軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35-26 根比べ

「陛下! 魔法が……戻りました!!」

ショウロ皇国首都ロイザートにある 宮城(きゅうじょう) 、その最上階でトスモ湖方面を見つめていた女皇帝の耳に、待ちに待った言葉が聞こえた。

「本当に? 間違いではないわね?」

「は……はい! 停止していたゴーレムも再起動致しました!」

息を切らして階段を駆け上ってきたのはショウロ皇国魔法技術相、デガウズ・フルト・フォン・マニシュラスだった。

女皇帝よりも若い45歳のくせに、普段はデスクワークと研究ばかりなので、身体を動かすことが苦手なのだ。

(ジン君……ありがとう)

女皇帝は心の中で仁に礼を言うと、混乱の収拾のため、急ぎ階段を駆け下りていったのである。

* * *

「あなたあなた、ネオンが動き出しましたわ!」

「うん、こっちも魔導ランプが点いた」

ラインハルトの領地、カルツ村でも、異変は終了していた。

「ジン様……ですわね」

「そうだろうな。溜まってる仕事を終えたら行ってみよう」

「そうですわね」

* * *

「ああ、アアル! よかった……!」

「サキ様、私は停止していたのですか?」

「うん、そうだよ。でもジンのおかげで再起動したんだ」

「 自由魔力素(エーテル) が……不活性化していた、ということなのでしょうか?」

「うーん、それはボクにもまだわからないな。後で聞いてみよう」

* * *

「おお、魔法が使えるようになった!」

「ランプも点いたぜ!」

「助かった……」

今回の事件に遭った人々は、自分たちがいかに魔法に依存していたかを自覚したという。

* * *

《ふうむ……あれを処理したか》

《侮れませんね》

《まったくだ。底が見えないというか……》

《しかも、あのような飛行手段を持っている》

《飛行船だな。熱気球があるのだから、さほど不思議ではないが》

《どういたしますか?》

《あの3機をどう処理するか、見せてもらおう》

《わかりました》

* * *

「まだ付いてくるな」

現在『コンロン2』は南緯60度を超えたところ。空間の 自由魔力素(エーテル) 濃度は、赤道付近の4分の1になっており、『コンロン2』は既に 魔力貯蔵器(マナボンベ) を併用していた。

「あの3機はどうなんだろう?」

『 御主人様(マイロード) 、飛行がやや不安定になってきています。 魔力貯蔵器(マナボンベ) に相当するものを持っていないか、まだ使ってはいないかはわかりませんが、『コンロン2』ほどの対応力はなさそうです』

「そうか」

今回に関しては朗報ともいえるのだろうが、まだまだ相手の実力は把握しきれない。

「おそらくあれも遠隔操縦だろうしな」

『間違いないでしょうね。動きが無機的です。生命体が操縦しているとは思えません』

「なるほどな」

ゴーレムと人間の動作に違いがあるように、こうした乗り物の操縦にもそういった差が出てくるといえる。

「だがしつこいな。まだ付いてくるのか……『 力場発生器(フォースジェネレーター) 』推進も併用して、少し速度を上げてみよう」

『わかりました』

時速100キロを120キロに上げてみると、3機はそれでも追従してくるではないか。

「よし、150キロだ」

それでもまだ、食い付いてくる3機。

『 魔力貯蔵器(マナボンベ) に相当する予備エネルギーを使い始めたようですね』

飛行を観察していた老君が判断した。

「そのまま様子見かな」

『コンロン2』は、アルスを2周できる程度の 魔力貯蔵器(マナボンベ) を用意してあるが、追ってくる3機はどうなのか。仁は試してやろうと思っていた。

「ジン兄、攻撃はしないつもり?」

「ああ。今の段階ではな」

『エルザ様、 御主人様(マイロード) は、奴らがこちらを侮ってくれた方がいいと思っているのですよ』

仁は頷いて、追加の説明をする。

「そうなのさ。こっちが攻撃力を持たないか、あるいはそれをしない弱腰だと思わせておいて、奴らの隙を突きたいんだ」

「どうやるの?」

「まず1機でもいいから捕まえて、操っている相手を特定する。その回線を利用して、相手との対話を試みようと思うんだ」

全面戦争になったら、他の国々にとばっちりが行くだろうから、慎重にやりたいと仁は説明した。

「……確かに」

仁としても、蓬莱島とカイナ村くらいなら十分防衛できるが、それ以外の地域を全てカバーするわけにはいかない。

「やるなら一撃で叩き潰さないとな。……やるかどうかは別にして」

「ん、わかった」

「それにしても、本当にしつこいな……」

南緯70度を超え、空間の 自由魔力素(エーテル) 濃度は、赤道付近の5分の1以下になっていた。

「もしかして、エネルギー転送をしている可能性は?」

不意にエルザが発したその言葉に、仁もはっとさせられた。

「そうか……その手があったな」

だとすると、こちらが不利である。まだ仁は、納得のいく性能の 自由魔力素(エーテル) 転送装置を開発できていないのだから。

「どうするか……」

別の手を打つため、考え込む仁。

「よし、根比べだ」

そして決まる方針。

「そうと決まったら、 魔力貯蔵器(マナボンベ) を無駄遣いするのはよそう。赤道上を周回させるんだ」

『わかりました。そう指示を出します』

「そして」

ここからが真の計画だった。

「老君、『 覗き見望遠鏡(ピーパー) 』を使って、あの円盤の構造をできる限り調べてくれ」

『わかりました』

こればかりは人間の反応速度では不可能なので、老君に一任する仁。

「その間は、こっちは別のことができるな」

向こうがしびれを切らすのはいつか。それだけが不明である。

「向こうが魔導頭脳なら、こっちも 自動人形(オートマタ) と魔導頭脳だからな」

仁は少し不敵な笑顔を浮かべた。

「ジン兄、悪い顔してる」

エルザに言われたほどである。

「かもな。少々奴らのやり口には頭にきてるからな」

「ん、実は、私も」

それには同意のエルザであった。