軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

01-14 ゴーレムのゴン

「これがゴーレムか……」

「いったいどうしてこんな所にゴーレムが?」

仁は、自らが倒したゴーレムを調べている。村の男達はゴーレムの脅威が去って気が抜け、へたりこんでそのまま休憩中だ。一方リシアは仁のそばで、一緒にゴーレムを調べている。

「何者かが送り込んできたとしか思えません」

リシアが推測を述べる。

「何のために?」

「さあ……それは……」

元々ゴーレムは単純な命令をこなせる程度の自律性を持っている。それだけに、術者がそばにいなくてもいいので、送り込んだ犯人を突き止めるのは難しい。

「ま、犯人の割り出しが無理なら」

「どうします?」

「利用できる物なら利用します」

今度はゴーレムの構造を調べていく仁。

「しっかし雑な作りだな」

一刀両断に切り捨てる。それを聞いたリシアは、

「え、ええ!? ゴーレムってそれなりに高度な魔導人形なんですよ?」

「そうは言っても、体はただの石だし、鎧だってただの鉄。核は小さな 魔結晶(マギクリスタル) だし、 魔素変換器(エーテルコンバーター) すらないから、 魔力貯蔵庫(マナタンク) なんてものを使っているもんな。使い捨てのゴーレムとしか思えないですよ」

「ええええ!?」

リシアも、準貴族となってからそれなりの学校へ通い、この世界としてはかなり高等な知識を有しているつもりであるが、仁の言うことはすべてその遙か上を行っていた。

「ちょっと 弄(いじ) ればそれなりに使えるようになるかな。とりあえずニコイチだな」

そう呟きながら、2体のゴーレムを並べ……ようとして重すぎたために諦め、行ったり来たりして必要な部品を集めていく仁。その頃には男達も仁のやることを面白そうに眺めるようになっていた。

「こっちの 魔結晶(マギクリスタル) の方が少し大きいからこれを核にして、こっちのは 魔力炉(マナドライバー) として使う、と」

「なーんか、複雑なことやってんだなあ。おいジン、あとどれくらいかかるんだ? そろそろ出発してえんだが」

放っておけばいつまでも楽しくやっていそうな仁に、ロックが声を掛けた。

「あ、あともう少しですよ」

そう言いながら手を止めない仁。

「こうして、腕を繋いで、と。『 融合(フュージョン) 』」

ゴーレムが元の形に戻る。

「そして『 隷属(マスタースレーブ) 』。起きろ、ゴーレム」

その声に応じてゴーレムが起き上がった。

「う、うおっ!?」

驚いて後ずさるロック達。リシアも思わず曲がった剣を握りしめた。それを見た仁は笑って、

「大丈夫ですよ。こいつはもう俺の言うことしか聞きませんから」

ゴーレムは基本的に核に込めた魔力の主に従うのだ。

「だけどもよ、ジン……」

そう言われても不安そうなロック達に、

「大丈夫ですって。ほら」

そう言いながら、ゴーレムの背中をばしばしと叩いてみせる仁。

「ほんとうに大丈夫なんだな……」

「心配性だなあ。ゴーレム、命名、『ゴン』」

なんともネーミングセンスのなさ溢れる命名だった。が、仁本人は一向に気にした様子もなく、

「『ゴン』、このリヤカーを牽け」

そう命じると、ゴーレムは肯くような仕草をした後、リヤカーを牽いて歩き出した。

「さあ行きましょう」

仁はそう言って、先頭に立って進み始める。呆気にとられて見ていた男達もあわててそれに続く。リシアも馬に跨り、急いで仁を追った。

それから2時間ほどでトカ村に到着した。なんとか日暮れに間に合ったのである。

「お、おわわっ?」

「なんだ、ありゃあ?」

そして当然、ゴーレムのゴンを見て、村人は仰天していた。薄暗くなってきたのでなおさら不気味である。

「うぬ、村を襲う気か!」

トカ村在駐の兵士が剣を持って前に出てくる。それを押し止めたのはリシアであった。

「お待ち下さい。このゴーレムは味方です」

騎士見習いとはいえ、一介の兵士よりは位は上。兵士は驚いて立ち止まり、

「あ、は、そうなんですか? ……はい、わかりました」

素直に言うことを聞く。ゴンも暴れたりするわけではないから、すぐに村の連中もその外見に慣れた。

「麦はここに運んで下さい」

トカ村の倉庫へと麦を搬入していく。活躍しているのはゴン。

「おー、すげえな」

人の3倍以上の力を持つゴーレムは、仁達が運んできた麦を1人(?)で倉庫へ運び入れてしまったのである。

「ご苦労さん、ゴン。休んで魔力を回復していろ。麦を奪おうとする奴がいたら排除しろ」

仁が指示を出すと、ゴンは倉庫の前に直立し、そのまま動きを止めた。

「これで見張りもいらないでしょう」

笑ってそう言う仁を、トカ村の人々は何とも言えない顔で見つめ、

「何もんだ、あいつ?」

「カイナ村にあんな奴いたか?」

などとひそひそと囁いていた。一方、カイナ村から来た男達は、

「いやあ、ジン、おめえってやつは大したもんだな!」

「あのゴーレム、何でも言うこと聞くのか?」

「村へ連れて行けば重宝しそうだな!」

更に兵士達はといえばリシアに向かって、

「あ、あのう、徴税官殿、あのゴーレムはいったい……」

「あの青年は何者なのですか?」

と、三者三様の反応であった。

その日は、リシアは王国兵士の宿舎に、仁達はトカ村の宿屋に泊まることになった。

夕食後、仁がトカ村を見て歩いていると、リシアを見かけたので声を掛けてみる。

「リシアさん」

「あ、ジンさん」

「まだそんな格好しているんですか」

リシアは胸当てを着け、手には剣を持っていた。

「ええ、まだ任務中ですから」

「そうですか、大変ですね。で、何をしているんです?」

手にした剣を見つめながら仁がそう尋ねると、

「剣が曲がってしまったので、鍛冶屋さんに行ってきたのですが、直せないって言われてしまって」

「どれ? 見せてもらえます?」

リシアは素直に、仁へ曲がった剣を渡した。仁はその剣を眺めていたが、

「 分析(アナライズ) 。……あー、これはなまくらだ。鋼じゃなくて鉄ですから」

「え? でも、それを買った武器屋ではそこそこいい剣だ、って」

「騙されたんじゃないですか? 女だから善し悪しなんかわからないだろう、と思われたか、さもなければ剣は飾りでいいだろう、と思われたかして」

「そんな……」

がっくりとうなだれるリシア。その様子を見た仁は剣を持ったまま、

「仕方ないな。 変形(フォーミング) 。 浸炭(カービュライジング) 。 熱処理(ヒートリート) 。 硬化(ハードニング) 」

曲がった剣を真っ直ぐに直し、浸炭により鋼化して、硬化まで掛けた。

「はい、これでいいですか?」

「え、え、え?」

リシアは仁が何をしたのか、理解が追いつかないようだ。

「だから、剣を直したんですよ。今度はそう簡単には折れないと思いますから、大事にして下さい」

「あ、ありがとうございます……。 魔法工作士(マギクラフトマン) ってこんなことも出来るんですね……」

リシアは嬉しそうにその剣を受け取ると、

「ジンさん、お礼はどうすればいいでしょう?」

が、仁は、

「お礼なんていりませんよ」

「そういうわけにはいきません。仕事には対価が必要です。そうだ、王国専属の 魔法工作士(マギクラフトマン) になりませんか? 私が推薦致しますよ」

だが仁は、

「それはお断りします」

「なぜですか?」

即答した仁に、リシアは怪訝そうな顔を向ける。

「誰かに仕えるっていうのがいやなんですよ。俺は自由に暮らしたいし、家へ戻りたいし」

この場合の『家』というのは研究所のことであるが。

「そうですか……でも、もったいないですね」

「いいんですよ。だから、しばらくは俺のこと、報告しないでもらえますか?」

「え? どういうことですか?」

「多分、あのゴーレムに襲われたこととか報告するんでしょう?」

「ええ、それが仕事ですから」

「その時、俺のことは黙っててもらいたいんですよ。リシアさんがなんとか撃退したということにでも」

「でも、それじゃあ……」

だが仁は頭を下げ、

「頼みます。今はまだ、カイナ村で静かに暮らしたいんです」

そんな仁を見てリシアも諦めて、

「わかりました。でも、王都に出てくる時がありましたら、是非我が家へお立ち寄り下さいね」