作品タイトル不明
35-03 計画の相談
蓬莱島時間で午後8時過ぎにはマルシアの誕生会は終了した。
時差の関係で、既知世界では最も時刻が進んでいる蓬莱島なので、『仁ファミリー』のメンバーの地元ではまだ早い時間である。
それで全員、酔い醒ましを兼ねて食堂で寛いでいた。
ハンナは子供であり、またビーナは身重なので2人はジュースしか飲んでおらず酔い醒ましの必要がないが、他のメンバーは冷たい水を飲んでいる。
あまり赤い顔で地元に帰ると立場上まずい者もいるのである。
「なあジン、このあとの計画は?」
コップをテーブルに置いたラインハルトが仁に尋ねた。
「南極の謎を解くのを続けるのかい?」
「いや、そっちは一時保留だ」
仁もコップの水を飲み干してから答えた。
「さっきもちょっと話したが、どうにも『ヘレンテ』の態度が納得いかないからどうしようかと思ってる」
「うーん、確かにな。元外交官として言わせてもらうと、その『ヘレンテ』の態度は明らかにおかしいと思う。少なくともこの世界を守っているようには思えない」
ラインハルトが意見を述べる。
「何か特定の目的を追っている、という気がする。これは僕の勘だけどね」
「特定の目的か……そのために 自由魔力素(エーテル) を集めている、というわけか」
「そういうことだな」
頷き合う仁とラインハルト。
「そもそも、『主人』がもういないわけだから、彼等の存在意義はないはずなのに、未だに固執しているというのが納得いかないかな」
グースも疑問を呈する。
「とはいえ、情報が少なすぎるから即断は危険だろうけどね」
「その『ヘレンテ』って、なんだか不気味だわね」
ビーナが嫌悪感を露わにして言い放った。
「結局、今回の破片騒ぎにもなにもしなかったんでしょう?」
「そうだな。聞く限りでは、この世界が滅ぼうとも我関せず、という態度とも取れるな」
クズマ伯爵も同意した。
「 自由魔力素(エーテル) を集めるという、その行為に、アルス上の生命は関係ない、ということか」
グースも嫌悪感剥き出しで吐き捨てる様に言った。
「なら、なぜ人類への影響が少ない南半球で行っているのかな?」
疑問点を口にしたのはトア。
「単に、彼等が稼働し始めた頃は、北半球に『主人』がいたからじゃないのかな?」
サキも自分の見解を述べた。
「いや、そうとも限らないぞ。余計なことをして調査に来られたら面倒だから、という理由も考えられる」
現に今回、ジン君が調査隊を派遣したんだし、とトアは言う。
他にもいろいろと意見は出たが、やはり情報不足のため結論は出せずにいた。
「いずれにしても、蓬莱島にない技術を持っていることは間違いない。今のところ、『望遠装置』と『 自由魔力素(エーテル) 転送』、この2つは再現できていないし」
「うーん、ジン君にもできないことってあるのねえ」
おかしな感心の仕方をするミロウィーナがいた。
「そりゃ、ありますよ」
苦笑混じりに仁が返す。
「その2つだって、ジン君ならなんとかかんとか実現しそうなものよねえ」
ステアリーナも乗ってくる、
「そんなこと言ったって……ああ、そうか」
「え? もうできちゃったの?」
「ああ、いや、そうじゃなくて、発想を変えればいいのかなあ、と思って」
「発想を?」
「ええ。見せられた技術を再現することに固執するんじゃなく、俺なりに同じ効果を出せるようにすればいいんじゃないかと」
その答えにステアリーナは感心したようだ。
「なるほどね、やっぱりジン君だわ」
* * *
皆の酔いもかなり醒めた頃。
「せっかくだから集合写真撮ろう」
ふと思いついた仁が言い出した。『 写真機(カメラ) 』があることを失念していたのである。
「あら、いいわね」
皆、『 写真機(カメラ) 』の存在は知っていたので(そして忘れていた)、頷いた。
「はい、撮りますよ……」
礼子が『 写真機(カメラ) 』を構え、全員が入った集合写真を撮ってくれた。
あとで全員分焼き増しして各自に渡す予定だ。
「それじゃあジン、今日はありがとう。この時計、大事にするよ」
仁はファミリーメンバーへの誕生日プレゼントとして、今年は全員に懐中時計を贈っているのだ。
「それじゃあ、ジン殿、また」
マルシアとロドリゴが帰り、
「ジンさん、それでは帰ります。おやすみなさい」
リシアが帰り。
「ジン、またね」
「ジン殿、今日は楽しかった」
ビーナとクズマ伯爵も帰っていった。
「それじゃあ、僕たちも帰るとするか」
「ええ、あなた。ユリアーナもおねむのようですし」
ラインハルト夫妻も、領地へと戻る。
残ったのはハンナとマーサ、サキとトア、ステアリーナ、ヴィヴィアン、グース、そしてミロウィーナ。
いずれも地元に急いで戻る必要のない面々である。
「で、ジン君はどうするつもり?」
ミロウィーナが仁に尋ねた。何かを期待しているような顔である。
「ええと、まだ決めたわけではないんですが、ヘールに行ってみたいなと」
「なるほどね」
ミロウィーナは平然と聞いていたが、他の面々は少なからず驚いたようだ。
「人類の祖先が出た惑星だし、未だに何かありそうだし、なんとなく気になるんだ」
「それは、確かに」
意外なことに、エルザは反対しなかった。
「そのために、今回作った大型 力場発生器(フォースジェネレーター) を使って、100メートル級の宇宙船を2隻用意しようかと」
「え」
それは予想外だったらしい。
「ヘールに何があるかわからないから、やはり戦力はあった方がいいし」
「……わかる、けど」
「なら、『ユニー』にある資材も使っていいわよ。どうせ使うあてがあるわけじゃないし」
ミロウィーナの申し出に仁は頭を下げた。
「ありがとうございます。必要になったら、そうさせてもらいます」
そして仁は、回収された資材の話をした。
「というわけで、おおかたの資材は補充できたし、鉄とニッケルなんかは以前より在庫が増えたくらいだ」
足りないのはミスリル銀で、それも今海水から抽出できないか試している、と仁は説明したのである。