軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08-34 水上戦

「魔法隊、撃て! 撃ちまくれ!」

第6支部支部長、インタクトの命令を受け、魔法隊は次々に 炎玉(フレイムボール) を撃ち出してくる。

「……しかし、作戦も何もあったもんじゃないな。支部長って言うのは馬鹿ばっかりなのか?」

展開したバリアで魔法を防ぎながら、仁はそう考えた。

「まあもう少し様子を見よう。そのうち魔力が尽きて撃てなくなるだろう」

バリアの維持に必要な魔力は少ないが、 炎玉(フレイムボール) にはかなりの魔力を必要とする。

炎玉(フレイムボール) では埒があかないと悟ったのか、今度は 炎の槍(フレイムランス) が3発、飛んできた。

が、それもあっさりとバリアで止められてしまう。

そしてそれきり魔法は飛んでこなくなった。

「支部長、皆魔力を使いすぎています……」

魔法隊隊長が青い顔で報告するが、インタクトは激昂したままだ。

「ええい、どいつもこいつも役に立たない奴だ」

その時、彼等の乗った船に衝撃が走った。

「よし礼子、今度は鋼球で5発、奴らの船に撃ち込んでやれ」

今回仁はあまり特殊な攻撃手段を使わないつもりである。

レールガンは、その威力はともかく、原理的にはカタパルトもしくはスリングショットと同じで、この世界にも似たものがあった。

とはいえマッハ20を超える速度で撃ち出すことは到底無理であるが。

「はい、お父さま」

バリアを一時的に解除し、礼子はレールガンを構えた。

「ああ、そうだ。全力出す必要もないからな。そうだな、5パーセントでいいだろう」

「わかりました」

相手は木造船である。5パーセントでも音速程度の初速は出ている鋼球を止める術があろう筈はない。

ドカンという発射音はソニックブームである。レールガン側に吸収バリアがなければ礼子はともかく仁が被害を受けてしまうほどの威力。

それが5発響いた。

流石に反動を受けてハイドロ5も10メートルほど後退したが、すぐに立て直した。

一方、 統一党(ユニファイラー) 船の方はというと。

鈍い衝撃音と共に船体が揺れた。見れば小艇に乗っている少女が何やら長い筒を構え、こちらに向けていた。

「まさか、魔導具なのかっ!」

副支部長マルチェロは驚愕に目を開く。が、支部長インタクトはというとパニックを起こしていた。

「ななな、何だあ!? 今のは? 誰か何か言わんかあ!!」

「謎の攻撃により、動力ゴーレム4体のうち2体が破損!」

「船体に多数の穴が開きました!」

聞きたいのはそんな事じゃない、と怒鳴るインタクト。その時船がぐらりと傾いだ。

1発が吃水線下に命中し、そこから浸水を始めていたのである。

「う、うわわわ!」

インタクトは狼狽して万能ゴーレムを呼び寄せる。

「ハイ シブチョウ」

「わ、儂をおさえていろ! いいか、儂が命じるまで放すんじゃないぞ!」

「ハイ」

揺れる船の上で立っていられないため、唯一残った切り札、万能ゴーレムを使って身体を支えさせるインタクト。

「ふう、これで一安心だわい。被害はどうなっておる? あの攻撃はいったい何だ?」

この期に及んでもまだ威張り散らすだけのインタクトを、そろそろマルチェロは見切りを付けるべきかと考え始めた。

「貴様等! わけのわからない攻撃を黙って受けている奴があるか! 弓でも槍でも撃ち込んでやれ! 魔法隊も少しは回復したなら魔法を撃ち込むのだ!」

などとインタクトは命じている。

それを受けて弓兵2人が船縁に立ってハイドロ5に狙いを付けた。

弓兵の腕はそれなりに確かで、揺れて傾く船上からあやまたずハイドロ5に向けて2本の矢が放たれる。

だがそれはハイドロ5に届く前に、バリアに阻まれて水の上に落ちた。

そして、返礼とばかりに、3発の鋼球が放たれ、うち2発が吃水下に命中。1発は船室を貫いていった。

「船体破損! 修理不可能です! 水が入ってきます!」

下の船室から報告が上がってくる。喚き散らすインタクトを尻目にマルチェロが指示を出す。

「もうこの船は駄目だ。全員退船しろ。板きれでもいい、何か掴まれるような物を持って水に飛び込め!」

「ばばば馬鹿もん、マルチェロ、貴様この船を見捨てるだと!?」

インタクトは興奮して騒ぎながらマルチェロに詰め寄ろうとした。

その時、更に2発の鋼球が命中する。1発は万能ゴーレムの右脚を破壊する。バランスを崩した万能ゴーレムは、インタクトを道連れに川へと落下したのである。

「うわああああああ……」

悲鳴の後にぼちゃん、という水音が聞こえた。

万能ゴーレムは命令を守り、水中でもインタクトを放さなかった。そしてインタクト、いや人間は水中で喋れるようには出来ていない。

ゆえに万能ゴーレムは川の中、インタクトをがっしりと支えたまま沈んでいった。

「総員退避! 退避だあ!」

マルチェロは大声で叫んで回り、もう誰も飛び込むものがいなくなったのを知り、自分も手近にあった板きれを掴んで水に飛び込んだ。

「お父さま、乗員が離船していきます」

「ああ。船も沈みかけているしな。よし、仕上げだ」

仁は礼子に、鉛玉を2発撃ち出すように命じた。

「はい」

軟らかい鉛は、着弾と共に潰れ、広がり、その運動エネルギーを余すことなく船体に伝えた。

その結果はといえば。

「な、なな、ななな」

水に浮かぶ 統一党(ユニファイラー) 党員の前で、彼等の乗っていた船は木っ端微塵に砕け散ったのである。

「よし、後は水に浮かんでいる奴らか。礼子、 雷の洗礼(サンダーレイン) を最小電流で喰らわせてやれ」

「はい、お父さま」

水中に身体を浸けた状態で電撃を喰らわすのに一番手っ取り早い方法の1つは頭上から雷を落とす方法である。

ということで礼子は 雷の洗礼(サンダーレイン) を彼女に制御出来る最小値で放った。

一瞬、川面が紫色に染まる。およそ1000万ボルトが浮いている 統一党(ユニファイラー) 党員に降り注いだのだ。

ぐう、とかぎゃあ、という短い悲鳴を上げて、川面にいた 統一党(ユニファイラー) 党員は全員気絶したのである。水中なのでよほど運が悪くない限り心臓は止まらないだろう。

だがその運が悪い者は2名いたし、気絶してそのまま防具の重さで水底に沈んでいった者が2人。インタクトを含めると計5人。期せずしてラインハルトの護衛と同数が命を落とした。

「よし、回収しよう」

こうして無力化した 統一党(ユニファイラー) 党員を、備え付けてあった魚捕り用の網で掬っていく。全部で28人になった。

「とりあえず陸に揚げて縛り上げよう」

ランド達を川原に待機させ、気絶した 統一党(ユニファイラー) 党員を引き渡す。適当なロープがなかったので、仁が工学魔法でゴーレムの破片からワイヤーロープを作った。

「さーて、こいつらをどうするかは、ラインハルトと相談だな」

曲がりなりにもショウロ皇国の外交官を誘拐したのであるから、勝手に処分するのも憚られた。

と言うか、一番恨みに思っているのはラインハルトだろうから、ラインハルトにまず意見を聞こうと思ったのである。

そのラインハルトは 陸軍(アーミー) ゴーレムのランド58、59、60に守られてやって来た。

「ジン!」

「ラインハルト! 無事だったか!」

「ああ、おかげでな」

そう言って微笑むラインハルトだが、その笑顔に力がないことに仁は気づいた。見れば、首に首輪が嵌められている。

「まさか! 済まん、ラインハルト。先に気付くべきだった」

そう言ってその首輪に指をかける。

「いや、ジン、これは簡単には取れ」

そして仁はその首輪を毟り取る。ラインハルトには引っ張られたという感触も残さずに。

「な……い……」

「ん?」

毟り取った首輪を忌々しそうに眺める仁を見て、ラインハルトは苦笑した。

「やれやれ、どうすればそれをそんな簡単に毟り取れるんだい?」

「どうすれば、っていうか……指で触れた瞬間、何とも言えないいやーな感じがするから、魔力で対抗すると粘土みたいに軟らかくなってちぎり取れる、って感じかな?」

この首輪には、被装着者の魔力を利用してサイズを微調整する機能がある。その機能部分に過剰な魔力……およそ考えられる量の10倍以上……を流し込まれ、機能不全を起こしたというのが真相であるが、仁がそれを知るのはこの首輪を詳細に調べてからになる。

「うーん、まあそれは後で詳しく調べるとして、ステアリーナも一緒に捕まっていたんだ。彼女の首輪も外してやってくれ」

とラインハルトが言えば仁は驚いて、

「聞いてるよ。ラインハルトが襲われた場所ってステアリーナさんの家だったんだってな」

「ああ、正式には別宅らしいがな」

そのステアリーナはと言えば、コスモスに抱かれて気絶したままである。

「ああ、きっとこの首輪のせいだ。こいつは体調を崩すような 魔導式(マギフォーミュラ) が仕込まれているんだ」

そう言いながら仁はステアリーナの首輪も外した。

「何!? それでか、なんとなく気怠かったのは。助かったよ、ジン……それにしても、何だい? 変わった兜だな。それに服といっていいのかな?」

仁の被っているのは兜というよりSFチックなヘルメットである。今は暗視バイザーは跳ね上げてあるので顔がわかるが、下げていたら誰だかわからないだろう。

「俺が作った新装備さ。結構役に立つんだぜ」

そして仁は真面目な顔になり、気絶して縛られたままの 統一党(ユニファイラー) 党員を指差し、

「ラインハルト、こいつらの処分はどうする?」

と聞いたのである。