軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10-05 お出かけ準備

「リシアはクライン王国王都に住んでるって言ってたわけだが」

以前、『王都に出てきたら……』と言ってくれたことを仁は思い出す。

「クライン王国の王都、つまり首都だよな。……どこだっけ?」

『 御主人様(マイロード) 、アルバンです』

老君が教えてくれた。

「ああ、そうそう。アルバンだったな。どんなところだろう?」

以前、そのうち行ってみようと思っていたのに、ワルターとか言う伯爵のせいでおじゃんになってしまったのである。

「うーん、エルザに聞いてみようか。……そう、か。エルザも連れて行ってやろう。そうだ、ハンナも!」

だんだん話が大きくなってきたので礼子は焦る。

「お父さま、それは……」

だが老君は別の意見だったようだ。

『 御主人様(マイロード) 、それでしたら魔法染料で髪の色を変えることをお薦めします』

「魔法染料……ああ、そうか。それだけでも印象はがらっと変わるものな」

魔法染料の一部のものには、カメレオンのような魔獣から採れるものがある。そういう染料は魔力で色を自在に変えられるのだ。

落とす時は工学魔法で可能だから、それはいい案である。

『ですが、エルザさんもハンナちゃんも、勉強会があるので何日も、というわけには行きませんよ』

そんな老君の言葉を聞いた礼子ははっとした。こうやって誘導することで、仁の出掛けている時間を短縮しようという老君の意図に気づいたのだ。こういう陰謀(?)面では老君の方が礼子より数段上である。

「ああ、そうだな。よし、明日から1泊2日。ならいいだろう?」

「そうですね、お父さま」

『よろしいかと思います。それでしたら、エルザさんにも 隠密機動部隊(SP) をお付けした方がいいのではないでしょうか』

礼子は了承し、老君は更に提案をしてきた。仁はその提案を肯定する。

「それはそうだな。よし、ラインハルトたちと同じく、2体付けよう」

さっそく仁は2体の 隠密機動部隊(SP) を製作した。何体もやっているので複製工程で済むから早い。

「名前は『マロン』と『プラム』だ」

ふと気が付くと、カイナ村を離れてから3時間くらい経過していた。

「まずい、そろそろ戻らないとまたハンナに怒られる」

そう言って仁は、一旦戻ることに。横では礼子が微笑んでいた。

「あ、おにーちゃん。もうおひるだよ?」

カイナ村の時刻は11時半。勉強会から戻っていたハンナがちょうど仁を呼びに来たところであった。内心ギリギリセーフ、と呟く仁。

「わかった、今行くよ」

ということで仁はマーサ宅の食堂へ。エルザとミーネも戻っていた。

「ジン兄は途中からいなくなったけど、今日はなんとか上手くやれたと思う、よ?」

エルザが仁にそう報告する。ミーネも続けて、

「今日は顔合わせで自己紹介のあとは勉強の意味とか、どんな場面で役立つか、を説明してみました」

などと補足した。仁はそれを聞いて頷く。

「そっか、良かったな。このあと、ちょっと話があるんだ」

仁はそう言って、まずは目の前にある昼食に取りかかった。

「……ということで、1泊2日でクライン王国首都のアルバンへ行ってみようと思う。エルザはアルバンは知ってるかい?」

簡単に説明した後、仁はエルザに聞いてみる。この中で一番各国に詳しいのはエルザだからだ。

「ううん、行ったことがないので知らない。ごめんなさい」

そう答えて少ししょんぼりするエルザ。仁はそんなエルザに優しく声を掛ける。

「いや、気にするなよ。だったら尚更行ってみる価値があるじゃないか」

「え?」

「だから、俺と、エルザと、ミーネ、そしてハンナで行ってみようというんだよ」

仁がそう言うと、ハンナが嬉しそうに声を上げた。

「ほんと? おにーちゃん、あたしもつれてってくれるの?」

「ああ。1泊2日だけどな。いい勉強にもなるだろう。マーサさん、いいですよね?」

ハンナの祖母であるマーサにそう尋ねるとマーサは大きく頷いて、

「いいともさ。村にいたんじゃ見られないようなものをたくさん見ておいで」

どうやってアルバンまで行くのか、ということをまったく気にしていない。仁との付き合いが長いマーサならでは、と言ってしまっていいのだろうか。

「うん! ありがとう、おばあちゃん!」

だが、その一方で大喜びのハンナである。

「よし、そうしたら、明日出発するから、今夜は崑崙島に泊まりにおいで。そうだ、マーサさんも泊まりに来ませんか?」

仁がそう言うとマーサは首を振って、

「いや、あたしはこの家にいるよ。若い者たちだけで行っておいで」

とその申し出を断った。するとミーネも、

「ジン様、エルザ、私はここでマーサさんと一緒にお留守番してます。3人で楽しんできて下さい」

と言った。

仁はそんな2人にやっぱりみんなで一緒に行こう、と言ったのだが、結局3人で行くことになる。

「じゃあ、今夜は崑崙島に泊まって、明日の朝出発しよう」

「うん!」

「ん」

そういう訳で、仁はエルザとハンナを連れて崑崙島へと跳んだ。ハンナはまた目隠しである。今回は、ハンナには見えていないが専用 隠密機動部隊(SP) 、『イリス』と『アザレア』も付いてきている。

「わーい、おにーちゃんのおうちだー! あ、めいどさんだー! こんにちはー!」

ハンナは崑崙島に着くなりはしゃぎ回っている。そして前回少し世話になったメイドゴーレムを見つけて声を掛けたりしていた。

「エルザ、相談があるんだ」

そんなハンナはまずははしゃぐに任せておき、仁はエルザに変装の話をした。

「少しでいいから、変装すれば、後々面倒なことを避けられると思うんだ」

「ん、わかった。私は髪の色を変えればいいの?」

「ああ。そうだな、そのプラチナブロンドが茶色になるだけで大分印象が変わるぞ? 俺も茶色にする。ハンナは……どうしようか?」

ハンナは顔も名前も全く知られていないし、知られて困ることもない。が、やっぱり念のため、同じく茶色にすることに決めた。

「ハンナ、ちょっとおいで」

ペリド100に遊んでもらっていたハンナは、仁に呼ばれるとすぐにやってきた。

「なーに、おにーちゃん?」

そんなハンナに説明する仁。

「明日出掛ける準備としてな、髪の毛の色を変えてみようと思うんだ」

「え?」

やはりよくわからないらしい。そこで仁は実際にやってみせることにする。

洗面所に行き、用意させておいた魔法染料を溶かした水で髪の毛を濡らす。そして工学魔法を使うのである。まずはエルザ。

「『 色変化(チェンジカラー) 』」

見る間にエルザの髪が明るい茶色に変わった。

「わ! すっごーい! おもしろーい!」

それを見たハンナは手を叩いて面白がる。次は仁自身。色は焦げ茶色にした。

「おにーちゃんはあまりかわらないね」

黒が焦げ茶になったくらいでは印象が大きくは変わらないので、エルザの時よりハンナの反応は鈍い。だが仁は気にしない。というか気にするようなことではない。

「よし、それじゃあハンナだ。いいかい?」

「うん!」

「『 色変化(チェンジカラー) 』」

ハンナは栗色にしてみた。同じ茶系統でもエルザは落ちついた茶色、仁は焦げ茶、ハンナは明るい栗色。

鏡に映った自分たち3人の姿を見てハンナはまたしてもはしゃぐ。

「おもしろーい! あした、たのしみだなー!」

そんなハンナに、迷子になった時の保険として、仁は自分の魔力を込めた 魔結晶(マギクリスタル) 付きのネックレスをプレゼントしよう、と思いついた。

それに、よそ行きの服。デザインは苦手なので、エルザにも相談するつもりだ。

サイズについては、以前ビーナやエルザの服を作ったことでわかるように、礼子がいるから心配はいらない。

「よーし、それじゃあ服を作るぞ」

仁がそう言うと、やっぱり女の子、ハンナとエルザ、2人とも顔を輝かせた。

「エルザはデザインとかアドバイスしてくれ」

「ん。ジン兄」

そうして3人は館内の工房へと向かったのである。