うちの父の命でここエキシの町を治める、ということになるだろうから、まあ今のままになるんじゃないかな?」

これはラインハルトの推測である。

「今更別の者に治めさせるというのも無駄が多いしな。元々モーリッツ殿が切り盛りしていたようなものだから、そうなるんじゃないかと思うんだ」

理由としては明快である。

「だが……」

口ごもるラインハルト。

「……叔父上だが、侯爵を砒素で毒殺しようとしたことが知れたら、おそらく死罪だろうな」

それを聞いたエルザの顔色が変わった。いくら嫌いな父とはいえ、死罪になると聞いては平静でいられなかったのだ。そんなエルザを見て、仁が口を開いた。

「……ここにいる者しかそのことは知らないし、証拠だって、単に酒と砒素が同じ部屋に置いてあったというだけだ。魔族のメモなんて信じられない。こちらを混乱させるためという可能性だってある」

「……いいの?」

仁の顔を覗き込むエルザ。

「とはいうものの、侯爵が訴えたら隠しきれないだろうな……それにサキの気持ちを考えると、秘密にするのもまずい気がするし……」

困った仁はラインハルトを見た。

「そうだなあ……ここはやっぱり、侯爵には話しておくべきだろうなあ」

一番の被害者は侯爵であるとも言える。

「その時、手土産とかあったら少しは……そうだ!」

仁は膝を叩き、エルザを見た。

「エルザ、侯爵に 自動人形(オートマタ) を1体作ってあげるんだ。それを持ってお見舞いに行こう。そして真実を話そう。その時、エルザが代表して謝るんだ」

礼子を見て可愛い、と言った侯爵の心根とエルザへの愛情に賭けるしかない、と仁は言った。

「うーん……まあ、侯爵には話さなければならないのはわかるから、それがいいのかな……賄賂みたいで気が引けるんだが」

「賄賂じゃないさ。『お見舞い』だよ。なあ、エルザ」

「……ジン兄が悪い顔、してる」

笑みを浮かべながら計画を語る仁を、エルザはそう評したのであった。

* * *

「……さて、俺からもみんなに話があるんだ」

ラインハルト、ベルチェ、エルザ、ミーネを前にした仁はそう口火を切った。

「蓬莱島、崑崙島に続いて、『 扶桑(ふそう) 島』という島を開発中なんだ。そこは、レナード王国からほど近い海上にある。以前話したと思うが、レナード王国は滅びている。だから一応どこの領地でもない。そこで、その島を開発して、一般に開放しようと思っている」

一気に説明し、皆の顔を見回す仁。暫く無言の状態が続いたが、まず最初に口を開いたのはラインハルトである。

「うん、趣旨はわかった。確かに、蓬莱島や崑崙島を一般公開するのは危ういと思う。だが、そうすると、そこへ行く手段も公開する気なのかい?」

離島であるから、 転移門(ワープゲート) が無ければ行けないだろう、とラインハルトは言った。

「ああ。それはそうだ。そこで、自由に使える特定の 転移門(ワープゲート) を設置しようかと思う」

「設置場所は?」

「今のところ、ショウロ皇国とエゲレア王国、それにクライン王国を考えている」

仁を 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) に任じてくれた国と、そこの王子王女と親しくしている国である。理由としては十分だ。

そしてそれぞれには厳重な防護措置を施す、と説明する仁。

「2体の専任ゴーレムを付け、この2体が認めない限り 転移門(ワープゲート) は使えないし、2体に何かあったら 転移門(ワープゲート) は自己破壊するようにしようと思う」

「なるほど、仕組みを知られないようにするわけか」

「ああ。その他にも、目立たないような対策をいくつも施すつもりだ」

「うーん、ならそっちは大丈夫かな。で、施設の方は?」

「蓬莱島の研究所と同じ型にしようと思う。そこでは国を超えて、魔法工学や普通の工学、錬金術などの研究ができるようにしたいと思うんだ」

仁の説明に、一同は深く頷いた。

「僕はいいと思う」

「私も、賛成」

「いいと思いますわ」

「私には難しいことはわかりませんけれど、国を超えて、ですか、なんだかいいですね、そういうのって」

4人とも賛成してくれた。

「ありがとう。あとはサキに話をしたいな……」

そして仁は、詳細を決めるため明日蓬莱島へ行こう、とそこにいる『ファミリー』たちに言うのであった。