軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08-33 ゴーレム戦

「敵ゴーレム、15体。来ます!」

「アッシュ、エルム、ランド50、ランド51、迎撃だ」

「了解」

仁の命令を受け、4体のゴーレムが飛び出した。

真っ先に激突したのは軽量のアッシュとエルム。この2体は軽量による速さを生かすタイプの戦闘をする。

真正面から組み合うと見せかけて、瞬時に右横へ飛び、敵ゴーレムの頭部に左裏拳を叩き込むアッシュ。

エルムは敵ゴーレムが繰り出した拳を避けるように身をかがめ、伸び上がる勢いで敵ゴーレムの顎に拳を叩き込んだ。

2体とも、対人なら有効だがゴーレム相手では大したダメージにはなっていない。攻撃をくらったゴーレムの頭部はひしゃげているが、人間とは違い致命傷ではないのである。

現在の礼子を基準にすると 陸軍(アーミー) ゴーレムの出力は20パーセントくらい、 隠密機動部隊(SP) は10パーセントくらい。

それでも青銅製のゴーレムなら1撃で屠れるが、戦闘用ゴーレム相手なら、 制御核(コントロールコア) のある胴体を狙うのが定石である。

「うーん、やっぱり対人戦に特化しているんだなあ」

仁がそんな感想を抱いたその時、ランド50と51が敵ゴーレムと激突した。

流石の 陸軍(アーミー) ゴーレム、最初の一撃でぶつかった2体はスクラップになって吹き飛んだ。

次いでランド50と51はそれぞれ同じように1体ずつを小脇に抱え、それを互いにぶつけ合う。これで計6体がスクラップだ。

一方、アッシュとエルムは最初の2体を倒していた。残るは7体。

「うーん、ランド達はやっぱり力押しだな。もっと格闘技を身に付けたらいいのかもしれない」

仁はゴーレム 園遊会(パーティー) の時、ロッテが大活躍したことを思い出していた。

「今度、格闘技の知識も転写しよう」

そしてそう心に決めたのである。

* * *

「おおお、なんという奴らだ!」

観察していたインタクトが驚いた声を上げた。

「うむう、強い。やはり、あいつがジン・ニドーではないでしょうか」

マルチェロが冷静な分析を行う。

「そんなことはどうでもいい! 勝たねばならん! 儂は今から最強ゴーレムを起動してくる!」

そう言い残してインタクトは引っ込んだ。残ったマルチェロは溜め息を吐く。

「やれやれ、戦力の逐次投入になってしまったようだ。逃げる準備をしておかないとまずいかな」

* * *

少しずつアッシュとエルムも対ゴーレム戦闘に慣れてきたようである。初めは1対1で戦っていたのだが、今は速さを生かして2体掛かりで1体を倒している。これは試合ではないからそれでいいのである。

片や、ランド50と51はそのパワーを生かし、正面から敵をスクラップにしていった。さすがに最初の時のように2体を脇に抱えるという事は出来なかったが、既に2体ずつを倒し、今また1体を倒したところ。アッシュとエルムも2体を倒し終わり、敵ゴーレム15体は全てスクラップとなった。

「うーん、なんというか、哀れだな。ランド50、ランド51、そいつらを回収しておけ」

馬鹿な主人に作られ、使われたばかりにこんな有様。仁は、研究のためにもその15体を回収するよう指示を出した、その時。

「お父さま、危ない!」

仁を襲う黒い影。それに気付いた礼子が咄嗟に庇うが、体勢が崩れていたため、体重差で跳ね飛ばされてしまった。

だがその甲斐はあり、黒い影も仁に触れる事も出来ずたたらを踏んで止まったのである。

仁もバリアを張ってはいたものの少々驚いた。そして目の前の敵を観察する。

「……黒灰色のゴーレム、か。今までの奴とは出来が違うようだな」

わずかな観察でも仁にはその出来の良さが見て取れた。黒灰色はアダマンタイトでコーティングされている証でもある。

そして再び戦闘が始まる。

跳ね飛ばされ、若干仁から離れた礼子に代わり、アッシュとエルムがその黒灰色のゴーレムに跳びかかった。

だが体格差が大きい。黒灰色のゴーレムは身長2.3メートル位、対するアッシュとエルムは身長175センチ。重量ではおそらく3倍近く違うだろう。

アッシュが右腕、エルムが左腕。相手ゴーレムは腕1本で受け止めている。

「へえ、結構力があるじゃないか」

仁は興味津々でそれを眺める。

「ふむ、力の流れは他のゴーレムと大差ないな。だけど、異様な集中があるな……もしかして?」

敵ゴーレムの力の出し方に疑問を持った仁は、

「ランド50、お前が相手をしてみろ」

と指示を出した。

その指示に従い、ランド50が黒灰色のゴーレムに向かって行った。それに気付き、アッシュとエルムを振り払う敵ゴーレム。

「アッシュ、エルム、ご苦労だった。戻れ」

そう指示して 隠密機動部隊(SP) を自分の両脇に戻す仁。

その目の前では黒灰色のゴーレムとランド50が組み合っていた。手と手を握りつぶさんばかりに掴み合い、押し合っている。

「ふうん、ランドと同等の力を出しているのか」

あらためて観察する仁。そんな仁に礼子が忠告をした。

「お父さま、敵の観察もいいですが、ほどほどになさいませんと幹部に逃げられるかもしれません」

そう言われた仁は反省する。戦闘に向かない性格であるのは自覚していた。

「そうだな、わかった。だけど研究材料としてあまり壊したくないな。よし、ランド51、アッシュ、エルム、礼子。そいつを押さえつけろ」

「了解」

「わかりました」

礼子が足払いを掛ける。若干力が入ったのは先ほど跳ね飛ばされた意趣返しであろうか。

膝関節が逆に曲がった敵ゴーレムは堪らず地面に倒れた。その四肢の付け根を礼子は『軽く』殴りつけた。

瞬きをする間に4度行われたその攻撃で、敵ゴーレムの四肢の連結は半壊。まともに力を出せる状態ではない。

そこを更に5体掛かりで押さえつけられ、さしもの敵ゴーレムも動けなくなる。仁は近づいていき、その胸部に触れると、

「『 消去(イレーズ) 』」

と、 制御核(コントロールコア) の動作式を消去した。これで黒灰色のゴーレムは動かなくなる。

「上手くいった。まさか自分たちがこの魔法を使われるとは思わなかったろう」

出てきたゴーレム達を全て無力化し、仁は砦を見上げた。礼子も仁のすぐ前で見上げる。

「先ほどまでいた人間がいなくなりましたね」

観察用の小さな窓から覗いていた顔が消えているし、精度がやや低いとは言え生物の気配も探知出来る礼子である。その判断は信頼できた。

「そうか。逃げる気かもな。だとするとここの反対側、おそらく川からだろう。よし、ここはもういい。ランド50、51、それにアッシュとエルムは残って見張れ。もし 統一党(ユニファイラー) の奴らが出て来たら逃がすんじゃないぞ。礼子は俺と来い」

砦正面は仁達がいる。逃げるなら川だろう。そう判断した仁は礼子と共に川へ向かう。そこにはハイドロ5が待っていた。

「よし、敵が出て来るのを待つ」

船で川に出たらもう逃げ場はない。一網打尽にするつもりであった。砦の川に面した部分には大きな扉がある。出てくるならそこからだ。

待つこと約3分。そして予想通り扉が開いた。

「よし、当たりだ。上空のファルコンは支援しろ。但し指示するまで攻撃は控えておけ」

今回、仁は戦力の誇示は出来るだけ控えていたつもりだ。特に航空戦力を教える気はない。

敵の船は大型船である。黒塗りで、50人くらいは乗れるだろう。ゴーレムが漕ぐと思われるオールが4本ずつ左右から突き出していた。

「うーん、ちょっとこの暗視モード、まだ暗いなあ」

そうぼやきながらも暗視モードの仁は明かり無しでなんとか観察できている。静かにハイドロ5は後を追い、その船が川の中程に出るまで待った。

「よし、『 光の玉(ライトボール) 』」

仁は 光の玉(ライトボール) を5個作り出して浮かべた。あたりが明るく照らされる。

* * *

「む、む、待ち伏せていたというのか!?」

光の玉(ライトボール) により、仁の乗る船も明らかになった。

「何だ、あんな小さな船で追ってきたというのか」

インタクトはハイドロ5がせいぜい4人くらいしか乗れない小艇であるのを見て侮るような発言をしたが、マルチェロは違った。

「支部長、そうではありません。あの船には漕ぎ手が乗っていませんぞ」

「何?」

今のところこの世界の船は推進機関がゴーレムである(人が漕ぐ船はのぞく)。その漕ぎ手であるゴーレムの姿が見あたらないということにマルチェロは疑問を憶えたのである。

「水中にゴーレムがいるのか?」

以前、エリアス王国で行われたゴーレム艇競技、それには人魚型のゴーレムが出たという話を小耳に挟んでいたマルチェロはそんな想像もしてみた。

「ええい、攻撃だ! 魔法隊、前へ! 撃て!」

そんなマルチェロを尻目に、インタクトは魔法隊に命じ、その小艇目掛け 炎玉(フレイムボール) を放たせている。

だがその小艇に届く寸前で見えない壁があるかのように、 炎玉(フレイムボール) は爆散し、1つとして命中しない。

「ええい、なにをやっておる、どんどん放て!」

効果が無いことに苛立ったインタクトは興奮していた。

マルチェロはそれを見て、やはり 催眠(ヒュプノ) で操られた人間は指導者に向かないな、と考えるのであった。