軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-06 スリーサイズ

トイレの話はまた後でということにして、ふと思いついた仁は、一行をまず館へと招き入れる。

まずは1階。南向きの玄関から入ると玄関ホール。奥には地下と2階への階段。

階段に向かって左脇にトイレ。右側が浴室である。

「ここの風呂は温泉なんだよ」

仁がそう言うと、皆首をかしげる。やはり温泉という物は一般的ではないようだ。

「えーとな、地下深く掘ると、上手くすればお湯の井戸を掘り当てることが出来るんだ……」

「ああ、なるほど」

その説明で少しはわかったらしい。

更に右、つまり館の東側が台所と食堂。

玄関ホールの反対側が工房と倉庫である。

「ジンの工房を見たいものだな」

とはラインハルトの言だが、これにはエルザもビーナも同感なようなので、まずは工房を見せることにした。

その工房は20畳くらいの広さ。年季の入った(ように見せている)作業台がまず目を惹く。

そしてやはり使い込まれた(ように誂えた)工具の数々。棚に並んだ素材。

「うーん、これはみごとだ。というか、羨ましい充実ぶりだ」

「……」

ラインハルトが感嘆の声を上げ、ビーナは言葉もない。

エルザは、自分にはよくわからないが珍しいものを見せてもらえたという感じできょろきょろしていた。

そこで仁は思いついたことを口にする。

「あ−、午前中は館やその周りを案内して、午後から島を見せようかと思っているんだが」

「ん、いいんじゃないか?」

ラインハルトにも異議はない。

「でだ、歩くと大変なんで、さっきのゴーレム馬に乗ってもらいたいんだが、女性方はスカートだろ?」

エルザは普段着に近いとは言え、膝下まであるロングスカート。

ビーナは普段着の膝下丈のプリーツスカートである。

「で、よかったら乗馬用ズボンを作ってプレゼントしたいんだが」

そう仁が口にしたらビーナが食いついた。

「え!? ジン、あなた、裁縫も出来るの?」

「いや、まあ、出来るか出来ないかといったら出来るんだけどさ、今回は工学魔法で作るから裁縫とは言わないと思う」

そう言って仁は棚から革を取り出した。

「んん!? もしかしてそれは魔獣の革じゃないのか?」

さすがにラインハルトは即材質を言い当てた。

「ああ。これが一番いいかと思って」

「いいも何も、貴重な素材じゃないのか? 魔獣なんてこの辺じゃ獲れないだろう?」

仁はやっぱりそうなのか、と思ったが、おくびにも出さず、

「うーん、師匠がたくさん確保していてくれたからなあ」

といって誤魔化すことにした。

というわけで、エルザには白い革で、ビーナには 臙脂(えんじ) 色の革でズボンを作る事にする。

「あー、礼子、悪いが2人のサイズを測ってくれないか」

仁が測るのはさすがに憚られた。

「はい、お父さま」

礼子は無表情に2人を見つめたかと思うと、

「わかりました。エルザさんは身長160センチ、サイズは上から79、54、80です。ビーナさんは157センチ。上から78、55、79」

「え……」

自分でもよく知らない身長などをいきなり言われてビーナは戸惑う。

エルザは『そうなの?』といった感じで自分の身体を見回している。

「おーい礼子、そういう数字はあまりあからさまに口にするなー」

聞かされた仁もどう反応したらいいか戸惑っていた。

ラインハルトはというと、

「身長はわかるが、そのあとの数字は何のことだ?」

と尋ねてくる始末。

「そう。わたしも知りたい」

エルザもよくわかっていないようである。

「実はあたしも。身長を当てられたのはわかったけど、その後の数字ってどういう意味?」

と言われた仁は少し照れながら、

「上から、胸囲、腰回り、尻回りの寸法、といっていいのかな……」

と言ったのだが、それを聞いた瞬間ビーナは赤面、エルザも頬を染めた。

「な、ななななな……ジンのスケベ!」

「ジン君、えっち」

2人からそう言われた仁は思わず叫んでしまう。

「俺が悪いのかー!」

つまりは礼子に命じて自分達の体のサイズを測らせたから、らしい。

「うー、何となく納得がいかん」

と言いながら、革を裁断していく。薄い板で作られた型板を見て感心したのはなぜかラインハルト。

「なるほど、そういう型を作っておけば、わずかな変更で同じ物を作れるんだな!」

ラインハルトの反応から察するに、紙が貴重なこの世界では型紙という概念がないのか、あっても一般に知られていないらしい。

現実にも、テンプレートと呼ばれる型板と工作機械を組み合わせてさまざまな製品が作られた。今はコンピューター制御が主流なので型板は廃れつつあるようだが。

閑話休題。

魔獣の革を裁断した仁は、工学魔法『 接合(ジョイント) 』を用いて整形。同色のベルトも作り、完成だ。

「出来た」

ものの30分で2着のズボンを仕立てた手際を見て、3人は感心していた。

「さ、それじゃあこれを……着替えるのは別室がいいな」

ということで、仁はエルザとビーナを浴室の脱衣所まで案内し、そこで着替えてくれ、と言ってズボンを渡し、自分は外に出た。

「ジンからのプレゼント。えへ」

2人きりになるとビーナはいそいそとスカートを脱ぎ、ズボンを穿く。

エルザはただ黙々と穿き替えた。

「ジン、どう?」

エルザより先に穿き替えたビーナは外で待っていた仁にズボン姿を披露。

幾分余裕を持って作られたそれは身体に沿ってはいたものの、ラインを浮き立たせることはなく、健康的な色気と言うべきものを感じさせる仕上がり。

「ジン君、着てみた」

エルザも出て来て、その場でくるりと回って見せ、

「とてもうごきやすい。ありがとう」

そう言ったのである。焦ったのはビーナ。まだお礼を言っていない。

「あ、ジ、ジン、ありがとうね! 大事にするから!」

「それはよかった。2人ともよく似合ってるし」

そして3人はラインハルトの待つ工房へ戻る。

ラインハルトはといえば工房内を歩き廻り、いろいろと観察したり触ったりしていたので退屈するわけもなく。

「お、早かったな。もっとゆっくりしてくれてもいいのに」

等と言っている。

「そんなに時間かかるわけがない」

とエルザに反論されたのは当然である。