軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09-07 とりあえずの別れ

結局ラインハルトは蓬莱島に1泊。

翌朝は朝食を食べるとすぐに作業に取りかかる2人。

「ローレライの動きを、骨格式ゴーレムに取り入れたいんだ」

「うーん、それならこうすれば……」

ラインハルトは仁に助言をし、

「鉄にクロムとニッケルを加えるとこういう合金が出来るんだよ」

「ふうむ、これがクロム、こっちがニッケルというのか。たまに見たことがあるが、みんな捨てられていたなあ」

仁はラインハルトに助言をして。

「よし、これをこうして」

「ここをああして」

作業を進めた結果、午前中に 黒騎士(シュバルツリッター) の修理は完了し、仁も水中専用ゴーレム『マーメイド』を完成させたのである。

「うーん、人魚型というのは陸上では全く役に立ちそうもないな」

「申し訳ございません、マイマスター」

マーメイド1が頭を下げる、が仁はそれを宥め、

「いや、そういう意味じゃない。これからお前達は 海軍(ネイビー) と協力して、海中の開発や探索などを頼む」

「わかりました、頑張ります」

上半身は成人女性型、下半身は魚。マーメイドゴーレムはこの後100番まで作られ、蓬莱島周囲の海域で活躍することとなる。

一方、 黒騎士(シュバルツリッター) はというと。

「調子はどうだ、『ノワール』?」

ラインハルト共に最終調整をしていた。

「はい、とてもいいです。ただ出力バランスが変わってしまったので若干慣れが必要かと」

材質に18ー12ステンレス鋼を多用し、更に魔法で 硬化(ハードニング) をかけてあるので、以前の鋼鉄に比べて強度は倍加している。

出力も、 海竜(シードラゴン) の革でこそないが蓬莱島謹製の 魔法繊維(マジカルファイバー) を使っているため、仁の 陸軍(アーミー) ゴーレムなどと同等の出力を持つ事となった。

更に隷属書き換え魔法対策として、仁式のシールドケースを使ったので、完全に生まれ変わったと言える。

最後に、 制御核(コントロールコア) も一新したので、言葉も流暢になり、ラインハルトはこの新生 黒騎士(シュバルツリッター) に、黒を意味する『ノワール』と名付けることにしたのである。

* * *

昼食は崑崙島でエルザたちと一緒に摂る事にした。

事前に仁が連絡しておいたのでちゃんと4人分用意されていたし、ラインハルトには仁の口から、ミーネが魔法『 暗示(セデュース) 』の影響であんな極端な性格になっていた事を説明していたので、最初こそぎこちなかったが、すぐに打ち解けて元のように話をすることが出来るようになった。

「そうか、エルザも落ち着けたんだな」

「ん。今は毎日、母さまにいろいろと教わってる。料理とか、裁縫とか」

「このスープはエルザが作ったんだよな?」

仁は味付けでエルザかミーネかがだいたいわかるようになってきていた。

「ん。ジン兄、わかるの?」

「そりゃあな、毎日ごちそうになってりゃな」

そう言うとエルザは嬉しそうに微笑んだ。そんなエルザを見てラインハルトは、仁に任せて良かった、と思うのだった。

食事後、仁はラインハルトに、

「ラインハルト、あれを渡してやってくれよ」

と言う。それで察したラインハルトは、礼子が運んでくれた手荷物の中からそれを取り出す。

「ほら、エルザ。忘れ物だ」

「あ、ノン……」

仁が作った日本人形のノン。置いてきてしまったそれをラインハルトが持ってきてくれた。エルザはそれを受け取り、

「ありがとう、ライ兄。すごくうれしい」

と言ってうっすらと涙を浮かべながら受け取った。

「ありがとうございます、ラインハルト様」

エルザの母、ミーネも頭を下げた。

* * *

ようやく仁とラインハルトは今後の事についてゆっくり話し合う時間を取ることが出来た。

「とにかく、ラインハルトは気をつけた方がいいな。護衛もやられてしまったことだし」

「うん、今回のことでつくづく思った。 黒騎士(シュバルツリッター) も一度は敗れてしまったし、過信は禁物だな」

とりあえず専用 隠密機動部隊(SP) も付いてはいる。

「さっき新しい報告があったんだけど、セルロア王国、フランツ王国はどちらも相手国を圧倒しつつあるそうだ」

仁が老君から得たばかりの情報である。

「うーん、ジンがどうやってそういう情報を得ているかは詳しくは聞かないことにしておくよ。それとまあ、これでも僕はショウロ皇国の外交官だからね、こそこそ逃げ回っているわけにもいかないのさ。国の威信にもかかわるし」

「……」

「とにかく、こうなってしまったからには、駐屯兵とかに頼んで護衛して貰いつつ、国に帰るしかないな」

数名単位ではなく、小隊もしくは中隊単位での護衛を依頼すると言うラインハルトに、仁はまだ少し心配しつつも肯いたのである。

「それよりもジンのことだ。今は目立つ行為は避けた方がいいな、双方の国から狙われたり、狙われないまでも疑われたりする可能性が大だ」

「あー、やっぱりそういうこともあるのか……」

「ジンなら、我がショウロ皇国に来るのも多分簡単なんだろう? 一緒に旅する事は出来なくなりそうだが、是非一度来てくれよ、待ってるから」

ラインハルトは残念そうに言った。仁も、小群国でない国家であるショウロ皇国には興味があったし、いつかラインハルトが言っていた魔導大戦前から伝わるという 古代遺物(アーティファクト) も気になってはいた。

「ああ、近いうちに行くよ。 魔素通信機(マナカム) はまだ持っているんだろう?」

「ああ。幸か不幸か宿に置いてあったから、 統一党(ユニファイラー) には奪われなかったしね。 保護指輪(プロテクトリング) は奪われてしまったが」

ラインハルトの 保護指輪(プロテクトリング) は捕虜にした 統一党(ユニファイラー) 達は持っていなかった。支部長と共に川の底なのである。

それを聞いた仁は、思い出したとばかりにポケットから指輪を取り出した。

「そうだ、忘れるところだった。これは新しい 保護指輪(プロテクトリング) だ。前と同じ物だよ」

そう言ってラインハルトに渡す。ラインハルトはそれを受け取り、

「ジン、ありがたくいただくよ。それじゃあ、そろそろ僕は行かないと」

時差があるのでまだ慌てるほどでもないのだが、それを良く理解していないラインハルトは帰ると言いだした。

「黙って外泊したからクロードも心配しているだろうしな」

「そうだな。それじゃあジロンまで送ろう」

仁はそう言ってラインハルトと共に立ち上がり、 転移門(ワープゲート) へと歩いて行った。 黒騎士(シュバルツリッター) と礼子も後に続く。

転移は一瞬。ジロン近郊で待機していたファルコン1の中に出る。

ファルコン1のステルス結界から外へ出れば、遠くにジロンの街が見えた。

「そういえば、こっちはまだお昼過ぎなんだな。この理由も今度会ったら教えてくれよ」

ラインハルトはそう言って仁に別れを告げる。

「ああ、そうだな。それじゃあ、またいつか」

「うん、ショウロ皇国で待っている」

そう言って歩き出したラインハルトであるが、ふと立ち止まると振り向き、

「ジン、一つだけ教えておこう。前に話した 古代遺物(アーティファクト) だがね、巨大なゴーレムなんだよ」

「え?」

気になっていた一つを教えられた仁はぽかんとしている。

「はは、ジンならきっと同じ物、いやもっと凄いものを作りそうだからな。今更秘密にする意味もあまりないさ」

そう言ってラインハルトは今度こそジロンの街へと向かったのである。仁は隣にいる礼子に向かって命じる。

「礼子」

「はい、お父さま」

「ラインハルトが間違いなく街について、執事のクロード達と合流するまで見守っていてくれ」

「はい。……でもお父さまもお気を付けて」

あくまでも仁の身を案じながらも礼子はその命に従った。 消身(ステルス) で姿を消し、密かにラインハルトに付いていく。セージとコスモスも同様に付いて行っているので安心だろう。

仁はファルコンの中で待つ事になる。

仁は、礼子が帰ってくるまでの間ラインハルトが言っていた巨大ゴーレムのことを考えていた。

ゴーレムに限らないが、動くものというのは巨大になればなるほど動きが鈍くなる。それは強度と慣性のため。

振り回した腕を止めるには慣性が邪魔をする。慣性に逆らって無理をすれば腕が折れる、ということである。

物体の強度の一つである曲げ強さは断面積に比例するのに対して、重さつまり質量は体積に比例する。

つまり強度は大きさの2乗、慣性は3乗に比例するというわけで、大きくなればなるほど質量に対して強度が不足してくる。

そういう意味で、人間の大きさというものは動作的にバランスが取れていると言えよう。

「だけどドラゴンとか 百手巨人(ヘカトンケイル) とかはなあ」

大きさの割に動きが素早いのである。

「密度が小さくて軽い可能性はあるか。強度が低くなるのは魔力で強化していると考えれば辻褄は合う」

考えれば考えるほど、それしかないと思うようになった。

「つまり大きさの2乗でしか重さが増えないということかな」

非常に単純化した考えではあるが、当たらずといえども遠からずであろう。

「身長15mとしたら、人間ならえーと……」

仁の身長が160センチ。体重52キロである。

大きさが9.375倍。体積はその3乗だから824倍として約42・85トンとなる。

これが2乗だと重さは4.57トン。

「5トンくらいで収めればいいのかもなあ……」

仁もやっぱり巨大ロボットに憧れた口であった。