軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-25 ゴーレム達

「さて、続きましては財務相、ブラオロート様」

頭髪の薄くなった初老の男が進み出て礼をした。

「ゴーレム、『ズィンゲル』。 魔法工作士(マギクラフトマン) はヤルイダーレ殿」

布の下から現れたのはごく普通のゴーレム、色は青銅色、体形は10代中頃の女性型。

「普通ですな」

「まあ、あれが標準でしょう」

貴族達は小声でそんな評価を下している。だが、『ズィンゲル』がデモンストレーションを始めるとその顔に驚きが浮かんだ。

ーー野に咲く花、風にそよぐ草原

ーー光る雲、青くどこまでも広がる大空

ーー鳥は歌い、木々はさざめく

ーー優しい風よ、この美しい大地よ

透き通るような声で歌ったのである。

「おお……」

「なんという……」

3曲を披露し、歌うゴーレムということで、先ほどの『セレス』ほどの派手さはないものの、人々への印象は強かった。

そしてその次は外務相、内務相、防衛相と続く。無難なゴーレム達であった。

「魔法相、ケリヒドーレ様」

仁と同じくらいに小柄な男が進み出た。

「ゴーレム、『エリオス』。ご自身の作であります」

そうして布の下から現れたのは、真っ白なゴーレムである。

「おおっ!」

「あの姿は!」

そのゴーレムの背には同じく真っ白な翼が生えていた。

仁はポトロックで見たゴーレムを思い出したが、こちらの『エリオス』の方がより洗練されている。

「天使……」

誰とも無く呟かれたその単語。非常に気になる仁であったが、尋ねる相手もいない。

『エリオス』はその翼をゆっくりとはためかせ、飛びはしないが優美な動作で周囲に対して4度の礼を行った。

「美しいですな」

それは見た者の正直な感想であったろう。

それからも次々にゴーレムが紹介されていく。

今のところ男性型女性型の比率は大体3対7といったところである。

「ブルーランド領主、ブルウ公爵様」

いよいよブルウ公爵の名が呼ばれた。

「ゴーレム、『タウロス』。 魔法工作士(マギクラフトマン) 、ジェード・ネフロイ」

ブルウ公爵のゴーレムはまごう事なき男性型、しかも巨体である。

「おおおお!」

「力強い!」

「頼もしいですな」

その黒光りする鎧にも似た外見、2メートルを超す巨体。今日は剣ではなく盾を持っている。

それもタワーシールドと呼ばれる巨大な盾だ。

その圧倒的な威圧感、特にデモンストレーションは行わずとも見る者を圧倒していた。

「ブルーランド領主補佐、ブルーランド東部地区長官クズマ伯爵様」

クズマ伯爵が進み出、教科書通りの綺麗な礼を行う。

「ゴーレム、『ロッテ』。 魔法工作士(マギクラフトマン) 、ジン」

布の下から現れたロッテを見て驚いた者はいない。が、

「ロッテと申します、どうぞお見知りおき下さいませ」

と、澄んだ声で口上を述べ、流れるような動作で臣従の礼を取った時、何人かの具眼の士は目を見張った。流れるよう、というよりも人間そのものの動きだったからである。

だが、大半の列席者はそれに気付かず、

「ふむ、ありきたりですな」

「侍女服を着せているが後は目新しいところはないようで」

などと的外れの感想を述べていた。

「……ジンと言ったか。何ものだ、そやつは?」

「は、聞くところによりますと、エリアス王国ポトロックで先頃行われたゴーレム艇競技に優勝したチームの 魔法工作士(マギクラフトマン) だそうです」

「フリーなのか?」

「いえ、残念ながらショウロ皇国ラインハルト殿が確保されたようで」

「……少し残念だな」

等という会話が一部の貴族内で行われてはいたのだが。

「ブルーランド領主補佐、ブルーランド東部地区長官ガラナ伯爵様」

ガラナ伯爵の番である。

「ゴーレム、『オウル』。 魔法工作士(マギクラフトマン) 、ボーテス」

金ぴかのゴーレムが紹介される。

「ほう」

「派手ですな」

「成金伯爵だけのことはある」

評価は辛めのようだ。

「ストリアル領、グリエリ子爵様」

先日世話になった貴族である。

「ゴーレム、『アイアン』。 魔法工作士(マギクラフトマン) 、グラディア・ハンプトン」

ビーナの師匠が造ったゴーレムである。

これこそ何の変哲もないゴーレムの典型ではないか、と思われるような標準的な男性型のゴーレムであった。

そしておひろめは続いていき、いよいよ招待客の番となる。

「ショウロ皇国外交官、ラインハルト様」

ラインハルトが進み出た。

「ゴーレム、『 黒騎士(シュバルツリッター) 』。ご自身の作であります」

布が取り払われ、 黒騎士(シュバルツリッター) がお目見えした。

「おお、あれが噂の 黒騎士(シュバルツリッター) か」

「なるほど、均整の取れた姿、自然な動き」

「あのゴーレムが100体あったら怖いもの無しでしょうな」

黒騎士(シュバルツリッター) は戦闘用ゴーレムらしく、木製の模擬剣を振るい、いくつかの型を演じて見せた。

模擬剣なのは王族の前だからである。

「セルロア王国特使、ドミニク様」

進み出たのは妙齢の女性。腰まである金髪をそのまま垂らし、優雅に一礼した。

「ゴーレム、『ロワゾー』。ご自身の作であります」

彼女も 魔法工作士(マギクラフトマン) らしい。そのゴーレム、『ロワゾー』はなんと鳥型のゴーレムであった。それが赤、青、黄の3羽。

さすがに重くてこれも飛ぶ事は出来ないが、羽ばたき、囀る姿はなかなかのもの。何より、鳩くらいの大きさに収めた技術は評価されるべきだ。

遠方の貴族達はゴーレムを持参していないので、ドミニクの『ロワゾー』が最後となった。

「皆、見事じゃ。甲乙付けがたいものがあるが、後ほど我等の独断で順位は付けさせてもらう、悪く思うな」

王の言葉が響く。

「とはいえ、検討の時間も欲しい。ということで、立食形式ではあるが、昼食にしよう。皆、無礼講で存分に楽しんでもらいたい」