作品タイトル不明
08-31 貫通
放棄された監視砦。そこが 統一党(ユニファイラー) の基地になっている事は明らかだった。
「よし、ランド41から60は距離を保ちつつ砦を包囲、封鎖しろ」
陸軍(アーミー) ゴーレムはステルス機能を備えていないので、敵に気取られないよう200メートルほどの距離を置いて待機。
「 隠密機動部隊(SP) は全員、敵基地に向かえ」
前回エルザを救出した実績のある 隠密機動部隊(SP) が再び潜入してラインハルトを救出する。
「ファルコン1から3は上空で待機、バックアップに務めろ」
マリン5は快速艇ハイドロ5の操縦、礼子は仁と共にそのハイドロ5上で待機である。
隠密機動部隊(SP) 12体は音も立てずに敵基地へと潜入した。仁にも今は見えていないのだが。
既に第8支部潜入をこなしている彼等の行動はスムーズであった。連携もより高度になっている。
基本は2体1組での行動だ。
1体が気を引いている間にもう1体が麻痺させる。
1人に対して前後から襲いかかる。
相手が複数ならこちらも2組以上で相対する。
そうやって警報すら出させずに無力化していくのである。
見張り。周辺警備員。門衛。基地内巡回員。
次々に無力化されていく。
砦内の構造は似通っていた。古さからいって第8支部の砦がこちらを模倣したと思われる。これで更に有利に動けた。
「1階通用門制圧」
「2階探査開始」
「地下1階確認終了」
仁の下に報告が次々に入ってくる。そしてついに待望の報告が。
「地下2階確認。ラインハルト様発見」
* * *
ラインハルト様ですね、と尋ねたのは真っ黒いゴーレムであった。大きさは普通の成人女性くらいである。
それが、鍵をかけられたはずの扉をこじ開け、入って来たのだ。
「あ、ああ。ラインハルトは僕だ」
するとその黒い女性型ゴーレムは一礼し、
「お初にお目に掛かります。セージと申します。どうぞよろしくお願いします」
と言ったのである。
わけがわからないでいるラインハルト。するともう1体、同型の女性型ゴーレムが姿を見せ、
「セージ、急ぎましょう」
と言ったのである。
「き、君らは?」
ラインハルトはそれだけを言うのがやっとだった。
「私たちは 隠密機動部隊(SP) です。ラインハルト様の警護を仰せつかりました。私はコスモスと申します」
後から入って来た方のゴーレムがそう言った。
「仰せつかったって? それはもしや……」
「はい、仁お父さまからです」
その答えにラインハルトは安堵の溜息を吐く。
「そうか、ジンは僕が思ったよりも素早かったんだな。わかった、ここを出るんだな?」
「はい。今しばらくは大丈夫なはずです」
「わかった。ステアリーナ、行こう」
「え、ええ」
するとコスモスが尋ねる。
「そちらの方は?」
「ああ、一緒に攫われた 魔法工作士(マギクラフトマン) で、ステアリーナだ。彼女も一緒に連れていきたい」
「わかりました。…………まいりましょう」
わずかの間。それは仁へ連絡したからなのだが、ためらいのように感じられたラインハルトは軽い詫びを入れた。
「済まないな、僕のわがままだ」
「いえ、かまいません。ただ、私たち2体では心許ないので近くにいたパンセとビオラを呼びました」
その言葉が終わるか終わらないうちに、2体の小さな影がやってきた。礼子体形の2体である。
「き、君たちも 隠密機動部隊(SP) なのか」
驚くラインハルト。ステアリーナは言葉も出ないようだ。
「お急ぎ下さい」
地下2階から地下1階へ。そこで更に2体、少年型のポトスとヒースが合流した。その姿を見たステアリーナは何かを思ったようでもあった。
そして1階へ。室内巡回の警備員が3人倒れている。そこへ1体のゴーレムが現れた。
「お任せ下さい」
ポトスがそう言って跳びかかる。ヒースは無言で一瞬遅れて跳びかかった。
一瞬、紫色の火花が散った。1000万ボルトの雷魔法。ゴーレムは無力化され、倒れた。甲高い音が響く。
「さすがに気付かれますね。急ぎましょう。……ラインハルト様、ステアリーナ様、失礼します」
「え?」
「え? な、何? ……きゃああああああ!」
ラインハルトは面食らった声を上げただけだったが、ステアリーナは悲鳴を上げてしまう。
それというのも、セージがラインハルトを、コスモスがステアリーナを抱き上げて走り出したのである。
その速度は人間の5倍以上。ステアリーナが悲鳴を上げるのも無理はない。いきなりジェットコースターに乗ったようなものだ。
だが、その速さは確実に2人を危地から遠ざけた。一気に砦跡からの距離が開く。
いつの間にかステアリーナが静かになったと思ったら気絶していた。特に問題ではないのでそのまま2体は仁の指示に従い、砦跡から十分な距離を取る。
そこにはランド58、59、60がいて、2人を更に護衛する。
「君たちもジンの?」
「はい、 陸軍(アーミー) ゴーレムのランド58、59、60です」
ランド58が代表してそう答えた。
ラインハルトはかつて崑崙島で見た憶えがあった事を思い出した。そしてあらためて仁のとんでもなさを実感する。
「これじゃあ、我が国に仕えてくれ、なんて言えないな……」
* * *
「お父さま、ラインハルトさんとステアリーナさんの救出に成功したようです」
「よし、いよいよあの砦攻撃だな。今回はファルコンは出来るだけ使わないでおこう」
手の内を全部見せる必要は無いと言うことである。
仁はマリン5に命じてハイドロ5を岸に寄せさせて、礼子と共に陸へ上がった。
今の仁は強化服を着ているため、2メートルくらいのジャンプは可能だ。接岸せずとも飛び移れる。
ヘルメットも被り、シールドを暗視モードにすれば夜でも昼間のように見る事が出来た。
仁と礼子は、ランド50、51そして 隠密機動部隊(SP) のアッシュ、エルムと共に砦を回り込み、川と反対側の砦正面から100メートル位の場所に立った。
「よし、俺の警告を無視したからには容赦はいらない。礼子、挨拶代わりにまず3発、砦正面の壁にぶち込んでやれ」
「はい、お父さま」
喜々とした仕草で礼子は『レールガン』の発射準備を整えた。全長1.5メートルのアダマンタイト製銃身を構えた姿はひどくシュールである。
「よし、撃て!」
「発射!」
貫通力重視のアダマンタイトコーティングした弾丸がマッハ20で発射された。
ドカン、という衝撃音とほぼ同時に目の前の砦、その胸壁に直径3センチの穴が開いた。
厚さ1メートルの岩で出来た壁をも容易く貫通した弾丸はそのまま内壁を打ち抜いていき、反対側の外壁にめり込んでやっと止まったのである。
更に1発。そしてもう1発。
3つの穴を開けられた砦内がどんな状況であるか、仁は想像してみるのであった。