軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10-07 都市アルバン

翌日27日、仁達は朝食後、アルバンに向けて出発した。

第5列(クインタ) のスピカ7がアルバン一帯を担当しており、付近にちょうどいい廃墟を見つけたので改造して拠点にしていた。

もちろん拠点には 転移門(ワープゲート) を設置してあるので、それを使えばひとっ飛びである。

今回も念のためハンナには目隠しをして貰い、転移した。見えていないが 隠密機動部隊(SP) も付いてきている。

「お待ちしておりました、チーフ、シスター。それにエルザさん、ハンナちゃん」

スピカ7が出迎えてくれた。ちょうどエルザと同じくらいの体形である。胸はもう少しあるが。

髪は仁達と同じような茶色のボブ。瞳はグレーになっていた。茶色い麻でできた庶民らしい服を着ている。

「ああ、ごくろう」

仁が出迎えを労うと、目隠しを外したばかりのハンナが、

「おにーちゃん、この人だれ?」

と尋ねてきた。

「ああ、礼子の妹、かな。見かけは礼子より大きいけど」

と仁が説明すると、ハンナはわかったようなわからないような、微妙な顔をした。

「さっそくだが、クライン王国の首都アルバン見物に来た。この剣を届けるという目的もあるんだけどな」

「はい、お任せ下さい、チーフ。私がご案内します」

そう答えるスピカ7に、

「そのチーフというのは今は止めてくれ。礼子をシスターと呼ぶのも無しだ。そうだな、俺は仁でいいし、礼子も礼子でいい。あと様付けも無しだ」

「わかりました、仁さん」

「うん、それでいい。そうだ、お前は何と呼べばいい?」

「はい、この街ではバーゴと名乗っています」

「わかった、バーゴ。じゃあさっそく案内頼む」

廃墟から外に出る。崑崙島は晴れていたがこちらは薄曇りだ。仁は持ってきたエゲレア王国 名誉魔法工作士(オノラリ・マギクラフトマン) の証であるハーフコートを羽織った。

廃墟は結界で防御されていると見え、出る時にわずかな違和感があった。かなり強力な結界だ。

廃墟の周りは小さな森になっており、そこにも方向感覚を惑わせる簡易結界が張ってあった。スピカ7はなかなか用心深いようだ。

そこから歩いて約10分、いよいよ首都アルバンが見えてきた。

ここも城塞都市で、城壁の高さは大体8メートルくらいか。エゲレア王国の首都アスントの城壁は高さ10メートルだったからそれよりは低いが、石の壁というのはやはり重厚感がある。

崑崙島を8時半過ぎに出たので、時差約1時間半のアルバンは7時過ぎ。城門が開いたばかりのようだ。

「入るのに何か審査とかあるのか?」

「はい。もう沈静化しましたが、フランツ王国との紛争がありましたので、身分証などの提示が必要になります。仁さんの場合は 名誉魔法工作士(オノラリ・マギクラフトマン) の証明書で十分だと思います」

念のため着てきて良かったと思う仁であった。

「ハンナとエルザは?」

「はい、ハンナちゃんは小さいので仁さんの妹さんで通ると思います。エルザさんは微妙ですね。何か家族であるという証明ができれば簡単なんですが」

そう言われた仁は、かつてポトロックで 魔法工作士(マギクラフトマン) である証明をしたことを思い出した。

「エルザも『 変形(フォーミング) 』は大分使えるようになったよな? それでいこう」

そう言って、何か素材がないか、と念のためポケットを探る。と、軽銀の端材が出てきた。多分エゲレア王国で馬車を作った時に出た半端材である。

試乗する時にハーフコートを羽織り、その時に残っていた端材を適当にポケットに突っ込んでそのままになっていたのだろう。小さいが、この前作ったペンくらいなら十分作れる。

「よし、証明を求められたらこれでペンを作って見せてやれ」

「ん」

これで一安心。礼子は 消身(ステルス) で姿を消す。

そして一行は開け放たれた城門へ向かった。

「やあバーゴ、今日も綺麗だね」

「ありがと、お仕事頑張ってね」

スピカ7=バーゴは身分証とかいらないのかと思っていたら、衛兵と顔見知りのようで顔パスである。

「そっちの人たちは?」

「ええ、あたしの知り合いで 魔法工作士(マギクラフトマン) の仁さんと妹さんたち」

仁たちはぺこりとお辞儀をする。

「ほう、そうですか。一応何か証明はありますか?」

バーゴの知り合いと言うことで、割合丁寧な扱いのようである。その向こうでは、別の衛兵が商人らしき男を厳しくチェックしていた。

「俺はエゲレア王国の 名誉魔法工作士(オノラリ・マギクラフトマン) です」

仁はそう言ってハーフコートの左胸の紋章を見せた。

「これで足りなければ……」

ミスリル銀に刻まれた証明書を取り出そうとしたが、衛兵はそれを止め、

「いや、わかりました、結構です。そちらのお嬢ちゃんは?」

「あたし、おにーちゃんのいもうと!」

とハンナが元気よく答えた。

「はい、わかったよ。最後に、そちらのお嬢さんは? ……こちらも美人だねえ」

結構軽い性格なのか、エルザを見てそんなセリフを吐いた。

「私はジン兄の妹。これで証明する」

エルザはそう言って、手にしていた軽銀をまず衛兵に見せつけるようにしてから、

「『 変形(フォーミング) 』」

工学魔法でペンを形作って見せた。その製作速度の速さに衛兵は驚く。

「こ、これはすごい。わかりました、どうぞお通り下さい。これが仮証です」

と言って木の札を3枚差し出した。

「これを持っていれば、城門できちんと審査を受けたことが証明されます」

仁、エルザ、ハンナはそれを受け取った。

「出る時はそれをお返し下さい。持っていないと不審者扱いされることもあります」

「わかりました。どうもありがとう」

仁はそう言って城門をくぐった。いよいよアルバンである。

「上手くいきましたね、仁さん」

「ああ。バーゴ、あの衛兵と親しいのか?」

気安そうだったのでそう聞いてみる仁。

「はい。彼はバルトと言いまして、あれでも成り立て騎士なんですよ? 見ての通り軽い性格なんで、暇そうな時に話しかけると勝手にいろいろ情報漏らしてくれるんで重宝してます」

「そ、そうか……」

第5列(クインタ) もちょっと見ないうちに随分たくましくなった、と変な感心の仕方をする仁であった。

「さて、まずは剣を渡してしまいたいな。礼子、姿を現せ」

建物と建物の間、人に見られない場所で礼子を呼ぶ仁。

「はい、お父さま」

そして手に持った剣を仁に差し出した。剣とわからないよう、一応布に巻いてあるからこのまま持っていても大丈夫だろう。

「よし。バーゴ、ファールハイト家ってわかるか?」

だがそれは知らなかったようで、

「申し訳ないですが、存じません」

と頭を下げた。

「いや、知らないならいい。誰かに聞いてみるか……とりあえず、騎士とか準男爵とかの下級貴族が住んでいるエリアはわかるか?」

「はい、それでしたらわかります」

「よし。……ハンナ、エルザ、どうする? 俺は剣を渡しに行ってくるが、無理に付き合ってくれる必要は無いから、別行動していてもいいぞ?」

と仁が聞いてみると、2人とも首を振った。

「あたし、おにーちゃんといっしょがいい!」

「私も。一緒に来たんだから一緒に行動、しよ?」

「わかったよ。じゃあ一緒に行くか」

ということで姿を現した礼子を含む5人は連れ立ってアルバンの大通りを歩いて行った。両側には石造りで2階建て3階建ての家が建ち並ぶ。

1階部分は商店になっている建物も多い。あとでゆっくり見よう、と仁は思った。

大通りを真っ直ぐ歩くこと10分ほどで大きな日時計のある中央交差点。そこを右に曲がって今度は東エリアに向かう。

曲がってすぐは大きな建物が多かったが、次第に建物の規模が小さくなっていく。

「このあたりからが 騎士(リッター) の住居になっています」

ほとんどが小さな庭が付いた2階建ての家である。外から見た限りでは20坪くらいの土地が割り当てられているようだ。アルバンの大きさが1辺2キロの正方形に近い大きさと考えればこれでも広い方なのだろう。

人通りが少ないというか仁たち以外に通行人がいないので、リシアの家がどこなのか、聞こうにも聞けない。

「さて、どうするか」

仁が考え込んだ時、前から走ってくる人が見えた。

「あ、良かった、あの人に聞いてみよう」

それで近づいてくるのを待つ。その人物は若い女性のようだった。