軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34-07 ミッション開始

「ああ、疲れた」

村人に比べたらまるきり働いてはいないが、それでも1日中身体を動かしていた仁は、心地よい疲れを感じていた。

「ジン、ご苦労さん。助かったよ」

「明日は来られないと思いますけど」

「いやいや、今日だけでほとんど終わってしまったからな。領主様にこれ以上手伝わせたら 罰(ばち) が当たるってものだ」

「おにーちゃん、ご苦労様!」

「ジン、ゆっくりお休みよ。エルザちゃん、ありがとね」

村人たちに見送られ、仁とエルザ、礼子らは二堂城へ。そこから 転移門(ワープゲート) で蓬莱島へ帰った。

「うあー、気持ちいい」

肉体労働の後の入浴は格別である。仁は浴槽で手足を伸ばした。

「明日は筋肉痛かもな……」

肉体が生身に戻った故の弱点であるが、それもまた心地よし。仁は満足そうな笑みを浮かべた。

そしてその夜は夢も見ずにぐっすりと眠れたのだった。

* * *

10月7日。案の定全身の筋肉痛に悩まされながらも、仁は心地よい朝を迎えていた。

隣のエルザも、少し肩と脚が痛いという。いろいろ手伝った反動だ。

夫婦仲良く筋肉痛の身体をゆるゆると動かし、朝食を摂る。

「ジン兄、今日はどうするの? 破片に近付くのは明日以降でしょ?」

エルザからの質問を受けた仁は、老君に確認をとった。

「老君、その辺はどうなんだ?」

『はい、 御主人様(マイロード) 。第4惑星の軌道を越えたところ、宇宙空間の物質密度が下がりまして、速度を更に上げることができました。このまま行けば今日中に破片と出会います』

「そうか!」

対処を始めるのは早ければ早い方が望ましい。

「そのまま続行だ。あと、何か新しい知らせは?」

『今のところはそれだけです』

「わかった」

いよいよ、あと半日ほどで正念場だ。仁は気を引き締めた。

その日は、仁もエルザも何も手に付かない様子だった。

うろうろと研究所内を歩き回ってみたり、治癒薬を延々と作ってみたり。

この先、徹夜になる可能性も考えて昼寝をしようとしたが、全然眠くならず、諦めたり。

仁とエルザにはもどかしいほど時はゆっくりと過ぎ、ついにその時が来た。

『 御主人様(マイロード) 、『モデヌ』の破片、発見しました』

「そうか! 『アドリアナ』、予定通り減速だ!」

『わかりました』

『アドリアナ』の加減速能力はおよそ20G。人間が乗り込んでいなければもう少し上げられる。

秒速400キロメートルで飛んでいたとしても、33分ちょっとで静止できる計算だ。

そして今度は逆方向に向かう。こちらは岩塊の速度に同調するのでせいぜい秒速250キロメートルくらいだから21分ほどということになる。

「あと1時間で作戦開始だ」

そうしたら仁は、『アドリアナ』に予め乗せてある『 分身人形(ドッペル) 』を使って現場で指揮をする予定である。

ここからが正念場である。

* * *

宇宙空間では、直径300メートルの宇宙船『アドリアナ』が、その持てる能力の全てを使って減速をしていた。

20G……196メートル毎秒毎秒という途轍もない加速度は、 力場発生器(フォースジェネレーター) だからこそ可能な値だ。

そして、減速している間に『モデヌ』の破片とすれ違う。ここまでは予定通りだ。

33分で停止した『アドリアナ』は、艦体を180度回転させ、今度は来た方向に向かって加速を開始した。

追いかける目標は『モデヌ』の破片。

微小な破片との接触事故を避けるため、進行方向に直角な方向に100キロ以上離れた軌道を採っている。

* * *

「いよいよだな」

蓬莱島の司令室では、緊張した面持ちの仁が、『 分身人形(ドッペル) 』の操縦席に座っていた。

『はい、 御主人様(マイロード) 。同期のため、加速度は4Gに落としています』

「よし、『 分身人形(ドッペル) 』、起動」

* * *

仁の『 分身人形(ドッペル) 』=仁Dは、目を開いた。場所は『アドリアナ』の中央艦橋である。

『ようこそ、 御主人様(マイロード) 』

『アドリアナ』の頭脳、『大聖』が出迎えた。

「大聖、状況は?」

『はい、順調です。あと2分ほどで速度同調は終わります』

「よし、そうしたら搭載している偵察用宇宙船10隻を全部射出だ」

『はい』

今度は瞬く間に時間が過ぎていく。

『偵察用宇宙船10隻、出します』

「よし」

『ヘルクレス』『アキレウス』『ペルセウス』『テセウス』『カストル』『ポルックス』『プロメテウス』『エンデミオン』『ダイダロス』『ケフェウス』と名付けられた、直径10メートルの宇宙船たちだ。

「予定通り、『小』『中』の処理を行え」

『わかりました。まず『中』の処理、それが済み次第『小』の処理へと移行します』

「頼んだ」

そして仁Dと『アドリアナ』は、『大』と『特大』の処置に取りかかる。

乗員である金色をした 宇宙軍(スペースフォース) ゴーレム、『コスモス』たちが手分けして大型 力場発生器(フォースジェネレーター) を据え付けていくのだ。

『大』の中でも大きいものには25基。大きさと推定質量に合わせて減らしていき、『大』の中でも最も小さいものには5基。

これで、『大』はなんとか移動させられるはずである。

だが、ここで思わぬ見落としがあったことに気が付く仁。

「回転している、だと……?」

そう、破片はゆっくりと自転していたのだ。

「思いついてしかるべきだった……!」

これでは、大型 力場発生器(フォースジェネレーター) の推進力がどちらに向くか定まらないので、効果がどれくらい上がるか特定できないことになってしまう。

「なんとかしなくちゃな……」

仁Dを操縦している仁は必死に打開策を考えた。

「そうか! 『コスモス』1体ずつを付けて制御させれば……!」

大型 力場発生器(フォースジェネレーター) をいくつか姿勢制御に使い、安定したらそれらも軌道変更に使う。これならいいだろう、と仁は考えた。

打開策を思い付き、仁はほっとする。

「よし、まず『大』から処置していこう」

『特大』はあまりに巨大なので、『大』の処置後、残った大型 力場発生器(フォースジェネレーター) を全部使ってしまおうと仁は考えているのだ。

『アドリアナ』は手近な『大』に分類される岩塊へと近付いていった。

無理に着陸はしない。搭載した 力場発生器(フォースジェネレーター) を使って、相対位置を固定する。

『下部倉庫ハッチ開きます』

『大聖』が状況を逐一報告してくる。

『コスモス500、大型 力場発生器(フォースジェネレーター) を運び出します』

1G下では350キロもある大型 力場発生器(フォースジェネレーター) だが、ほぼ無重量となる宇宙空間では楽に運べる。

元々『コスモス』たちはスカイ隊やマリン隊と同じ位のパワーを持っているので、1Gであっても1体で運べるのだが。

『設置、完了』

25基を運び出し、設置するのにおよそ1時間掛かった。

「よし、それでは、済まないがコスモス500はそのままそこに留まって、セランに突っ込む軌道になるよう調整してくれ」

こうして、ミッションは開始されたのであった。