軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33-33 進まぬ調査

『マーメイド隊から、岩石についての報告が入りました』

第一の報告だ。

『外周の岩場を造っている岩は、付近の海底とは異なる種類だそうです』

「うーん、火山が噴出した可能性もあるから、自然にできた島という可能性はまだなくならないな」

『仰るとおりです。ですが、数種類が組み合わさっているとなると、人工の可能性が高くなると思います』

「どういうことだ?」

『はい、 御主人様(マイロード) 。調査によれば……』

老君の説明によると、海上に出ている部分は単一の岩石であるが、海中に没している部分の岩石はそうではないという。

『わかる範囲で、花崗岩、玄武岩、粘板岩が確認されました』

その3つは、仁も知っている石材の名前だ。

花崗岩は地中深くで固まった火成岩、玄武岩は浅いところもしくは地表で固まった火成岩。粘板岩は粘土が堆積してできた堆積岩である。

これらの岩が同じ場所にあるというだけで、自然にできたものではない可能性が高い。

「そばにある大陸に同じ種類の岩があるか、確認をとってくれ」

『わかりました』

結果をいうと、それはすぐに見つかった。海岸線は玄武岩で、海岸から3キロほど内陸に入った岩山が花崗岩の山、海底の一部は粘板岩が露出していたのだ。

「こうなると人工の島である可能性が更に高まったな」

『はい、 御主人様(マイロード) 。次は岩で囲まれた内海に入ってみます』

マーメイド隊の1体から送られてくる映像を見つめる仁、エルザ、グース。

ゴーレムたちの行動は素早く、作業は確実だ。

さほど待つこともなく、内海が近付いてきた。

《結界が張られています》

マーメイド566からの報告が入った。

「結界か……やはり何かがある証拠だな」

「ジン兄、どんな結界か調べたら、作った人の手掛かりにならない?」

エルザが思い付きを述べた。

「ああ、それはいいな。早速頼む、老君」

『わかりました』

そして、待つこと5分。

《ご主人様、これまで見たことのないような形式です》

マーメイド566から直接の報告が入った。

「分析できるか?」

《お待ち下さい。……はい、おそらくこれは、探知系の結界だと思われます》

「……なるほど」

結界とは、いうなれば魔力で作った網だ。

幾つかの種類はあるが、蓬莱島では『 障壁(バリア) 』が最も使われている。この場合、網の目の大きさによって、固体用・液体用・気体用、それらの組合わせとなる。

ここで注意しなくてはならないのは、『気体は通さないが固体は通す』や、『固体は通さないが液体は通す』という選別式の結界をどうやって実現するか、である。

分子の大きさは固体の方が大きいので、 篩(ふるい) と同様、大きな網の目で固体を弾き、液体や気体を通過させることは比較的簡単にできる。

が、その逆に、固体を通し、気体を通さないとはどうすればいいのか。

1つの答えは、『弱い網』『即修復』『密着』がキーワードである。

気体の分子は通過できないが、固体の質量があれば、網を破って通過できる。その際、網は固体の周囲に沿って密着し、どさくさに紛れて気体が通過することを防ぐ。そして固体が通過した穴は瞬時に修復される。

こうした造りの結界が一般的である。

一方、ここの結界は探知結界。魔力の網が破れたら、それを検知し、警報を出すような形式らしい。

通路のような狭い場所に張るには適しているだろう。

「無理に通過すれば警報が発せられるわけか」

何が起きるか見当がつかない、そんな事態は仁も望んでいない。

「どうするか……そうだ!」

転送装置を使い、結界の向こう側へ行くことを思いつく仁。

「老君、必要な転送装置をマーメイド566に送れ」

『わかりました』

一品もの以外、ほとんどの魔導具は予備がストックされている。

老君は短距離用の転送装置を5個、マーメイド566とその同僚用に送り出した。もちろん転送機を使って。

《ご主人様、受け取りました。これより、他の4体と共に潜入いたします》

そしてマーメイド566、567、568、569、570の5体は探知結界の向こう側へと転移したのである。

ちなみに、水中には転移できないので、一旦空中に出、『 力場発生器(フォースジェネレーター) 』で空中に浮かんでおいてゆっくりと水中に潜るという、非常に面倒な手順を踏んだことを付け加えておく。もちろんその際、『 不可視化(インビジブル) 』で姿を消している。転送機を受け取った時も海面で、だ。

「やっと1段階終了ってところだな」

仁が少しうんざりしたような顔で言った。

「でも仕方ないな。できるだけ隠密裏に、という条件があるんだから」

「そういうことだな、仁」

「ジン兄、いまのうちにお昼にしたら?」

「そうですよ、お父さま。気分転換も必要です」

グース、エルザ、礼子。皆に言われ、仁は席を立った。

司令室へ食事を持って来させるということも考えたが、エルザや礼子に怒られそうなので、食堂まで行くことにした仁であった。

* * *

食事を済ませて戻ってくると、マーメイド隊からの報告が上がってきたところであった。

《内海には、大型の魚などはいません。いるのは小魚や海老、貝類です。波が穏やかなので海草類が繁茂しています》

「なるほど。だろうな」

グースが頷く。

《内部の岩は全て玄武岩のようです》

「となると、元々の岩……というか、『オノゴロ島』も火山島なのかもな」

成因を調べるのは二の次である。

《そして、ここの 自由魔力素(エーテル) 濃度は0に近いです》

「やはり……マイナスの特異点、といったところか?」

「だとすると、結界はどうやって魔力を得ているか、謎だな……」

『更に調査を進めさせます』

老君の言葉に、仁は頷き返した。

「じっくりと海中を探れ。罠があるかもしれないし、何か隠されているかもしれないからな」

『はい、 御主人様(マイロード) 』

さすがに、その日のうちには探索は終わりそうもない。

夜になったので仁、エルザ、グースは司令室を離れ、夕食を摂ってそれぞれの部屋へと引き上げた。

「悩ましいな」

『家』の居間で寛いだ仁は、ぽつりと言葉を漏らした。

「どうしたの?」

「『長周期惑星』も、南極調査も、思ったより進展がないからなあ」

「焦っちゃ、だめ。ジン兄にしかできないことなんだから、落ちついて構えていて」

「そうですよ、お父さま」

ほうじ茶を差し出しながら礼子も言い添える。

「きっと、突破口は見えてきます。ですから今日のところは心安らかにお休み下さい」

「そうか。……そうだな。ありがとう、礼子、エルザ」

仁はほうじ茶をすすりながら、ふ、と笑った。

「今思いついたんだが、『長周期惑星』が近付いた場合、重力的な影響があるかもしれない。そうした対策も必要かもな」

「重力制御装置、ということ?」

「そうさ。その大型、超大型のものを用意する必要があるかもな」

「ん、わかる。……これは私の案だけど、『長周期惑星』から資源を採掘して送らせるというのは、どう?」

「ああ、それもいいかもな」

こんな会話を交わしながら、夜は更けていった。