軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

01-13 襲撃

突然のリシアの問いかけに、さすがの仁も絶句した。が、以前、孤児院の院長先生が言っていたことを思い出し、

「人というのは1人では生きていけない生き物です。なのでみんな、誰かの力を借りて生きているんです」

「ええ、そうですね」

その言葉にリシアは素直に肯いた。

「人には向き不向きがあります。そして出来る事と出来ないことがあります」

「ええ、わかります」

「だから、自分に出来る事をやっていけばいいんじゃないでしょうか」

仁がそう言うと、リシアは俯いて、

「……私にできること」

そう呟く。仁は、

「俺は貴族じゃないし、 政(まつりごと) にも興味はありません。でも、リシアさんは違うでしょう?」

「え?」

「自分のやっていることに疑問を持たない人が上に立っているというのはなんか嫌だなあ、と俺なんかは思いますよ」

そう言うとリシアは黙り込んでしまった。言われたことを考えているようだ。仁ももう何も言わず、星と月を眺めていた。

月の移動で大体2時間が経ったことを確認すると、2人は交代のために小屋へ。男達は大部屋、リシアは別室だ。

仁は、大部屋でいびきをかいて眠っていたジョナスとライナスを起こす。

「ん……ああ、交代か」

「はい、おねがいします」

「ん、わかった」

替わって仁が横になる。昼間の疲れもあって、すぐに眠ってしまった。

一方、リシアはなかなか寝付かれないでいた。仁に言われたことを考えていたのである。

「私に出来る事、ですか。それがなにかを見つけることが、当面の課題になるんでしょうね……」

* * *

翌朝は珍しく曇りであった。薄暗い中、朝食を済ませた一行は早々に出発。森を抜け、小川に架かる橋を渡り、草原を行く。

「この分なら夜になる前にトカ村に着けそうだな」

「だといいですね」

ゴトゴトとリヤカーは進む。予定通りに昼食も済ませられたので、あと15キロくらいか。4時間といったところだろう。周囲は岩場になって来た。

「この岩場を抜けるとトカ村が見えるぞ」

ロックがそう言って一行を元気づける。

「あと少しだ、頑張れ」

その時である。

「うわあーっ!」

最後尾のヤンが悲鳴を上げた。

「何だ、どうした!」

「う、うわっ、何だあれは!」

振り向くと、後ろから異形の何かが迫ってくるところだった。

「あれは、ゴーレム?」

リシアが呟く。

「ゴーレム? あれが?」

それは身長2メートル、全身に鉄製の鎧を着たような人型。かなりごつい。

「うわっ、こっちにも!」

ロックの声。前方からも同じゴーレムが迫って来た。

「麦を狙っているのか? くそっ、お前等、無理はするな!」

だいじな麦だが、鎧を着たゴーレムに勝てるはずもなく、ロックの悲痛な叫びが響く。

「させません!」

「リシア、無理だ!」

唯一剣を持っていたリシアは、そのショートソードを抜くと、怯えてすくんでしまった馬から下り、前方から来たゴーレムに向かっていった。

「大丈夫です、これでも剣術は習っています! たあっ!」

リシアは体勢を低くし、ゴーレムの足を狙って切りつけた。が、

「うそ……」

ショートソードはゴーレムの脚を切り裂くことなく、くにゃりと曲がってしまった。

「だから言ってるんだ! 下がれ!」

仁が駆け寄りながら叫ぶが、

「いやです! 私は見習いとはいえ 騎士(リッター) ! 騎士(リッター) は皆を守るんです!」

「あぶない!」

「え?」

リシア目掛け、ゴーレムの拳が振り下ろされた。

仁は 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 。 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) は、実は攻撃魔法が使えないのだった。

治癒系の魔法も、せいぜい工作中の切り傷、擦り傷を治す程度。その分、創作系の魔法に適性が振られているのだ。しかも、触れていない物には効果を及ぼせないというおまけつき。

だが、「攻撃魔法が使えない」イコール「攻撃できない」というわけではない。チェーンソーは木を伐るための機械だが、切れるのは木だけではない。

まあ、そういうことだ。仁は腰に提げた革の水袋を手にし、

「くそっ! 間に合え! 水流の刃(ウォータージェット) !」

「きゃっ!」

リシアの頭にごつん、と鈍い衝撃。もうだめだ、と彼女は観念した。

が、目の前に金属音と共に、ゴーレムの腕が転がり落ちたのを見て、

「あいたあ……?」

おそるおそる目を上げると、そこにはゴーレムの下半身があった。上半身は向こう側に落ちている。腕も一緒に切り裂かれたようで、右腕の肘から先が無くなっていた。

その右腕は自分の前に転がっており、さっきの鈍い衝撃はこれがぶつかったのだと理解した。

「そ、そうです、もう一体!」

後ろからもゴーレムが襲ってきたのを思い出し、立ち上がってそちらを見る。

ちょうど、仁が 水流の刃(ウォータージェット) でゴーレムを切り裂くところだった。

「うそ……」

あんな魔法は見たことがなかった。水を使った魔法のようだが、水系の攻撃魔法と言えば、水で押し流す 水流(ウォーターストリーム) や水球をぶつける 水弾(ウォーターボール) くらいしか知らない。いずれも、近くに豊富な水がなければ使えない魔法だ。

「リシアさん、大丈夫ですか?」

もうゴーレムが現れないことを確認すると仁が駆け寄ってくる。

「は、はい。ちょっと頭にコブが出来たかもですが」

ゴーレムの腕がぶつかった頭を撫でる。

「ああ、すみません。少しだけ遅かったようで」

「ジンさん、あの魔法はいったい?」

「ん? 水流の刃(ウォータージェット) ですか? あれは石や鉄を加工するための 工学魔法(クラフトマジック) ですけど?」

「えええ? あんなすごい攻撃力を持っているのに?」

驚くリシアを尻目に、

「その話はまたあとにしましょう。リシアさん、治癒魔法は使えますか?」

一番後方にいたヤンが、ゴーレムに殴られ、腕を折られてしまっていたのだ。

「あ、大丈夫です。……『かの者を癒す光よ、あれ。 治療(キュア) 』」

リシアがヤンに駆け寄り、折れた腕に掌をかざし、魔法を使う。と、淡い光が患部を照らし、腕の腫れが見る見る引いていった。

「おおー! すげえ!」

見ていた男達も感心している。

「ありがとうございます、リシア様」

ヤン、そしてロックが礼を言った。

「いいえ、これも私の務めですから」

そう言ってリシアは笑い、自分の頭に出来たコブの治療をした。