軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-26 急襲

「役者は揃った」

「では、始めよう」

* * *

エゲレア王国王城は鉄壁の守りを誇ると言われている。

それは、魔導大戦後、大戦の経験を生かして造られた構造にある。

物理攻撃に耐える外壁、魔法防御に特化した内壁。

更に不審者を通さない魔法結界。

最後に、選りすぐりの近衛騎士と高性能ゴーレム兵。

これらがエゲレア王国王城を難攻不落と言わしめている要素であった。

* * *

ゴーレムのお披露目は昼前に始まったが、延々と2時間あまりも続いたのでもう昼過ぎである。

仁などはうんざりしかけていた。

王の指示により、ようやく遅めの昼食会の準備が始まる。侍女達がテーブルを用意し、料理を運んでくる。完了まではまだもう少しかかるだろう。

その時間を利用して、ビーナは師であるグラディア・ハンプトンに挨拶しに向かった。暇だったのでなんとなしに仁も後を追う。

「先生、お久しぶりでございます」

隣にいる誰かと談笑していたグラディア・ハンプトンは話を止め、ビーナを見て、

「……誰だったかな?」

と、さして興味の無さそうな顔でそう言った。

「お忘れでしょうか? 去年まで先生にお世話になっていたビーナです」

そう言われたグラディア・ハンプトンは少し考えていたが、ようやく思い出したらしく、

「おお、君か。すまんね、ワシには大勢生徒がいるものでな」

「いえ、お気になさらないで下さい」

「それで、どうしたのかね? 君もゴーレムを造ってきたのかな? それにしては名前が挙がらなかったようだが」

「え、いえ、あの、その」

答えに詰まるビーナに、仁が助け船を出した。

「初めまして、ハンプトン先生。ビーナは俺の助手をしてくれましたので、本日ここに列席しているんですよ」

「君は?」

「ああ、申し遅れました、仁と申します」

「ふん、それで?」

「いえいえ、ただそれだけです。さ、ビーナ、気も済んだろ、行こう」

仁はそう言ってビーナをグラディア・ハンプトンから引き離した。

グラディア・ハンプトンは、もうビーナのことは忘れたように、傍の者と話を再開していた。

「…………」

ビーナは意気消沈していた。仮にも師と仰いだ人に自分がどれだけ成長したか見て欲しい、そして出来れば褒めて欲しい、等と心の片隅に思っていたのがあっさりと裏切られたのだから。

「まあ、あんなものじゃないか?」

仁はどう言ってやるべきか考え考え言葉を紡ぐ。

「先生って立場は大勢の生徒に教えてるんだろ? 生徒から見れば先生は只一人だけれど、先生から見たら生徒は大勢だ。憶えきれるものじゃないよ」

「……うん、そうね。そうかも。ありがと、ジン」

少し元気が出たらしいビーナを引っ張って、仁は並べられた料理の方へ向かう。

仁は空腹であったし、隣にいるビーナもいそいそと並べられた料理を口にするべく歩を進めた。

* * *

魔力を増幅するという宝石、エルラドライト。

標準的なエルラドライトは1個あたり20倍に魔力を増幅することが出来る。

これを2個組み合わせたなら20かける20、400倍になる。そして更にもう2個組み合わせたなら?

答は16万倍。単純に計算通りにはいかないにせよ、10万倍を下ることはないだろう。

そして10万倍の魔力は、通常なら接触状態で行う 制御核(コントロールコア) への 魔導式(マギフォーミュラ) 書き込みを20メートルの距離で可能にした。

「『 消去(イレーズ) 』『 書き込み(ライトイン) 』」

そのゴーレムは主の命を受け、秘めた力を全解放した。

* * *

仁の背筋に冷たいものが走る。

それは先頃感じた魔力と同質のもの。

「 ひ(ジ) ン、 ほ(ど) う ひ(し) ふぁ(た) の?」

肉を頬張ったままビーナが尋ねてきた。だが仁は険しい顔で、

「ビーナ、気をつけろ」

「ふぇ?」

「ぎゃああああああああ!!」

その瞬間、広間に悲鳴が響き渡った。

「ビーナ、こっちへ!」

「ふぇ……きゃ?」

突然仁に引っ張られたため、たたらを踏んで倒れかかるビーナを抱き留めた仁は魔導具を起動する。

「バリア」

ゴーレム 園遊会(パーティー) に参加していたゴーレム、いや、侍女を手伝って料理を運んだりテーブルを用意していたゴーレムも含め、全てのゴーレムが暴走を始めていたのである。

「きゃああ!」

「があ!」

会場のそこかしこで物が壊れる音が響き、悲鳴が上がる。

「な、何が起きたというのだ?」

「陛下、殿下、大丈夫です、わたくしがお守りいたします」

いや、全てのゴーレムではなかった。

「お前は……大丈夫なのか? ロッテ」

「はい」

仁が作り上げた『ロッテ』と、

「『 黒騎士(シュバルツリッター) 』! 暴走したゴーレムを止めろ!」

「 了解しました(ヤーボール) 」

ラインハルトの 黒騎士(シュバルツリッター) である。

「くっ! 『タウロス』、どうしたというのだ!」

「ああっ! 私の『エリオス』がっ!」

他のゴーレムは全て 主人(マスター) の制御を離れ、好き勝手に暴れ回っていた。

「ぎゃっ!」

「ええい、止めろ、止めるんだ!」

その場にいた近衛騎士達も奮闘するが、数が違いすぎた。10名足らずの人数では、40体を超すゴーレムを抑えきることは出来ない。

剣を振るっても相手は痛みを感じない金属の人形、こちらは生身の人間。9名が8名になり、8名が7名になる。

その中で、王と王子の傍にいた近衛騎士隊副長は善戦していたと言っても良い。

「どりゃあっ!」

広間に集まった者達で武器を持つことが許されたのは近衛騎士達だけ。その中にあって、副長であるブルーノは、アダマンタイトでコーティングをした名剣を所持していた。

全力で振るわれるそれは、青銅製のゴーレムなら輪切りにする威力がある。

今、ブルーノは3体目のゴーレムを切り伏せた所である。

「王! ここは私が支えます! どうか脱出を!」

「う、うむ」

エゲレア王はアーネスト第3王子を連れ、席を立つ。付き従うのは『ロッテ』のみ。目指すは広間隅の非常口である。

もう少しで非常口というその時、目の前の非常口を破って、城の警護ゴーレムが雪崩れ込んできたのである。