軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02-02 命名、『蓬莱』

今、仁の前には研究所のある島の地図があった。グライダーゴーレムの成果である。

「なるほど、この島はほぼ円形なんだな。で、南東だけが大きく 抉(えぐ) れて湾になっている、と」

「お父さま、この島にも名前を付けましょう」

仁と一緒に地図を眺めている 自動人形(オートマタ) の礼子が言った。

「そうだな……」

考え込む仁。

「やまと……あきつしま……やしま……」

どこかで聞いたような名前が並ぶ。やはり仁だ。

「そうだ、『 蓬莱島(ほうらいとう) 』にしよう」

蓬莱は古代中国で、東海に浮かぶ神仙の住むという伝説の島である。仁にしてはまずまずのネーミングだった。

「で、この湾は南東にあるから……南東は辰巳ともいうから『タツミ湾』で」

やっぱり仁は仁だった。

「で、この 蓬莱島(ほうらいとう) の中心にあるのが『 蓬莱山(ほうらいさん) 』だな、3000メートルと少しくらいか。うまく使えば寒い土地の植物も栽培できるな」

「研究所は『 蓬莱山(ほうらいさん) 』の中腹、標高1000メートルくらいの場所にあり、そのあたりは広い平地になっています。1000年前の島の名残ですね」

「うん、湿地や池もあるな。中央台地とでも呼ぶか」

仁流ネーミング絶好調である。

「さしあたってこのあたりに果樹園と畑を作って自給自足出来るようにしていこう」

「わかりました。ペリドとトパズにそう指示を出します」

仁の決定に、礼子が同意。てきぱきと指示を出していく。

「で、北側は原始林か。林業に向いてるかな? で、東は灌木と草原が広がっている、と。牧場とかできるといいな。そして南は湿地と草原、それに川、か。田んぼが作れるかもな」

「お父さま、田んぼとは何ですか?」

礼子が怪訝そうに尋ねる。仁から受けた知識が完全でないためだ。

「ああ。田んぼってのは米、稲という作物専用の畑だな。俺は前の世界でその米を主食としていたんだ」

遠い目をした仁を見て礼子は、

「わかりました。その『米』という作物をお食べになりたいのですね」

「そういうこと。この世界にあるかわからんが、探してみたい。まあ後回しになるだろうが」

そう言って仁は地図の検討を続ける。

「西側は荒れ地、か。 蓬莱山(ほうらいさん) が崩れた土石や大昔の溶岩が流れた跡みたいだな。鉱物資源があるかも知れん」

「そうですね。優先度は下がりますが要調査、としましょう」

「で、『タツミ湾』ですが」

礼子が話を変える。

「私が転移してお父さまを捜しに出た時、海に出た話をしましたが、その時にここから再上陸したんです。この辺りの海底には珊瑚が豊富です」

「珊瑚か。少し採集しておいてもいいな。待てよ、珊瑚礁なら魚も豊富じゃないか?」

昔見た自然ドキュメンタリー番組では、珊瑚礁には魚の種類が多かった記憶がある。

「はい、確かに」

「だったら、ここに生け簀を作って魚を養殖するのも悪くないな」

「専用のゴーレムを作って任せましょうか」

いろいろ手を広げるには人手が足りない。が、それを解決する手段を仁達は持っていた。

「そうだな。同時に、このタツミ湾に港を作って、船を浮かべたいな」

「船、ですか」

「ああ。最終的には200メートルくらいあるでっかいのを作りたい」

200メートルは完全に仁の趣味である。

「そんで海を旅するのもいいな。……まあ、動力の開発が先だがな」

まだまだ先は長そうである、が、同時に楽しみでもあった。

「さて、とりあえずこんなものか」

一通り地形を把握し、今後の方針を決めた仁は一息つき、オレンジに似た果物をかじりながら呟いた。

「こうしてみると、優先度の高い項目低い項目がはっきりするな」

何と言っても最優先なのは食料の確保であった。

「果樹はお父さまのおっしゃった『桃』『オレンジ』『リンゴ』『レモン』『栗』『クルミ』に似たものを移植済です」

「早いな。さすがだ」

ペリドとトパズが配下と共に魔法を使って作業したため、2日ほどで完了したのである。

「とすると、まずは麦の確保だな」

この世界の主食は麦である。小麦、大麦が栽培されていた。

「食べる分と、種にする分を買いに行かないとな。だけど、どこがいいだろう? それに金もないし」

研究所には金目の物は大量にあるが通貨は1つもなかった。

「買うことの出来そうな町には心当たりがあります。私が5回目に転移した場所ですね」

「そうか。それじゃあ一緒に行こう。で、金だが、 魔結晶(マギクリスタル) を売るのがいいか、それとも何か作ったものを売るのがいいか、だ」

これには礼子も首をかしげる。仁も礼子も、この世界についてはあまり知らないのだから無理はない。

「うーん、じゃあ 魔結晶(マギクリスタル) をいくつか持ち、行った先で判断するしかないか」

「そうですね、それがいいと思います」

「よし、それじゃあ行くか」

「はい。対応する 転移門(ワープゲート) はこちらです」

礼子は設置した 転移門(ワープゲート) にちゃんと行き先を書いていたのでわかりやすい。その 転移門(ワープゲート) には『ブルーランド』とあった。

「この『ブルーランド』というのがその町か?」

「いえ、町と言うより都市ですね。その3キロほど手前にある森に 転移門(ワープゲート) が隠してあります」

「わかった。行こう」

そして2人は『ブルーランド』へと転移したのである。