軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34-14 強化

『アドリアナ』に装備するための防御装置は『 魔導防御盾(アイギス) 』と名付けられた。

ギリシア神話の女神アテナに由来する盾の名前である。

英語読みはイージス。イージス艦の名称はそこから取られている。

「 整波器(コヒーレンサー) の使い途……まだあるかな」

『 魔導防御盾(アイギス) 』を完成させた仁は、まだ満足していない。

「ジン兄、今日はもう休まなきゃ駄目」

時刻は午後10時、明日もまた早くからミッションの指示に当たらねばならないだろう。

「ああ、わかったよ。一風呂浴びて寝るとするか」

「ん、そうして」

仁は『家』の風呂へと向かった。

「ああ、気持ちがいいな」

浴槽で手足を伸ばすと、やはり疲れが溜まっていたことを自覚する。

「お父さま、無理は駄目です」

背中を流してくれている礼子にも苦言を呈される仁。

「わかったよ、礼子」

「口ではそう返事していますけど、きっとまた無理無茶をするんでしょうね、お父さまは」

「はは……かもな」

「エルザ様に心配を掛けるのはおやめ下さい」

「……そうだな」

風呂から出て『家』の寝室へ。

寝室と行っても和室なので、襖で仕切られているだけだが。

「ジン兄、今日もお疲れ様」

「お父さま、そこに横になって下さい」

「え、礼子?」

今夜に限って部屋の中まで付いて来た礼子が、珍しいことを言いだした。

「マッサージをして差し上げます」

「え、え? 何で急に?」

「老君やエルザ様と相談した結果です。今までは、お年寄りが対象なのかと思っていましたが、先日エルザ様の肩をお揉みになりましたよね?」

「あ、ああ、そんなこともあったな」

「ですから、お父さまにもして差し上げることにしました」

老君には、仁の知識の大半を教えてあり、その中には院長先生にしてあげていたマッサージの知識もあったようだ。

それを礼子は老君から聞き、『触覚』のある己の身体を生かして仁へマッサージをしてあげようと思いついたのである。

「私も、勉強する」

「え? ……ああ、やっぱり疲れているのかな……」

モノ作りは、不自然な姿勢を長時間とることが多いので、局所的な疲れが溜まることがある。

仁の場合は背中……肩胛骨の間、であった。

「ああ、気持ちがいいな……」

『触覚』のある礼子ならではの微妙な力加減である。

そうこうするうちに、仁は眠ってしまっていた。

「やっぱり、疲れてらっしゃいますね」

「ん、レーコちゃん、ありがとう。今度私も練習してみる」

「おやすみなさいませ」

礼子は正座して一礼すると、部屋を出ていったのである。

部屋の明かりを消したエルザは、仁に布団を掛けると、自分も横になる。

「あと、5日……」

そしてぽつりと呟き、エルザは目を閉じたのである。

* * *

10月11日となった。

仁は、潤沢にある『ユニバシウム』と『 整波器(コヒーレンサー) 』の使いどころを考えていた。

「魔導回路に『 整波器(コヒーレンサー) 』を挟むだけで、 魔力素(マナ) の運用効率が10倍以上になるのは大きいよなあ」

主に魔法の効果に関してそれは顕著である。

「礼子と老君の 魔導回路(マギサーキット) に使うのは当然として、蓬莱島のゴーレムたちに装備しておくにしくはないな」

今回見つかった『ミティアナイト』はおおよそ3キログラム。『 魔導防御盾(アイギス) 』に1キロほど使ったので残りは2キロとなる。

「ゴーレムの大きさなら、1体あたり5グラムくらいしか使わないだろうからな」

そこで、まずは礼子の 魔導回路(マギサーキット) に取り付ける。

これで力が強くなることはない。力の上限は 魔法筋肉(マジカルマッスル) に左右されるからだ。

だが、使える魔法の威力は10倍に、 魔力素(マナ) の消費は10分の1になる。

通常動作に限るなら、南半球の低い 自由魔力素(エーテル) 濃度でも、 魔力貯蔵器(マナボンベ) に頼らず十分動けるようになったということ。これは大きなメリットである。

全体的な動作で消費する 魔力素(マナ) も効率良く運用されるから、動作的にいっても3パーセントくらいの向上が見込めた。

「この前改良していただいたのに、さらに調子よくなりました。ありがとうございます」

「礼子はよく尽くしてくれるからな。これからも頼むよ」

「はい、もちろんです」

仁は同様な改良を老君に行う。こちらはパワー関連の向上は見込めないが、 魔力素(マナ) の消費が抑えられることで、やはり3パーセント程度、効率がアップした。

一方、移動用端末『老子』の方は、礼子同様動作効率が向上した。

* * *

『 御主人様(マイロード) 、お知らせがあります』

「うん、どうした?」

『はい。破片『大』のうちで、小さい方から3個まで、十分に軌道が逸れました』

「おお、そうか。じゃあその分の大型 力場発生器(フォースジェネレーター) を『特大』に回せるな」

『ですが今、『アドリアナ』は……』

そう、大型 力場発生器(フォースジェネレーター) は『アドリアナ』で運んでいるのだ。

「偵察用宇宙船で運べないかな?」

『可能とは思います。少し時間は掛かりますが』

「今は『アドリアナ』の推進力を無くすのは惜しい。時間が掛かってもいいからそっちでやってくれ」

『わかりました』

地上にいる仁には、これ以上のことができないのがもどかしかった。

「あの大型 力場発生器(フォースジェネレーター) 、終わったら有効活用したいもんだな……もう1隻宇宙船作るか?」

などと考えている仁。

「いかんいかん、今は目の前の問題に取り組まないと」

仁は頭を振って、逸れた思考を戻す。

アルスへの脅威は、今のところ『破片』である。

『小』『中』『大』までは対応済み。『特大』は対応中である。

『微小』については……。

「よし、やっぱりこれだな。『大聖』、偵察用宇宙船2隻に、破片『微小』も転送砲処理するよう指示を出してくれ」

『 御主人様(マイロード) 、どうしても漏れが出てしまいますが』

「わかってる。アルスへの軌道に近いものを最優先で行ってくれ」

『わかりました』

まだ処理されていなかった『微小』な破片は、かなりの距離を飛んだことにより、相互間隔が広がっており、処理漏れが発生することは明らかだった。

「それでも、リスクはできるだけ減らしたいからな」

仁はさらにさらに、見落とし、やり残しがないか考え込むのであった。

「そうだ、そろそろ各国へ連絡を入れた方がいいだろうな」

おおよそ、どんなことが起こりうるか見当が付くようになった。

仁は老君と共に連絡内容をまとめ始めたのである。