軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35-16 解析と比較

『どう考えてもあの 自動人形(オートマタ) は異常ですね』

ロイザートの屋敷に謎の 自動人形(オートマタ) がやって来る少し前、老君は仁に声を掛けた。

「どうした、老君? 緊急事態か?」

老君の声に、仁は制御席から身体を起こす。

仁が操っている 分身人形(ドッペル) は、そのまま老君が制御を引き継いだ。

『 御主人様(マイロード) 、お邪魔をして申し訳ございません。ですが、お耳に入れておいた方がいいと判断しました』

そして老君は謎の 自動人形(オートマタ) の話をした。

『その言動から、今の世界の戦力を調べに来たと判断します』

「確かにな」

『その上位存在はまず間違いなく『オノゴロ島』です』

「だろうな」

仁もそれには同意である。

何らかの理由で、『オノゴロ島』が、この世界に干渉しようとしているのかもしれない、と仁は身を引き締めた。

司令室の 魔導投影窓(マジックスクリーン) には、 第5列(クインタ) 、レグルス46通称『デック』の目から送られてきた映像が映し出されている。

「なら、できるだけこちらを侮ってもらったほうがいいな」

『はい、 御主人様(マイロード) 。過小評価していてもらうに限ります』

これまで謎の 自動人形(オートマタ) の行動は『デック』が逐一老君に報告していたので、まだ仁の実力には気が付いていないことがわかる。

『ですが、いずれ 御主人様(マイロード) の存在に気が付くでしょう』

別に秘密にしていないのだから、当然の帰結である。

「捕まえるか?」

『はい。ですが、その際にもこちらの実力を計ってくるでしょうから、僅差で勝つか、一瞬で無力化するのがよろしいかと』

「わかった。……礼子!」

「はい、お父さま」

礼子は、仁本人が蓬莱島に残っているため、当然こっちにいる。

「奴の実力がわからないから、こちらとしても最高戦力をぶつけたい。行ってくれるか?」

「もちろんです」

「そして、これもお前にしかできないことだが、特殊な魔法は使わず、力だけであいつをねじ伏せ、隙を見て『 魔力素除去器(エーテルエリミネイタ) 』を使え」

魔力素除去器(エーテルエリミネイタ) は対象物の 自由魔力素(エーテル) を奪い取る魔導具である。

以前『暴食バッタ』を退治した魔導具で、これをゴーレムに使えば行動を停止させることができるのだ。

仁はそれを1機、礼子に持たせた。

画面では、謎の 自動人形(オートマタ) が門扉を破って屋敷内に侵入するところが映っていた。

『工学魔法かそれに類するもので門扉を変形させましたか』

ショウロ皇国の 古代遺物(アーティファクト) である巨大ゴーレムにも搭載されていた機能である。謎の 自動人形(オートマタ) が持っていてもおかしくはない。

『庭に入れなさい。そして礼子さんがそちらに転移したら『 魔法障壁(マジックバリア) 』を展開するように』

老君からの指示。できる限りこちらの情報は渡したくない。

『…… 意志を持つ操り人形(ライブパペット) よ』

この呼び方により、謎の 自動人形(オートマタ) が、『オノゴロ島』から送られてきたという裏付けが取れた。

「間違いない。礼子、行け!」

「はい、お父さま」

礼子はすぐに転移していった

そして、聞こえてきたセリフ。

『お嬢様だと? お前が? 人に似せて作られてはいるが、 意志を持つ操り人形(ライブパペット) ではないか!』

そして、戦闘が始まった。

同時に、屋敷全体に『 魔法障壁(マジックバリア) 』が張られる。もちろん、庭にも。

礼子は謎の 自動人形(オートマタ) を弾き飛ばすと、指示どおり 魔力素除去器(エーテルエリミネイタ) を起動した。

「ぬ? これは? 力が抜ける………………」

謎の 自動人形(オートマタ) は動きを止めた。

「よし、いいぞ。思惑どおりだ」

魔力素除去器(エーテルエリミネイタ) が効果を表したので仁はほっとした。

自由魔力素(エーテル) がなくなったら、という事態は想定されていなかったようだ。

「さて、どうするか」

魔力素除去器(エーテルエリミネイタ) を止めたら、また動き出す可能性がある。ゆえにこのまま無力化したい。

「よし、礼子、そいつの構造を調べて……は無理か」

魔力素除去器(エーテルエリミネイタ) が働いている限り、工学魔法を含む魔法全般は使えないということだ。

『 御主人様(マイロード) 、エーテルジャマーに切り替えれば、工学魔法が使えるようになります』

「ああ、そうか」

魔力素除去器(エーテルエリミネイタ) は 自由魔力素(エーテル) を奪い去る効果があるが、エーテルジャマーは一定範囲の 自由魔力素(エーテル) を支配下におく働きをする。

つまり、仁と仁の作ったモノ以外、 自由魔力素(エーテル) を利用できなくなるわけだ。

「それでいこう」

礼子には老君から指示が行く。

「わかりました」

瞬時も途切れさせることなく、 魔力素除去器(エーテルエリミネイタ) からエーテルジャマーへと切り替える礼子。

謎の 自動人形(オートマタ) は停止したままだが、礼子は問題なく工学魔法を使うことができるようになった。

「『 分析(アナライズ) 』」

礼子は、まず構造を調べた。

「 制御核(コントロールコア) は頭部にあるタイプですか。それに…… 魔力反応炉(マギリアクター) を持っていますね」

魔力反応炉(マギリアクター) は、 魔素変換器(エーテルコンバーター) と 魔力炉(マナドライバー) を1つに合わせた働きをする 魔導装置(マギデバイス) で、仁と 始祖(オリジン) 以外は使っていない。

仁にしても、700672号の指導の元、マスターした技術である。

「とりあえず 魔力反応炉(マギリアクター) を切り離してしまいましょう」

これにより、謎の 自動人形(オートマタ) は完全に無力化された。

『礼子さん、念のためあなたの 障壁(バリア) でその 自動人形(オートマタ) を包み込み、『屋敷』の工房に運んで下さい』

老君からの指示により、礼子は謎の 自動人形(オートマタ) を工房に運び込んだ。これで光学的にも見られることはなくなる。

そこへ仁がやって来た。

「礼子、よくやってくれた」

まず仁は、壊された門扉を修復。

「やはり『 変形(フォーミング) 』で壊されたか……」

こればかりは今のところ防ぎようがない。

そして仁は謎の 自動人形(オートマタ) の解析に取りかかる。

一番に行ったことは 制御核(コントロールコア) の複製だ。情報は何より貴重である。

それからは体構造の解析となる。

「ふうん、こいつも人間の身体を真似ているのか」

少し前に出会った、 魔素暴走(エーテル・スタンピード) 前のゴーレムと同じ思想である。

もちろん、こちらの方がずっと出来はいいが。

「骨格は……驚いたな、64軽銀だ。筋肉は合成物だな。だが性能はよさそうだ」

おおよその見当で、人間の10倍くらいの力を出せるだろうと思われた。

「『普通なら』脅威なんだろうけどな……」

蓬莱島のゴーレムたちと比較したら問題にならないので、この点は仁の方が優位である。

魔導神経の配線も非常に精密であった。

人間に似せているとはいっても、臓器と 魔導装置(マギデバイス) の位置を対比させるような、無駄な拘りはなかった。

「だが、大きな 魔力反応炉(マギリアクター) だな。薄い 自由魔力素(エーテル) 濃度でも動けるようにしているんだろうな」

仁の手に掛かり、次々に構造が明らかになっていく。

そしてやはり、通信装置らしき 魔導装置(マギデバイス) が見つかる。

仁は即座にそれを切り離した。

が、他には特に目立った構成はなく、参考にはならなかった。

逆にいえば、仁の作るゴーレム・ 自動人形(オートマタ) はそれだけ完成度が高いのである。

「こうしてみると、我々の技術は『オノゴロ島』に劣っている、とばかりも言い切れないようだな」

多少なりとも肩を並べられる技術がありそうなのは喜ばしい、と仁は思った。

『平和ボケしているような連中ですから、もしかしたら戦闘技術は発達していないのかもしれませんね』

「ああ、その可能性はあるな。……まずはここまでにしておこう。あとはこの 制御核(コントロールコア) から情報を引き出さないと」

仁は、謎の 自動人形(オートマタ) は屋敷内工房に残し、礼子を伴って蓬莱島に戻ったのであった。