軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07-19 過去の超技術

「ぜい、ぜい、はっ、はっ」

礼子が見つけた足跡のある場所までようやく登り着いた仁とラインハルトは、その『足跡』を見て驚愕する。

「この大きさからすると、10メートル超えているんじゃないのか?」

それほど巨大だったのである。だが礼子は、かぶりを振って、

「いえ、アンから得た情報では、安定を保つために足が大きいらしいです。ですので……」

と言いかけた時であった。

「君たち! どうしてここに!?」

と上から声がしたのである。振り仰いで見ると、なんとそれは行方不明になっていたルコールであった。

急いでそこまで登っていく仁とラインハルト。礼子はほんの1跳ねでそこに着いてしまった。

「あんたがいなくなったから探しに来たんだよ!」

と仁。嘘ではない。ルコールは髪の無い頭を掻き、

「いやあ、すまんすまん。朝飯を食べた後、ちょっと遺跡をのぞきに行ったのだ。そうしたらだな、通路の途中の壁に横穴があって、封印をした箱が置かれておってな」

ルコールは経緯を説明する。

「厳重に封印されていたが、魔力を流すとひとりでに開いてな。黒い 魔結晶(マギクリスタル) が転がり出て来たかと思うと、周りの岩を取り込んでみるみる大きくなってな、慌てて逃げ出すと、そいつは私の小屋を踏み潰し、山の方へ向かって行ったのだ。それでこっそり追いかけてきたというわけだ」

そう言って説明した。

「それで、そいつはどこに?」

そうラインハルトが聞くと、ルコールは黙って太陽のある方角、すなわち東の山を指差した。

「向こうへ登って行った」

「よし、追おう」

仁がそう言うとルコールは慌てて、

「お、おい、まさかあいつを止めようとか破壊しようとかいうのではあるまいな?」

と言った。仁はそんなルコールにきっぱりと告げる。

「そうさ。あいつはギガースと言って、魔導大戦の秘密兵器だったらしい。しかも不完全で、見境無く破壊して回るという。ここで止めないと、周囲に被害が出てからでは遅い」

「だ、だが、あいつを倒せるのか?」

「わからないが、やってみなくちゃな」

そう言ったのはラインハルト。礼子、仁に続いて尾根上へ出た。

確かに足跡が東方向の稜線に続いている。2人はそれを追って歩き出した。礼子は偵察を兼ね、一度先行している。

ルコールはその場を動かず、

「……あんな化け物を倒すなんて出来るのか……?」

と呟くだけだった。

* * *

稜線通しの道は今までよりは歩きやすかった。しかも、ギガースが歩いた後は所々が整地された様に平らになっていて、尚のこと歩きやすい。

「あー、風が心地いいな」

「汗が引くよ」

登りでかいた汗が山の風に引いていく。2人はペースを上げた。

10分くらい進んだ後、礼子が2人を手で遮った。

「この先に……います」

その先は稜線が窪んだいわゆる二重山稜となっていて、尾根幅が広い。

よく見ると、その一部が動いている。

「あれがギガースか!」

それは全身が岩屑で覆われた巨大な人型。アンが言っていた体形そのものだ。

ゆっくりと歩き、その先にある山頂目指している。

「止められるのか?」

ラインハルトが心配そうに言う。

「とにかくやってみよう。礼子、試しにここから石をぶつけてみろ」

「はい、お父さま」

礼子はその小さい手にちょうど収まる大きさの石を拾い、20パーセントの力でギガースに向けて投げ付けた。

「おお?」

投げた石とギガースの身体を構成する岩とがぶつかり、石は粉々、ギガースの身体も一部が砕け散る。だが、周りにいくらでもある岩を取り込んで、あっという間に壊れた部分は再生してしまった。

「うーん、あれこそゴーレムなんだよな」

この期に及んでもそんな思考をしている仁。礼子は2発目として、ハンドボール大の岩を投擲した。

今度はがきん、という硬質な音が響き、さっきよりも多くの岩がギガースから弾け飛んだが、それもすぐ再生してしまう。

「あの再生能力は厄介だな」

仁もラインハルトも同じ思いである。ならばどのくらいの再生速度があるのかと、仁は礼子に大岩をぶつけるよう指示を出す。

自分の5倍くらいある大岩を軽々と担ぎ上げた礼子は、それをギガース目掛け放り投げた。放物線ではなく直線で飛んでいった大岩はあやまたずギガースを直撃。

「駄目か」

その衝撃でギガースはよろけたものの、砕けた岩、砕けた身体、どれがどれだかわからないうちに再生してしまう。

「ちまちました攻撃じゃあ駄目なのか」

礼子は刀である桃花を持っているが、斬り飛ばしてもおそらく再生する。そもそも岩だらけのこの場所はギガースにとって有利この上ない。

「それなら魔法で攻撃だな!」

ラインハルトは魔法を刻み込んだ 短杖(ワンド) を取り出し、ギガース目掛けて魔法を放つ。

「『 炎の槍(フレイムランス) 』!」

短杖(ワンド) に込められた魔法は魔力さえ流せば一瞬で放つことが出来る。火の上級魔法、 炎の槍(フレイムランス) はギガースに命中した。

「あれでも駄目か」

高温の炎に炙られて融け落ちた岩は、すぐに周りにある岩から補充され、決定打にはならない。

しかも、いよいよギガースもこちらを敵と認識したか、向きを変え、ゆっくりと向かってきたのである。

「しかし反応も鈍いな」

敵認識が遅すぎる。これも失敗作と言われる所以であろう。

だがそんなのんびりしている暇はない。近寄ってくるギガースは体高10メートル、かなりの威圧感だ。

「直接、壊します!」

礼子が飛び出し、ギガースに殴りかかった。

* * *

「ジン君、ライ兄、心配」

残されたエルザは馬車の中で悶々としていた。目の前には 自動人形(オートマタ) のアン。

「ね、ギガースの弱点て、ないの?」

何故か2人はそれを聞かずに出掛けてしまった。

「弱点ですか。魔力が無くなると身体を維持できなくなります。反応が鈍いです。知性がありません」

あまり参考にならない情報であった。が、最初に言われた、魔力が無くなると、という言葉がエルザの脳裏に引っかかる。

「ギガースは、魔力をどうやって得ているの?」

そう尋ねてみた。するとアンからの答えは驚くべきもの。

「触れる物、まわりの空気、放たれた魔法、いろいろなものから吸収します。だからこそ対魔族用なのです」

魔力が生きるための必須要素となっている魔族相手には効果的なのだ、とアンは説明した。それを聞いたエルザは嫌な予感に襲われる。

「それじゃあ、ゴーレムとかで攻撃するのは」

「はい。ギガースには通用しないでしょう。触れただけで相手から魔力を吸収してしまいますから」

それを聞いたエルザは血の気が引く思いがした。

「それ、じゃあ、あなたのような 自動人形(オートマタ) でも駄目?」

一縷の望みを抱いてそう聞いてみる。

「はい。 自動人形(オートマタ) であろうと、ギガースは魔力を吸収してしまいます。私めなどはあっという間に動けなくなります」

仁たちの切り札は礼子。その礼子は魔力で動く 自動人形(オートマタ) 。

「ジン、君……」

エルザは不安げな目を仁たちが向かった山へと向けた。

* * *

ギガースに殴りかかる礼子。ギガースは足を振り上げ、それを迎え撃つ。

礼子の拳がギガースの足を殴りつけそれを破壊する、と思われたが。

「……?……」

ギガースの足に触れた瞬間、一瞬だが礼子の動きが止まり、ギガースの足でそのまま蹴り飛ばされた。

「あ」

体重差では50倍以上。礼子は宙を舞い、弧を描いてそのまま崖下へと落下したのである。