軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09-34 撃退

「礼子、ご苦労だった。そのままエゲレアに向かえるか?」

「はいお父さま、問題ありません」

「よし、俺は身代わり人形使ってエゲレアに介入するからな」

「わかりました、こちらも向かいます」

テトラダの戦場が一区切り付いたので、次に仁はエゲレア王国首都、アスントに介入することにした。

蓬莱島からの距離を考えると、もう既にラプター6から10、ファルコン6から10が到着しているはずである。

仁はラプター10に乗っている身代わり人形からの映像を魔導スクリーンに映し出した。

* * *

「『 嵐の乱打(ストームラッシュ) 』!」

「きゃああ!」

嵐の乱打(ストームラッシュ) を唱えたのはライラだった。目の前に迫った敵ゴーレム、それを防ごうと夢中で唱えたのである。

風属性上級魔法であるそれは、ゴーレムを廊下の端まで後退させる威力があった。余波で味方も弾かれたが些細なこと。

「はあ、はあ……」

「やったじゃない、ライラ! あなたはやればできるのよ!」

「姉さま……」

優秀な姉に褒められたライラは僅かに頬を染めた。

「さっ、陛下、妃殿下、殿下、今のうちに階下へ!」

ライラが稼いだ時間を無駄にするわけにはいかない、先頭は近衛騎士が務め、王、王妃、王子、ゴーレムのロッテ、そしてライラと続き、ライラの姉アイリが 殿(しんがり) を受け持った。

残念ながら、敵ゴーレムに倒された味方騎士を気遣う余裕は無い。

何とか降り立った1階ホールには傷付いた味方兵士が大勢倒れていた。

「こちらからもゴーレムが?」

どこから侵入したのか、屋上から攻め込んできたゴーレムと同型の物が10体暴れていたのである。

「陛下!」

悲鳴に近い声を上げたのは魔法相ケリヒドーレ。彼の周りには近衛ゴーレム隊の残骸が山になっていた。

「こ奴らの強さは測りしれませぬ! ゴーレム 園遊会(パーティー) 時のレーコに匹敵します!」

「何と?」

「まさか、あのジンが裏で糸を引いているのでは?」

そう言ったのは防衛相ジュードルであった。

「違います」

その言葉を即座に否定したのは1体のメイドゴーレム。

「ロッテ?」

「お父さまはあのような無骨で不格好なゴーレムなどお作りになりません。あれは前回騒ぎを起こした 統一党(ユニファイラー) のゴーレムです」

ロッテはそう断言する。

「お父さまの名誉のために」

ロッテはそう言って、アーネスト王子たちに向かってきた1体のゴーレム目掛けて手にしたトレイを投げ付けた。

仁が作った鋼鉄製のトレイである。

ギャリン、というような耳障りな音を立て、敵ゴーレムの胸にトレイがめり込んだ。そのゴーレムは 魔導装置(マギデバイス) を破壊され、動作を止める。

ロッテは急いでトレイを回収、向かってきたもう1体の拳をそのトレイで受けた。

今度は甲高い音を立て、トレイが砕ける。が、敵ゴーレムの拳も砕けた。

「お父さまにいただいたトレイを! よくも!」

ちゃんと背中に背負っていた鋼鉄製のモップを今度は手にするロッテ。

モップは先端が大きく、重くなっており、メイス状の武器として使える。

ロッテが叩き付けたモップは敵ゴーレムの頭部をひしゃげさせた。

高度なゴーレムの視覚は頭部の目が受け持つ。つまり、頭部を破壊する事で視覚を奪う事が出来るのである。

破壊には到らなかったが、歪んだ頭部からは不十分な視覚情報しか伝わらない。

次の一撃で、ロッテは敵ゴーレムの胸部を破壊。これで2体を沈黙させたことになる。残るは8体。

「ロッテ! もういい! わかった! お前は陛下と殿下を守ってくれ!」

さすがに防衛相ジュードルも、今ロッテが壊れたらかなりの戦力低下となる事を認めざるを得ない。であるからこそ、王族の守りとしてロッテを失うわけにはいかないと判断した。

その指示を受け、ロッテが下がる、僅かの隙。

「殿下! 危ない!」

アーネスト王子を狙った魔法、 火の弾丸(ファイアバレット) が飛んできたのである。その数約50。

気が付いたロッテは打ち落とすべくモップを振るう。が、打撃武器であるモップでは50という 火の弾丸(ファイアバレット) を落としきれるものではなかった。

約半数の 火の弾丸(ファイアバレット) がアーネスト王子を襲う。

「殿下!」

誰かの悲鳴。アーネスト王子は被弾を覚悟し、頭を抱えて目を閉じた。

だが、いつまで経っても衝撃が来ない。おそるおそる、アーネスト王子は目を開けてみた。

「!?」

目にしたのは、アーネスト王子を守るように立っている2体の真っ黒なゴーレムであった。

仁が密かにアーネスト王子の守護にと付けた 隠密機動部隊(SP) 、『エリカ』と『ロベリア』である。

「き、君たちは?」

思わずそう尋ねてしまうアーネスト王子に、真っ黒なゴーレムは口らしき部位を開き、

「殿下を陰ながらお守りするものです」

そう言って、ロッテと共に、アーネスト王子たち王族を囲んで立った。

所属はわからないため、疑念は残るものの、戦力増強は嬉しい。そう思った矢先のこと。

「きゃああ!」

階段を守っていたアイリが吹き飛ばされた。

階上から3体のゴーレムが降りてきたのである。

これで王族を狙うゴーレムは11体となってしまった。

「……」

防衛相ジュードルは背に冷たいものが流れるのを感じた。

近衛魔導騎士のアイリは魔力を使い果たし、生きてはいるようだが怪我をして戦力外。その妹ライラはまだ未熟。

近衛騎士隊隊長ケリーは、謎の空飛ぶ球からの攻撃を防ぐため、外で指揮に当たっており、ここにいるのは副隊長のブルーノとその配下3名。

魔法相ケリヒドーレは魔法戦には有能だが、肉弾戦にはまるで向かない。

そして自分は、ゴーレム 園遊会(パーティー) の時に折った右腕がまだ癒えておらず、まともに剣を振れない。

「いざとなったらこの命差し出さねばならぬ、か」

ジュードルがそう覚悟を決めた時。

「な、何!?」

またしても新たに10体のゴーレムが現れたのである。

それは見たこともないゴーレム。ほぼ完全な人型をしており、銀茶色。手には剣を持っている。

「これまでか……」

ジュードルは最低でも1体、できれば2体を道連れにする覚悟を決め、腰のショートソードに手を掛けた。が。

現れた10体のゴーレムは、手にした剣を振りかざし、前からいた11体のゴーレムに立ち向かっていったのである。

「味方、なのか?」

銀茶色のゴーレム達が振るう剣の切れ味はとてつもなく、敵ゴーレム2体が持っていた槍をあっさりと切断してしまった。

「おお?」

「なんという……」

どんなに切れ味の良い剣であっても、金属を両断するのにはそれなりに力が必要である。

だが、目の前では、果物をナイフで切るが如く、敵ゴーレムの身体が斬り飛ばされていく。

慌てて回避しようとする敵ゴーレム、だが銀茶色のゴーレム達はもっと素早かった。

そして、その勢いで敵ゴーレムの腕を、脚を、そして胴体を斬り飛ばし、瞬く間に11体の敵ゴーレムは沈黙したのである。

「なんと、なんと……」

国王も目を見張っている。

「ジュードル、ケリヒドーレ。このゴーレムはそなた達が手配したのか?」

そんな国王の下問に答えられるはずはなく。

「い、いえ、こやつらの所属は不明でございます」

としか答えられなかった。

だが、口には出さなかったが、アーネスト王子は直感で銀茶色のゴーレムを作ったのが誰かの見当は付いていた。

そしてロッテはその魔力パターンを感じとり、

(お父さま、ありがとうございます)

製作者である仁に内心感謝していたのである。

ゴーレムが片付けば残るは空飛ぶ球である。

そこにいた全員は空を見上げた。すると、その空飛ぶ球がゆっくりと降下してくるではないか。

下がっている籠には2人の人間が乗っており、慌てている様子が見える。

「降りてくる、が、何やら慌てているようですな」

魔法相ケリヒドーレが目を凝らしながら呟くようにそう言った。

そして5つの球は全てアスント城内に落下した。

それを捕らえたのは、敵ゴーレムを倒したのと同じ銀茶色のゴーレム10体。これで20体が姿を現したことになる。

「な……いつ、城内に?」

防衛相ジュードルは焦った。

鉄壁と言われたアスント城が、これほど簡単に謎のゴーレム達の侵入を許していると言うことが信じられなかったである。たとえそれが味方のものであったとしても。

そしてその驚愕は更に加速する。

「うわわわ、あ、あれは!」

10メートルを越す高さの城壁をさらに上回る大きさのゴーレムが現れ、城内を覗き込んでいたのである。