軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-15 互助会(ギルド)

翌日は、旧型馬車にダンパーを取り付ける事から始まった。

方法は、車輪を支える腕木に粘弾性のある材質を貼り付けるだけ。

この粘弾性のある材質というのはもちろん 大泥蛙(グランマッドフロッグ) の革である。

これを腕木を支えるように斜め上下に張ることで振動を抑制してくれる。

試しに乗ってみるとかなり効果がある事がわかる。

「いやあ、これはいいな! ジン、国元へ帰ったらこの礼は必ずする!」

大喜びのラインハルトを見て仁も嬉しい。これで馬車酔いがかなり軽減されるだろうから。

そんなことをしていたら昼食時間、礼子に『もうお昼です』と言われて初めて気が付く2人。

食堂へ行くと、クズマ伯爵が待っていた。公務は早く終わったらしい。

「おお、来たな、2人とも。話があるのだ」

そう言って、昼食の席に手招いた。

* * *

昼食後のお茶の時間に、クズマ伯爵はその話を始めた。

「話というのは他でもない、例のゴーレム 園遊会(パーティー) のことなのだ」

そう言って仁の顔を見、

「ブルーランドからはブルウ公爵、私、そしてガラナ伯爵が行くことになった」

そう聞いたエルザの顔が少々歪んだ。余程嫌いらしい。

「それで、出立は3日後。首都アスントまでは3日から4日かかるから、ゴーレム 園遊会(パーティー) の2日前には着けるだろう」

「わかりました」

仁の答えを聞いた伯爵は更に言葉を続ける。

「でだ、明後日午後、ジンは私と共に公爵に会いに行くことになる。ゴーレム『ロッテ』ももちろん一緒だ」

つまり、ゴーレム 園遊会(パーティー) に出すゴーレムと製作者を予め公爵に見せておくということだ。

「なので、出来ればジンには、 魔法工作士(マギクラフトマン) の 互助会(ギルド) に登録して欲しいのだが」

ポトロックではフリーの 魔法工作士(マギクラフトマン) としてやっていた仁だが、さすがに今回はきちんとした身分証明が欲しいというわけである。

「保証人は私、推薦人は……」

「僕がやろう」

ラインハルトが名乗りを上げた。伯爵が保証人、また4男とはいえ伯爵家であるラインハルトが推薦すれば、何の問題もなく登録できるだろう。

仁にとってデメリットはほとんど無い。なので仁はすぐに了承した。

「それはよかった。では、後ほど 互助会(ギルド) 宛てに書面をしたためよう」

その日の午後は旧型馬車全てにダンパーを取り付けて終了。余った時間でクズマ伯爵の馬車にも同じものを取り付けておいた2人である。

* * *

「これが 互助会(ギルド) 宛ての書面だ」

翌日、朝食後に伯爵から蝋で封印した巻物を渡された仁は、すぐに 互助会(ギルド) へ行くことにする。

正直、 互助会(ギルド) に興味があったのだ。

ポトロックではマルシアフィギュアを作っただけで、どういう組織なのかよくわからなかったし、この国の 互助会(ギルド) は何か違うのかと言うことにも興味があった。

推薦人であるラインハルトが同行する。エルザも、

「私も行く。1人で残っていてもつまらない」

と言って付いてくることになった。

それで、仁、礼子、ラインハルト、エルザの4人で向かうことに。

エルザの乳母、ミーネも行きたがったが、ラインハルトとクズマ伯爵の2人からあまり子供扱いしてやるな、と諭され、渋々従ったのは余談。

4人を乗せた幌無し軽馬車はクズマ伯爵邸を出発した。向かうは城塞都市ブルーランドの城壁そばにある 互助会(ギルド) ブルーランド支部である。

「おおっ、これは確実に揺れが小さい!」

「確かに。これなら乗っているのもかなり楽」

ラインハルトとエルザがそれぞれの感想を述べる。伯爵邸内での試乗とは違い、土、石畳などの実際の路面で身を以て確かめるダンパーの効果。

「あとは耐久性だが、 大泥蛙(グランマッドフロッグ) の革に期待だな」

「うむ。まあそれほど高価な素材でも無し、予備を持てば十分に実用的だろう」

そんな話をしているうちに城壁が近づいてくる。

「あそこが 魔法工作士(マギクラフトマン) 互助会(ギルド) ブルーランド支部だ」

仁は昨日ラインハルトに聞いたことを思い出す。

互助会(ギルド) と言う組織は、例えるなら農協や漁協のようなものらしい。

その職業に携わる者達に便宜を図り、時には権利を守り、また時にはその職業に携わる者の名誉を損ねる者を罰することもあるという。

そして 互助会(ギルド) は 魔法工作士(マギクラフトマン) 以外にも、建築士、商業、便利屋などの 互助会(ギルド) があるとのことだった。

その一つ、 魔法工作士(マギクラフトマン) 互助会(ギルド) は、大谷石のような石材で建てられた2階建ての建物であった。

「着きました」

口数の少ない御者がそう告げ、馬車は 互助会(ギルド) 前で停止。4人が馬車から降りると御者は所定の場所、すなわち駐馬車場へと馬車を移動させた。

「へえ、駐車場まであるのか」

仁も感心する。馬車を使うのはそれだけ身分もしくは財力のある証拠。そういう者達が頻繁に訪れるということだ。

ラインハルトが扉を開け、一行は 互助会(ギルド) に足を踏み入れた。

「ふうん」

中は白い壁材が要所要所に使われており、明るい雰囲気である。仁の知っている場所に例えると銀行か郵便局だろうか。

入り口から入ってすぐの机には、総合案内的な役の若い女性が座っている。

そこから奥へはカウンター状になっており、いくつか窓口があって、それぞれ担当が付いている。

『情報』『依頼』『相談』『会計』『登録』『処罰』などとあって、仁達が向かったのは『登録』の窓口である。

「ようこそ。登録ですか?」

窓口にいたのは仁より少し下と思われる青年である。

「そうです。ここにクズマ伯爵からの書面があります。まずはこれを支部長に渡してください」

ラインハルトに促され、仁は封をされた巻物を担当の青年に手渡す。青年は封蝋の紋章を確認後、

「ただちに」

と短く返事をして奥へと向かった。

待つ間、仁は他の窓口を眺めてみた。ラインハルトが説明してくれる。

『情報』。窓口は1人だが、中には5人ほどが詰めていて、やはりというか情報を大事にしていることがうかがえる。

『依頼』。パトロンのいない 魔法工作士(マギクラフトマン) が仕事を捜しに来るらしい。

『相談』。難しい依頼の場合にいろいろと相談に乗ってくれるようだ。もちろん相応の手数料は取るとのこと。

『会計』。資金不足の場合、業績に応じてお金を借りたり出来る。また、際立つ功績を上げた組合員には 互助会(ギルド) から報奨金を与えたりもするらしい。

『資材』。製作のための材料手配を手伝ってくれたり、入手先を紹介してくれたりする。

『登録』。仁が今待っている窓口である。 互助会(ギルド) に登録するための窓口。

『処罰』。 互助会(ギルド) の名誉を著しく損ねた者に関する手続きということだがあまり詳しく聞きたくはない。

先ほどの青年が戻ってきて、

「2階へどうぞ、支部長がお話を伺うとのことです」

と言うので、仁一行は青年に案内され、 互助会(ギルド) 2階へと向かったのである。