軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35-21 先代の話

さらに下の階層へと進もうとしたのだったが……。

『 御主人様(マイロード) 、この下には 障壁(バリア) が張られていまして、透過できません』

おそらく最下層、おそらく魔導頭脳などの最重要施設ではないかと思われる部分は見ることができないようだった。

「だが、そこだって地中からなら 障壁(バリア) は無いんじゃないのか?」

『いえ、それが、『 魔法障壁(マジックバリア) 』のみ張られているようなのです』

「なるほど……」

魔法障壁(マジックバリア) は、物理攻撃は防がない。それはつまり、固体に影響されない=固体があっても関係ないということで、地中であろうと岩の中であろうと張ることは可能なのだ。理論的には。

「こうした事態を考えていたのかな?」

『それはわかりません』

とにかく、『オノゴロ島』の情報収集はここまでとなった。

* * *

「それじゃあ、シオン、マリッカ、これからもよろしく」

「またね」

元々はシオンとマリッカの歓迎会。

参加していた『仁ファミリー』のメンバーは、それぞれの家へと戻っていったのである。

残ったのは仁、エルザ、シオン、マリッカ。

エルザの実の母ミーネは、普段はカイナ村でマーサの手伝いをしている。

「ねえジン、あの『オノゴロ島』、危険はないのかしら」

シオンが少し不安そうに言った。

「危険……か。あると思う。そもそも何を考えているかわからない。この前、奴らが派遣したと思われる 自動人形(オートマタ) をとっ捕まえたんだけど、何も知らなかったしな」

「そう……」

「だからこっちは、何をされても対処できるだけの準備をしていきたいと思ってるんだ。……こんな慌ただしいときに呼んだのは悪いと思ってるけどな」

だがシオンは首を振った。

「ううん、むしろ嬉しいわ。あんな奴らが同じ世界にいるのかと思うとぞっとするから」

祖先の同胞が作ったとは思えない、とシオンは憤った。

「一日も早く、脅威を取り除いて欲しい。あたしも手伝うから」

ちょっと過激な発言が飛び出す。

「取り除く、か。どういう形になるかはともかく、きっちりと片を付けないとな」

仁は改めて宣言をした。

『そのためにも情報集めが必須ですね』

「そうだな。併せて、こちらの防御力も上げておかないと」

老君や研究所は万が一にも『覗かれ』ないよう、手を打とうと考えている仁であった。

* * *

「ねえジン、お願いがあるんだけど」

「何だい?」

大食堂で休憩中、シオンが頼み事をしてきた。

「ジンにとっての先代様……初代『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』について教えてほしいのよ」

「あ、私もお聞きしたいです!」

マリッカも手を上げた。

「いいとも」

仁はどう話そうか少し考える。

そこへエルザがお茶を持ってきた。

「ありがとう」

仁はお茶で喉を潤し、語り始める。

「まずは『 賢者(マグス) 』のことから語らないといけないんだ。『 賢者(マグス) 』とは……」

仁はまず、『 賢者(マグス) 』シュウキ・ツェツィのことを話して聞かせた。

「いろいろな魔導具を開発したり、工学魔法の基礎を作っていったりしたんだ」

シオンとマリッカは息を呑んで聞いていた。

「……そして懐かしい古巣で、シュウキ・ツェツィは最愛のアドリアナ・ツェツィを看取ったんだよ」

仁は温くなったお茶を飲み干した。

「ええ!?……その人も、ジンと同じ世界から来た人だったの……運命、なのかしら」

「……」

感心するシオン、絶句するマリッカ。

「運命、か。どうなのかなあ。……そして……」

仁は一息ついて先を続ける。

「やがて『 賢者(マグス) 』は旅に出て、1人の女の子……赤ん坊を託されるんだ。その子は『アドリアナ』といった。『 賢者(マグス) 』は、旅を続けながら……」

今度はシュウキ・ツェツィの旅と、旅を通じてのアドリアナの成長を語って聞かせた。

「そしてアドリアナは独自のゴーレムを作るようになって……」

「やっぱり若い時から凄かったのねえ」

適度に合いの手を入れながら話に耳を傾けるシオンとマリッカ。

「……で、ついにシュウキ・ツェツィとの別れの日が来たわけだ……」

シュウキの最期を語ったとき。シオンは目を潤ませていたし、マリッカは滂沱の涙を流していた。

「ぐずっ……げんぢゃざまあ……」

「はいはいマリッカ、涙を拭いて鼻をかみなさい」

シオンはマリッカを妹のように世話をする。

「うう……あぢがどうござひまふ」

「ほら、ちゃんとしなさい」

涙を拭いて鼻をかむと、マリッカはまだ少し目を潤ませていたが、少しはしゃんとしたようだ。

仁は苦笑しながら、続きを語り出した。

「一人になった先代は、シュウキ・ツェツィを埋葬すると、自ら作り上げた従者を連れて旅に出た」

レナード王国から海へ乗りだし、北上する先代の話をする仁。

「……そして、先代は魔族領に辿り着いたんだ」

「ご先祖様の所ね!」

「そう。まず『 蒼穹(そうきゅう) 』の氏族の所へ。そこで『 変形動力(フォームドライブ) 』を覚えた先代は、次いで『 森羅(しんら) 』の氏族を訪れた」

「わ! うちの氏族!?」

「そ、そうだったんですか!」

シオンとマリッカは、先代が早期に森羅氏族を訪れていたと聞いて、さらに興味を惹かれたようだ。

「それで? ジン!」

仁は笑って続きを話す。

「……森羅の氏族を訪れた先代は、村の保管庫を見せてもらったんだ。そして君たちの『祖先の秘宝』というものも解析し、動かなくなっていたものを修理していった」

「あ、やっぱりそうなんだ。そういう言い伝えが残っていたわ」

シオンが仁の話を裏付ける。やはり森羅氏族にも、そうした出来事は伝わっていたようだ。

「『 不変の(イモータリティ) 金属(メタル) 』と呼ばれていたアダマンタイトを工学魔法で加工したりして、38点に上る 古代遺物(アーティファクト) を解析し、使えるようにしたという」

「……凄かったのねえ、初代 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) は」

「だろう?」

「お母さまですから」

我がことのように胸を張る仁と礼子。

「でも、ジンだって、もっと凄いことをたくさんしているわ。 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) って、やっぱり凄い」

「はは、ありがとう」

「……で、その先は? 魔族領にはどのくらいいたのかしら?」

「そう、だな」

その先は、仁とエルザ、礼子と老君は先代の日記を読んで知っているが、他の面々にはまだ話していなかった。

というのも、内容的にあまり愉快ではなかったこと、これまでと違い、記述が事務的になっていたことなどの理由による。

それでも仁は、語ることにした。

シオンたち『魔族』は、人類以上にアドリアナ・バルボラ・ツェツィを信奉し、尊敬していたのだから。

そして彼女が大成できたのは間違いなく彼等のおかげでもあるのだから。