軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09-30 報告、そして仁の決意

老君からの報告があると言うので、気になった仁は、

「ちょっと用があるんだ」

とハンナ達に断って夕方前に蓬莱島へ戻った。

ハンナはミーネと寝るらしいので安心である。

「老君、報告を頼む」

『はい、 御主人様(マイロード) 』

老君は報告を開始。まずは空母の進捗状況に始まって、ゴーレム用武器の 超高速振動剣(バイブレーションソード) 、 麻痺銃(パラライザー) 、 魔力妨害機(マギジャマー) の量産状況。

マーメイド隊が海底で資源を見つけたこと。何が採れるかは試掘中。

そして、

『セルロア王国を初めとする政府の要人が 催眠(ヒュプノ) や 暗示(セデュース) に掛かっていないかを調査した結果、多くの者が何らかの影響を受けているらしいことがわかりました』

との報告が。

「何……だと……」

ゆゆしき事態である。

『ところで、報告が前後してしまい申し訳ないのですが、魔力パターンを検知することで、精神操作系の魔法が使われているかどうかがわかるということが判明しました』

「何? それは朗報だな」

良くない知らせが多い中、これは大きな進展である。

『魔力パターンを検知してみた時、通常状態がフラット、興奮状態が山型になるのが普通の反応ですが、精神操作を受けていると、常にフラットな状態を保っています。但し、そのレベルは興奮状態に匹敵しています』

それを聞いた仁は納得する様に肯いた。

「わかる気がする。常に興奮状態が続いているようなものなんだな」

『はい。解除するには 衝撃(ショック) の魔法で可能です。以前言われていたようにわざわざ興奮させる必要は無いようです』

老君は明らかに操られている人間で実験したそうだ。後遺症もなく回復したという。

「人体実験の是非は置いておくとして、まあ、よくやってくれた。これでこの先、やりやすくなったよ」

『ありがとうございます。そして……』

更に老君は凶報を告げる。

『ラインハルト様が襲われました。つい先ほど、ラインハルト様付きの 隠密機動部隊(SP) からの報告です』

「何! 詳しく話せ」

そこで老君は、ラインハルトがドナルドという 魔法工作士(マギクラフトマン) 、それにエレナという 自動人形(オートマタ) と会った事、途中でエレナの態度が豹変したこと、 隠密機動部隊(SP) とエレナ、それにドナルドのゴーレムが戦った事。ラインハルト本人は無事な事。そしてドナルドが 統一党(ユニファイラー) の第2席だったことなどを説明した。

最後に、ラインハルトに渡した 魔素通信機(マナカム) が壊れてしまったと言うことで、連絡してきたのはラインハルト付きの 隠密機動部隊(SP) からであったこと。

「そうか、また 魔素通信機(マナカム) を渡さないとな」

『そのラインハルト様はご友人のマテウス様と配下に付き添われ、ショウロ皇国の補給基地へ移られたとのことです』

そう言って締めくくる老君。

仁はラインハルトが無事だったことに安堵すると共に、 統一党(ユニファイラー) への怒りが再燃してきた。

「あいつら、もう許しておけないな」

そしてできるだけ早くラインハルトに新しい 魔素通信機(マナカム) を渡すと共に、ラインハルト付きの 隠密機動部隊(SP) 、セージとコスモスをパワーアップ改造しなければ、と思った。

「それにしても、そのエレナとかいう 自動人形(オートマタ) はかなりのものらしいな。 隠密機動部隊(SP) は力がそれほど無いとはいえ、2体相手に互角以上とは」

「その 自動人形(オートマタ) というのはどんなものかわかりますか?」

今まで黙って聞いていたアンが突然口を挟んだ。老君がその質問に答えた。

『ええ。金色の髪、赤い目で肌は白く、少女と成人女性の間くらいの外見だそうです』

それを聞いたアンは声のトーンを上げる。

「それは! あいつです!」

「あいつ?」

アンの言葉が気になる仁はアンに説明をするよう指示を出した。

「『あいつ』と言ったのは、名前が知られていないからです。魔導大戦直前から魔導大戦初期にかけて出没した謎の 自動人形(オートマタ) です。そいつは人間そっくりでありながら、人間が作ったゴーレムや 自動人形(オートマタ) をほとんど無差別に破壊しまくりました」

「何だって?」

「かといって魔族の味方というわけでもなく、その 自動人形(オートマタ) にちょっかいを出した魔族が何体も倒されています」

「ふうん、何か目的があるのかな?」

「それはわかりません。『黄金の破壊姫』と一部の兵士は呼んでいましたが」

「黄金の破壊姫、か。話を聞いた限りでは暴走しているような気がするなあ」

仁が眉をひそめながらそう言うと、隣にいた礼子も賛同する。

「そうですね、なんとなくわかる気もします。きっと、その 自動人形(オートマタ) はマスターを持たずに暴走しています」

礼子が言うとなんとなく信憑性があった。

「するとその 自動人形(オートマタ) はそのドナルドとか言う奴が作ったんじゃなく、もっと過去のものと言うことか」

「はい、魔導大戦前に作られたもののはずです」

アンが締めくくった。

「うーん、なんでそんな 自動人形(オートマタ) が 統一党(ユニファイラー) の第2席と一緒にいるんだ?」

仁は首を捻るが、答えは出ない。

そこへ更に凶報が飛び込んできた。

『 御主人様(マイロード) 、たった今、クライン王国首都アルバンに派遣した 第5列(クインタ) 、レグルス2から報告が入りました』

「うん、それで?」

『クライン王国は非常事態宣言を出し、領地を持つ貴族に、軍を編成するよう命を下したそうです』

「えっ?」

『フランツ王国軍はじりじりと侵攻してきており、それに対抗するためと思われます』

仁は更に難しい顔になる。

「つまりそれは領民を兵士として徴兵すると言うことだよな。これから畑仕事が忙しくなるって言うのに!」

仮に勝っても農産物の生産が落ち込み、国力低下は免れないだろう。

「つくづく馬鹿な行為だよな、戦争って。やるならやりたい奴らだけでやればいいんだ」

吐き捨てる様に仁が言った。

「もういっそ、戦場を無茶苦茶にしてやろうかな」

そんなことさえ思う仁。

「カイナ村が過疎ったのだって、戦争のせいだしな。あの村だって……」

ラインハルト達と旅の途中で見た過疎の村の光景が思い出される。

「そうだ、きっと、リシアだって駆り出されているだろう」

『私、今のままでいいんでしょうか?』そう仁に尋ねた少女。『騎士は皆を守るんです!』と叫んでゴーレムに斬り掛かった少女。

「このままだと、きっとエゲレア王国だって無事じゃあ済まないだろうな……」

仁が作ったロッテがお気に入りのアーネスト王子。天然でドジな 王宮隠密侍女隊(ロイヤルシークレットメイド) のライラ。

ブルーランドのクズマ伯爵とその婚約者、ビーナ。

もしかするとエリアス王国だって危ないかもしれない。仁は 造船工(シップライト) のマルシアを思い浮かべた。

他にも旅で出会った人たちがいる。ヤダ村の鉱山で出会ったシーデとその一家。モフト村の子供たち。

「何とか出来るなら何とかしてやりたいなあ……」

仁はその方法を考え始めた。

「ごしゅじんさま、戦争に勝つんじゃなくて戦争を止めさせるんですよね?」

アンが確認するようにそう尋ねる。その言葉は仁にある光景を思い出させた。

それは昔、孤児院でのこと。年少の子供2人が、ゲームに夢中になってしまい、勝った負けたと騒ぎだし、最後には喧嘩になりそうだった時。

「仲良くできないならゲームはやらせません!」

院長先生がゲーム機を取り上げ、石に叩き付けて壊してしまったのである。

「あなたたちが楽しく遊べるようにと買ったゲームでしたけど、ゲームが元で仲違いするのなら、もう一切ゲームなんてやらせません」

毅然とそう言い放った院長先生に、喧嘩していた子供たちも泣いて謝ったのだった。

その後、壊れたゲーム機は仁がアルバイトしてもう一度同じものを買ってやったが、子供たちは2度と喧嘩することはなかったのである。

「まあ、仲良くなれるかはその国の資質として、止めさせるのなら出来るかもな」

「お父さま?」

なんとなく仁が危ないことをしそうだと感付いたのか、礼子が仁の上着の裾を引っ張っていた。

「あ、ああ、大丈夫さ、礼子。俺がこれからしようとしているのはお前がいなくちゃ話にならないことだし」

そして仁は計画を説明する。

それを聞いていた礼子は大きく肯き、

「お任せください」

と胸を張って答えた。そして、

「お父さまはここ蓬莱島で指示だけ出してくださいね」

とにっこり笑って言ったのである。

仁は以前作った身代わり人形を使うつもりだったのでそれには素直に肯く。

「ああ。俺は身代わり人形で指示を出す。……そうか、別に俺の姿している必要もないんだな」

自分とわからないように介入する、と以前考えたが、更に言えば仁に似ていない方がこれからやろうとしていることには都合がいい。

それで仁は大急ぎで身代わり人形の外見を弄ったのである。

黒髪は銀髪に。黒い眼は青い眼に。身長も180センチに伸ばした。

どこから見ても仁とは似ても似つかない。

「よし、これでよし。あとは……」

仁は、計画を実行するための装備を急ピッチで準備していく。

「あとは、そうそう、 電磁誘導(インダクション) を魔導具化して、と」

職人(スミス) ゴーレムに手伝わせ、短時間で準備は終了した。

そして準備が整ったと見た仁は老君に指示を出す。

「礼子がタイタン2号で出る。場合によっては俺はタイタン3号を動かす」

2号は操縦者搭乗型、3号は遠隔操縦型である。

『わかりました。セルロア王国のアスール湖に、超大型 転移門(ワープゲート) を備えた浮沈基地が設置済です』

「浮沈基地?」

聞き慣れない単語に仁が聞き返した。

『はい。浮沈基地とは、通常は湖底に沈んでその姿を隠していますが、有事には浮上して 転移門(ワープゲート) を使用できる基地となるものです』

それを聞いた仁は感心した。

アスール湖はセルロア王国にあるが、位置的にはフランツ王国との国境にあり、クライン王国にもほど近い。

『第8砦跡ではタイタンやそれを運ぶ航空機を転移させられませんから』

「うーん、自分で作っておいて何だが、老君、いい仕事するなあ」

『恐縮です。つきましては、タイタン輸送専用機に名前を付けてください』

そう言って老君は研究所前広場に2機の大型機を着陸させた。

「おお、これがタイタン専用輸送機か」

それは異形の 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) を備えた機体。 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) は直径が異様に大きく、対して全長は短い。

通常の 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) が筒状なら、この 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) は輪である。

新しい物、と言うわけではなくバリエーションの範囲なので老君の権限で製造可能であったのだ。

仁はそれを眺めて感想を述べる。

「なるほどな、速度は出せないが、力が強いわけか」

『はい。勝手ながら研究させていただきました』

それを聞いて更に喜ぶ仁。

「いいぞ、老君。これからもこの調子で俺を助けてくれよ。……で、命名だったな。うーん……」

仁はあらためてその機体を眺めた。

浮遊用に巨大な 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) を4基、正方形の頂点に来るように配置し、推進は小型の 魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン) 4基。

正方形の中心に下がるブランコのような部分にタイタンが乗ることになる。

「よし、『コンドル』だ」

『わかりました。コンドル1、コンドル2。準備は完了。いつでも発進可能』

「よし、十分時間の余裕があるな。タイタン2号を乗せたコンドル1は明日の朝出発する。ラプターとファルコン隊は 陸軍(アーミー) を乗せて出撃」

『老君了解。ラプター1から10、ファルコン1から10、発進準備します』

仁が先ほど作った魔導具を 職人(スミス) ゴーレム達が積み込んでいく。それが済むと、老君は 陸軍(アーミー) ゴーレムに指示を出した。

『ランド11から90は支給した武器を持ち集合せよ』

4月21日深夜。

ついに蓬莱島が動き出した。