軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08-22 レールガン

本格始動した3日目。

「さあて、 第5列(クインタ) の後はどうするか、だ」

仁個人としては早くパワードスーツに取りかかりたくはある。だがアンは、

「この蓬莱島は海洋国家といえるでしょう。前線基地というのでしたら、空母を造るべきです」

仁の知識から持ってきたらしい空母、つまり航空母艦である。

「航空戦力を蓬莱島から発進させていたのでは時間が掛かりすぎます。飛行機を送れるような大きな 転移門(ワープゲート) を備えた空母が必要でしょう」

「なるほどなあ」

アンのいうことはいちいちもっともである。

「よし、作るか」

仁は老子と構想に取りかかる。

大きさは200メートルクラス。 転移門(ワープゲート) を備えるので必要以上の艦載機を乗せる必要は無い。

動力は 魔法型水流推進機関(マギウォータージェット) 。大きな物1基より、小型の物を6基使う。機関の出力調整だけでも進路変更可能だ。

甲板は2層構造。下は滑走を必要とする飛行機全般用、上は 垂直離着陸機(VTOL) 用。

現在の飛行機全機種対応できる大きさの 転移門(ワープゲート) を3基搭載。

武装はレーザー砲。主砲6門、副砲6門。各個点射可能な銃タイプは100基。いずれも個別の 制御核(コントロールコア) を持つ。まあコンピューター制御みたいなものだ。

補助として 水流の刃(ウォータージェット) 砲を10門備える。実弾も欲しいのだが開発していない。

乗員はマリン達 海軍(ネイビー) ゴーレム。100体では足りなくなりそうなのであと100体増やす予定だ。同様に 空軍(エアフォース) 、 陸軍(アーミー) も増員する。

空軍(エアフォース) は当然 垂直離着陸機(VTOL) に配置、 陸軍(アーミー) ゴーレムは前進基地勤務や工兵隊とする予定。

アダマンタイトの構造材に5層の鋼鉄張り、表面はミスリルコーティング。排水量約2万トン。

乗員30名。航行距離理論上無限、但し 自由魔力素(エーテル) のある地域に限る。搭載魔力による航行距離は約1万キロ。

改良型快速艇を造って搭載する予定。

以上のスペックで「穂高」「妙高」「浅間」と名付けた3隻を造る事となった。

さすがに1日2日で出来る物ではないので、老子主導の元、じっくりと製造する。仁は要所要所のチェックや、新規装備の製作である。

その次に仁がしたことと言えば。

「まずは実弾を発射できる砲を作って下さい」

アンが仁にそう言った。なかなかのマネージャーぶりである。

「うーん、運動エネルギーだけでギガースをぶっ壊せるくらいの作りたいなあ」

もはや自重の欠片も見つからない。こうなるといっそ清々しいくらいだ。

「反動が恐ろしい物になりそうだがなあ……」

空母に搭載するなら問題ないだろう。

ということで仁が作り始めたのは、原理的にはスリングショット。 海竜(シードラゴン) の革から作った 魔法筋肉(マジカルマッスル) の力で弾丸を撃ち出すものだ。

もはやカタパルト(投石機)の発展型である。

下を向けると弾丸が落ちる欠点があるのだが、 魔法筋肉(マジカルマッスル) 先端に弾丸保持機能を持たせることで解消した。普段は保持しておき、撃ち出す瞬間に解放する。

銃身としてのレールは上下に分かれており、そのレールの間を 魔法筋肉(マジカルマッスル) が動いて弾丸を撃ち出す。

「よし、試作完成」

全長1メートルほどの試作機が出来上がったのはお昼前であった。

昼はエルザに招かれているので、1回だけ試射をしてから崑崙島へ行こうと仁は思った。

「礼子、試しに撃ってみてくれ」

反動がわからないので礼子に頼むことにする。

「はい、お父さま」

普通のスリングショットと違い、 魔法筋肉(マジカルマッスル) は魔力を流せば伸びてくれるのでセットが楽だ。弾丸は直径2センチの鋼の玉。

「試しだから最強でやってくれ」

「わかりました」

水平に海の方へ向けて構えた礼子。

「行きます!」

トリガーを引く。 海竜(シードラゴン) の革から作った 魔法筋肉(マジカルマッスル) はとてつもない力を解放した。

どかんという音と共に、放物線ではなく直線で飛んでいった弾丸は、発射された瞬間にはもう仁の目には見えなくなった。ただ、雲がその衝撃波で消えた。イオン化された空気が光っている気がする。

「あー、あの音は音速を超えたようだな。さすがに重力を振り切ることは無いだろう。と思いたい。……無いよな?」

威力に呆れる仁。一方発射した礼子は、やはり反動で少し後ろに下がっていた。

「礼子、どうだ?」

「はい、初めてでしたので反動で少し下がってしまいましたが、もう次からは大丈夫です」

それを聞いて、試作機はもう少し手を加えたら礼子の専用武装の一つにしようと思う仁であった。

* * *

「きのう、マルシアさんのらしい船を見かけた」

崑崙島での昼食後、エルザがそんな話をする。

「あの双胴船が数隻、港に浮いていた」

「へえ、マルシアも頑張ってるみたいだな」

「ん。会えなかったけど」

まあ、あそこで出会ってしまうと、何でエルザがここにいるのか、とかややこしくなるからなあ、と仁は心の中で苦笑していた。

「ジン兄は、今何してるの?」

エルザに聞かれた仁は別に隠すことでもないので気軽に答える。

「今は蓬莱島の軍備増強かな。戦争とか嫌いだけど、守るためにはそうもいってられないし、奴らがエルザにしたことを思うとはらわたが煮えくり返りそうだ」

それを聞いて、今まで黙って聞いていたミーネが口を挟んだ。

「え、エルザ、何か、されたの?」

焦りまくりである。エルザは落ちついて答える。

「ううん。されたわけじゃない。でもいろいろと脅かされた」

と、パーセルの事を話した。今までは黙っていたらしい。それを聞かされたミーネは憤り、

「なんですって! そんなことを! ジン様、そんな奴らは生かしておいても世の中のためになりません!」

と過激な言葉を口走った。ああ、やっぱり芯は変わらないな、と仁は苦笑しつつ、

「わかってる。十分準備したら、奴らを壊滅させてやるさ」

と答えて席を立った。

「さて、それじゃあ、また蓬莱島で作業再開だ。お昼ごちそうさま。それに服もありがとう」

昨日買ってきてもらった服を受け取り、礼子に持って貰いながら仁はそう言った。

「うん。ジン兄、また、あしたのお昼に」

「ああ。じゃあな」

そして仁は蓬莱島へ戻った。

* * *

礼子に何度も試射させていたら銃身である上下のレールが熱くなって変形してきたのでテストは終了。

「あー、やっぱり鋼鉄でも連射は無理か」

ということでアダマンタイトで作り直すことに。アダマンタイトの融点はおよそ摂氏4500度。白熱しても融けない。工学魔法がなければどうすることも出来ない金属である。

鉄の比重は約7.9、アダマンタイトは約19.3。倍以上重いが、礼子なら問題ないだろう。

そのまま打撃にも使えるというおまけ付きだ。全長は1.5メートル。礼子の身長より少し大きい。

弾丸はカートリッジ式で10連発。試作より一回り大きい直径3センチの弾丸を発射する。

標準は鋼鉄球。貫通力重視ならアダマンタイトコーティングした弾丸、威力重視なら鉛玉だ。

鉛の場合、着弾と共に変形して貼り付き、運動エネルギーをほぼ100パーセント相手に伝える。

「銃身にライフリングはないけど、この威力なら十分だろ」

何せ最高速マッハ20くらいで飛ぶのだから目視できる範囲であれば直線で照準が付けられる。

「うーん、名前は……めんどくさい、もうレールガンでいいや」

レールの間から弾丸を発射するという意味では間違ってはいないのだろうが。

「お父さま、すばらしい武器をありがとうございます。これからはこれでお父さまの敵を排除します」

と言う礼子に、

「いや、相手によって考えて使え」

と、釘を刺すことを忘れない仁であった。

「 御主人様(マイロード) 、報告したいことがあります」

仁の作業が一段落したことを察した老子が話しかけてきた。

「ん、何だ?」

「はい。 第5列(クインタ) のために、ミーネさんから知識をコピーしましたが、その際、精神操作の痕跡らしきものがありましたので一応ご報告をと」

「精神操作? 催眠(ヒュプノ) か?」

「いえ、そんな強力なものではありません。おそらく『 暗示(セデュース) 』かと」

「 暗示(セデュース) ?」

仁は初めて聞く魔法だ。

「はい。これもアンの知識にありました。特定の行動をするように意識を向けさせる魔法です。本人の願望を助長するように使うと不自然さをあまり感じさせません。周りにも、本人にも」

「うーん……」

ミーネのエルザに対する異常とも思える固執。それが 暗示(セデュース) によるものだとしたら、辻褄がかなり合う。かけた相手は不明だが。

「で、今は解除されているんだな?」

「はい。頭部へのショックか、身体へのショックによるものだと思います」

「よし、解除法を検討しておいてくれ」

「了解しました」

この先、そういう相手が増える可能性がある。もしかしたらエルザの兄フリッツも、と思わないではない。

仁は一筋縄ではいかないか、と更に意識を引き締めるのであった。

* * *

夜、ラインハルトからの定時連絡では、首都エサイアには寄らず、ダリという街でアスール川を渡る準備中ということであった。

またしても3、4日待たされるそうだ。