軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12-25 サキとエルザ

「それじゃあ、ライ兄とベルチェさん、来るの?」

「ああ。明後日、ここに招待したからな」

仁はエルザに、ラインハルト達のことを報告した。

「楽しみ」

そんな会話をしていると、マーサが仁に尋ねる。

「それじゃあジン、サキさんはジンのお城に泊まるのかい?」

「ええ、そうするつもりです」

「じゃあ、私も泊まる」

エルザも泊まる、と言ってきた。

「ああ、いいよ。それじゃあマーサさん、夕食は二堂城でしませんか?」

どうせなら、食事はみんなで食べた方が美味しいと、仁はマーサとハンナを誘った。ミーネは給仕のために来てくれる。

「そうだね、たまにはいいかもね」

「わあ、たのしみ!」

マーサもハンナも賛成してくれたので、全員二堂城に移動する事になった。

留守番はサラとバトラーA。

「ジンのお城に行くのも宴会の時以来だね」

心なしかマーサもうきうきしているように見える。

「あ、ジン様、お帰りなさいませ!」

目がいいのか、二堂城玄関からベーレが出てきて迎えてくれた。

「ただいま。変わりなかったかい?」

「はい! バロウも私も、元気でやっています! お客様ですか?」

サキを見たベーレが言った。マーサやハンナ、エルザの顔は見知っているが、サキは初めての顔である。

「ああ。彼女はサキ。俺のお客だ。ショウロ皇国の錬金術師だぞ?」

「わあ、そうなんですか」

そんなベーレを見て、サキは仁に尋ねた。

「ジン、もしかして彼女も?」

「うん、彼女、ベーレと、もう1人、執事見習いのバロウはショウロ皇国出身なんだ」

仁がそう言うとベーレがそれを引き取って続ける。

「はい、そうなんです。セルロア王国に働きに出ていたんですが、勤め先の貴族さまが没落したので解雇されまして……」

実際よりちょっとだけオブラートにくるんで説明するベーレであった。

「そうかい、苦労したんだね」

「いえ、今はこちらで働かせていただき、幸せですから」

「ベーレ、立ち話していちゃいけないよ。……ジン様、お帰りなさいませ」

中からバロウが出て来てベーレを 窘(たしな) めた。

「あっ、失礼致しました」

慌ててお辞儀をし、一行の世話をするベーレ。サキはそんなベーレたちを微笑ましそうに眺めていた。

一行は1階食堂に入り、また歓談を続ける。

サキは、マーサの人柄に惹かれたようで、いろいろと話を聞いていた。

「サキさんは大分遠くの国から来たみたいだね? ジンともちょっと雰囲気が違うしね」

「わかりますか?」

「ああ、わかるともね。言葉の癖というのかね、それが少し違うからね」

言葉の癖、とマーサの言っているのはアクセントのことである。小群国内では方言に相当するものはほとんど無いが、やはり地域によってアクセントが違ってくるのは避けられない。

因みに、仁はどちらかというとクライン王国的なアクセントだったので、最初から違和感無く受け入れられていた。

その仁は、ラインハルトやエルザとの付き合いが長いことと、召喚された時の言語知識付与のおかげで、相手により喋り方やアクセントを変えることが無意識にできている。

「ジン兄、ベルチェさん、きれいだった?」

エルザは結婚式の話題に興味津々である。

「ああ、きれいだったな」

「おにーちゃん、もっとくわしく聞かせて」

ハンナも同様だ。

そんな風に話が弾んでいた時、カーンカーンと鐘の音が響いた。

「ん? 何だ?」

仁の疑問に答えたのは奥から出て来たバトラーB。

「『刻の鐘』でございます。朝7時、正午、午後5時に鳴らしています。試験的運用ですが、評判は良いようです」

「なるほどな」

仁は老君の発案か、と尋ねたかったが、マーサたちの手前、黙っていた。まあ十中八九間違いないだろう。老君、なかなかいい仕事をしている。

「皆様、5時になりましたのでお食事の用意をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

危なげない仕草と口調でバロウが言った。ミーネはその後ろで教育の成果が出たと頷いている。

「ああ、頼むよ」

「はい、かしこまりました」

厨房へ向かうその背中も少し頼もしくなってきたようだ。

夕食の献立はクライン王国(カイナ村)風とショウロ皇国風が半々、という組み合わせで、サキも馴染んだ味と珍しい味を楽しめたようだ。

食後のお茶として、仁が出させたのは正真正銘の緑茶。これはラインハルトから分けて貰った分である。

「へえ、このお茶、美味しいね」

「このあじ、すき!」

「……緑茶?」

マーサ、ハンナ、エルザはそれぞれの反応を見せる。仁は、あんこを全部食べてしまったことを悔やんでいた。

マーサ、ミーネは暗くならないうちに家へ戻り、エルザはサキと一緒に泊まっていくことになった。

ハンナはといえば、

「おきゃくさまがいらしているから、じゃまにならないようにこんやはかえります。おにーちゃん、またあした」

等と大人びたセリフを口にして、マーサと共に帰って行ったのである。

「ハンナも少し大人びてきたなあ」

と、感心するやら少し寂しく思うやらの仁であった。

「じゃあ、2人ともお風呂で汗を流してくるといいよ」

仁は食事前の風呂が好きなのだが、今日は話し込んでいて入りそびれたのである。

二堂城にも、来客用の風呂がある。湯脈が近くになかったので温泉でないことが残念だ。

1階にあるのが家族風呂で地下が大浴場。

エルザとサキは家族風呂へ行った。

「ほう、掛け湯でなく、浴槽があるんだね! これは素敵だ」

脱衣所で服を脱ぎ、浴室に足を踏み入れたサキが感心したように言った。

「でも、村の中にある温泉はもっと素敵」

エルザが補足する。

「おんせん? なんだい、それは?」

「地下からお湯が湧いてくる。それを利用したお風呂。カイナ村の名物。明日の朝入りに、行こ?」

「へえ、それは楽しみだ」

身体を洗い、浴槽に浸かったサキは手足を伸ばす。

「あー、やっぱりお湯に浸かるというのはいいね。のんびりするよ」

「サキ姉、いまでも不規則な生活しているの?」

エルザも一緒に湯船で手足を伸ばしながら尋ねた。その鋭い質問に、サキはばつの悪そうな顔をする。

「くふふ、面目ない。だが、先日アアルを作ってもらったから、改善されてはいるんだよ」

「その笑い方も変わってない」

「くふ、会う人みんなにそう言われるよ。気持ち悪いかい?」

「ううん。サキ姉らしいと思うだけ」

「くふふ、エルザは可愛いねえ」

にっこり笑ってエルザの頭を撫でるサキ。エルザはそんなサキに質問をする。

「あの 自動人形(オートマタ) 。ジン兄とライ兄と一緒に作った、って言った、ね?」

「ああ。楽しかったよ。そういうエルザも、エドガーだったっけ? あれを作ったんだろう?」

そしてサキもエルザに尋ね返す。

「うん。ジン兄が付いていてくれた、から」

そんなエルザをサキはまじまじと見つめた。

「うん、エルザ、なんだか大人になったね。旅に出る前と雰囲気が変わったよ」

「そう?」

「旅でいろいろ経験したんだろうね? 詳しく聞かせてくれるかい?」

「ん」

そうして、エルザとサキは風呂場で、そして風呂から上がったあとは客室で、積もる話に盛り上がったのであった。