軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09-08 タイタン

「さて、まずはどうすべきか」

ラインハルトと別れ、蓬莱島に戻った仁は今後の方針をだいたい決めてはいた。

それは、『自分とわからないように介入する』というものである。

一部のヒーローもので、ヒーローの正体が最終回くらいまで謎のままな、あれである。

ちょうどヘルメットと強化服も作ったことだし、と仁は考えていた。

そこへ巨大ロボットというアイデアである。仁が飛び付かない筈はない。

「直接戦争に介入するわけにはいかないけど」

一般庶民とかが危険にさらされるような時には介入してもいいかも知れない、と考えている。

それ以上に、 統一党(ユニファイラー) に対しての旗印として最適だと思っているのである。

何しろ目立つ。

レーザーやレールガンは何をされたのか理解できない分、脅威を憶える度合いも少ない気がするのだ。

「巨大ロボ……ゴーレムなら威圧感十分だし、な」

ということで、まずは素材を開発することになる。

アダマンタイトで作ったら重さが大変な事になるから、ベースは軽銀である。

「うーん、チタンは確かアルミニウムやバナジウム、モリブデンとか混ぜて合金にしたと習った覚えが……」

必死に過去の知識を思い出そうとする仁。

軽銀はチタンの中性子が 魔力子(マギトロン) に置き換わったものと推測している。だからチタンに準じた性質も持っているはず、と考えたのだ。

「とにかくやってみるしかないな」

と言うことで仁は、礼子を助手にして、軽銀の合金を模索していった。工学魔法により、テストピースを作るのは一瞬である。これは大きい。

午前中にはほぼ最適な金属の組み合わせを発見していた。

「ジン兄、いらっしゃい」

今日も昼食はエルザたちとである。この日は曇っていたので室内でランチであった。

やや不格好に切られているペルシカの実を見て、

「お、今日はエルザがペルシカ剥いてくれたんだな」

と仁は言った。エルザは気が付いてくれた仁に向けて笑みを返す。

メニューは焼きたてのパン、シトランのマーマレード、野菜のサラダ、野菜のスープ、そして お茶(テエエ) 。

どれもエルザが作ったらしい味付けである。

「うん、日一日と上達しているな、エルザは」

食べながら仁が褒める。

「ジン兄にそう言って貰えると嬉しい」

褒められたエルザは嬉しそうに微笑んだ。

昼食後、あらためて新合金のテストである。

「えーと、軽銀90、アルミニウム6、バナジウム4、か」

結局64合金と呼ばれる配合に落ちついた。地球でかつて軽銀と呼ばれていたアルミニウムは、この世界にはチタンよりも少ないようだ。

バナジウムは元々原子番号で言うと23、チタンの次でクロムの前であるので、仁も少し詳しく 分析(アナライズ) することでなんとか特定できたのである。

この世界では土中に僅かずつではあるが含まれていたし、謎の鉱石として倉庫の隅に積まれてもいた。

そういう不明な鉱石や金属を捨てないという指示を出していた先代は先見の明があったと言えよう。

閑話休題。

仁はチタンいや軽銀の64合金を作り、更にそこにミスリル銀を拡散させてみた。

これにより原子間の結合力に魔力による結合力が加わり、最終的に通常の軽銀の7倍まで強度を上げることが出来たのである。これは驚異的であった。

「うーん、これからの軽銀はこの合金を使うのがいいなあ」

仁もそんな感想を抱いた。

さて、素材が決まればいよいよ製作である。 職人(スミス) ゴーレムを91から100まで呼び戻し、助手とする。

本来は老君の指揮の下、空母の建造をしているのだが、仁は気にしていないし、老君もそんな仁の気まぐれとも言うべき性格は理解しすぎるほど理解している。

何せ老君の知識の大部分は仁のものであるからだ。

「一応、遠隔操作、自律行動、それに乗って操縦するタイプの3台を作ってみるか」

仁の知る巨大ロボットと言えば、操縦機で操縦するもの、ある程度の意志を持つもの、そして頭部とかに乗って操縦するもの、であった。

基本構造は全部同じ。骨格、筋肉、外装は共通とする。

今まで作ったゴーレムと基本同じで、単に大きいだけなので礼子と 職人(スミス) ゴーレムのサポートがあれば1時間で原型は完成した。

後は操縦系統の組み込みである。自律型はゴーレムとほぼ同じなので簡単に出来た。命令は 魔素通信機(マナカム) を通じて行う形式とする。

「よし、えーと、『タイタン』1号、動け」

軽銀である『チタン』と、ギリシャ神話の巨神族に因んだ命名らしい。

研究所前の広場にタイタン1号が立ち上がる。なかなかの威圧感だ。

「よし、歩いてみろ」

テストなのでまだ発声機構が無いため、無言で動き出すタイタン1号。しかしその足取りは確実だ。地響きが迫力である。

「よし、走ってみろ」

その命令に従ってゆっくりと走り出すタイタン1号。そして徐々に速度を上げていく。その動きは悪くない。

「礼子、どう見る?」

礼子の意見も聞いてみる仁。

「そうですね、悪くないと思います。前に戦ったギガースとは比べものになりません」

「うん、そうだよな」

そして広場の端まで行ったタイタン1号は自律型だけあってちゃんと引き返してきた。

「よし、今度はシャドーボクシングだ」

仁の知識を部分転写してあるのでちゃんと通じ、動き始めるタイタン1号。その動きは大きさに似合わないほどの機敏さである。仁は自分の仮説が正しかったことを喜んだ。

「よし、停止」

各部の異常を確認するためタイタン1号を停止させ、チェックする仁。その顔は喜色に溢れている。

「うんうん、短時間だったけど、関節、骨格、筋肉、異常は無いな! これなら成功と言っていいだろう!」

「おめでとうございます、お父さま。流石です」

礼子も嬉しそうである。

「うん。そうしたらやっぱり自分で操縦するタイプを先に仕上げてしまおう!」

仁は勢い込んで『タイタン2号』に取り組んだ。

頭部に乗るのは危険なので止め、胴体内に操縦席を設けることにする。

バランスなどの細かい調整はタイタン1号の動作データをコピーした 制御核(コントロールコア) によって行わせ、操縦者は動作指示を出す形式。

いきなり巨大ロボットを操縦出来るとは仁も考えていないからだ。

なので比較的簡単に2号は完成した。空を飛ぶほどの危険性は無いので、仁はいきなり乗り込んだ。

「お父さま、大丈夫ですか?」

「ああ、車運転するようなもんだからな」

仁は運転免許は持っていないが、公道ではない工場の敷地内でフォークリフトなどを運転したことはある。

「よし、いくぞ」

胸部にあるコクピットに座る仁。試作なので胸部装甲は付けておらず、目視で前が見えるようになっていた。

「ゴー!」

アクセルを踏むと、 魔素変換器(エーテルコンバーター) と 魔力炉(マナドライバー) の出力が上がり、それに応じてタイタン2号が動き出した。

最初はズシン、ズシンといった感じで、次第にそれは早くなっていき、広場の端でUターンして戻ってきて……突然停止した。

「……お父さま?」

一緒に進んでいた礼子が見上げると、仁の青い顔がそこにあった。礼子にはそれがどういう状態か覚えがある。

急いでコクピットへ飛び上がり、

「『 癒せ(フェルハイレ) 』!」

と、ショウロ皇国式の詠唱で仁を癒した。

「あ、ああ、助かったよ、礼子」

仁はげっそりした顔である。

「あっという間に酔った……」

大きさが10倍近くなったので、歩く時の上下動も10倍近くなる。それはそのまま操縦者の負担となり、あっさり仁は酔ってしまったのだった。

「残念だが搭乗者操縦型は没だ」

礼子に手伝って貰いながらタイタン2号から下りる仁。

「多分、私なら大丈夫ですよ?」

そうフォローする礼子。それを聞いた仁は、

「そう、だな。こいつは礼子専用で組み上げるか」

と言う。そっちは後で仕上げることにして、3台目、最後の遠隔操作仕様のタイタン3号にとりかかる。

これは先日作った仁の身代わり人形と同じシステムを採用。

ゴーレムの目に仕込んだ 魔導監視眼(マジックアイ) からの映像を映し出す専用の操縦席に座り、そこから操縦することにした。そうしないと、目視できない遠くへ行ってしまった時にどうしようもないこと、そしてやはり自分が乗って操縦する感覚を味わいたかったからである。

夜までいろいろと調整を繰り返し、3台とも一応の完成をみたのは仁の熱意がなせる業だったに違いない。