軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31-45 銀のスプーン

「できた」

およそ3時間後、仁とエルザは『メリーゴーランド』を完成させた。

回転速度、音、仁から見てまずまずの出来である。

「わあ、楽しそうな音」

からんころんからんころんと鳴りながらくるくる回るメリーゴーランドは、見ていて飽きない。

色も原色に近い明るい色をふんだんに使い、子供向けとしたつもりの仁。

「よし、これを量産して、カイナ村にも『出産祝い』として配ろう」

「ん、いいと思う」

そして仁たちは20個のメリーゴーランドを作った。

「よし、赤ちゃんがいる家に配るとするか」

仁がそう言うと、ハンナが配る、と言いだした。

「あたしが配ってきてあげる。おにーちゃんとエルザおねーちゃんは休んでていいよ」

「え、そうか? ……じゃあ礼子、荷物持ちをしてあげてくれるか?」

「はい、わかりました。ハンナちゃん、行きましょう」

「うん!」

今新生児のいる家は全部で7軒。礼子がメリーゴーランドを6つ、ハンナが1つ持ち、2人は出掛けていった。

* * *

残された仁は、また別の贈りものを思いつく。

「それに加えて、ラインハルトのところには銀のスプーンも贈ろうか」

「?」

仁が言いだした『銀のスプーン』とは、現代地球での『銀のスプーンをくわえて生まれてきた子どもは幸せになる』という言い伝えによる。

また銀には魔除けの力があると信じられ、神聖なものとして使われてきた経緯があるのだ。

というようなことをエルザに説明する仁。するとエルザは俄然やる気を見せた。

「それ、素敵。是非、私に作らせて欲しい」

「ああ、いいとも。それじゃあエルザに頼もう」

「ん、任せて」

デザインに関して、仁はエルザを信頼している。

銀92.5パーセント、銅7.5パーセントの銀合金、925銀別名スターリングシルバーを仁は用意した。

それをエルザが加工する。

「『 変形(フォーミング) 』」

銀の塊が一瞬淡く光り、形を変えていく。

そしてスプーンが出来上がった。

「おお、いいな」

全体的に丸いデザインで、柄の部分にはランドル家の紋章が刻まれている。

「離乳食を食べさせるときにも使えるな」

記念として使わずにしまっておく人もいるようなので、どちらでもOKなものとしたようだ。

「これをきれいな箱に入れて届けるとしようか。ええと、時間は……」

カイナ村では午前11時30分。時差は約3時間なので、カルツ村は午前8時30分頃のはずだ。

「大丈夫そうだから行ってくる」

「待って。私も行く。だからハンナちゃんとレーコちゃんが帰ってくるまで……」

「ああ、そうだな」

エルザの言葉に仁も全面的に同意した。

「ただいまー、おにーちゃん、おねーちゃん」

「ただいま戻りました」

それから10分ほどでハンナと礼子が帰って来た。

「お帰り。それじゃあ、ちょっとこれを渡しに、ラインハルトの所へ行ってくるよ」

「うん、行ってらっしゃい、おにーちゃん」

「はい、お伴します」

ハンナと礼子はそれぞれの答えを返す。

というわけで、仁とエルザはハンナに見送られて、ラインハルトの領地であるカルツ村、『 蔦の館(ランケンハオス) 』へと移動したのであった。

* * *

「やあ、ジン、エルザ! よく来てくれたね!」

テンションの高いラインハルトが2人を出迎えた。

「エルザ、おかげさまでベルチェももう起きられるようになったよ」

「そう、よかった」

エルザの治癒魔法で、ベルチェの身体は健康になっていたのだが、愛妻家のラインハルトは大事をとっていたのである。

「それで名前も決めたんだ! 聞いてくれるかい?」

「ああ、もちろんさ。……で?」

「『ユリアーナ』。『ユリアーナ・ランドル』だ」

「『ユリアーナ』か。いい名前じゃないか」

「ん、『ユリ』ちゃん。可愛い」

「そうだろうそうだろう!」

ラインハルトは上機嫌だ。

「それで、これ、俺たちからのお祝いだ」

仁は、まずメリーゴーランドを渡す。

「何だい、これ?」

当然の質問。

「これは天井から吊して、こうするんだ」

仁は、適当な場所にメリーゴーランドを吊るし、動かして見せた。

からころからころ、からんころんからんころんとリズミカルで軽妙な音が鳴る。

「おお、面白いな!」

「赤ちゃんをあやす玩具なんだよ」

「なるほど! ジンのいた世界にはこういうものがあったのか! ありがとう、ジン、エルザ!」

その間にエルザは、スプーンに『ユリアーナ』と追加で刻んでいた。

そして、

「ライ兄、これも私たちから」

と言って差し出した。もちろん、きちんと梱包し直して、である。

「おお、ありがとう! ……これは?」

「銀のスプーン。ジン兄のいた世界では……」

と、伝承を説明する。

「なるほど、そうか! ありがとう、ジン、エルザ! ……ああ済まん、ベルとユリに会ってやってくれ!」

そこで仁とエルザはラインハルトにより、館の一室に案内された。

「あ、いらっしゃいませ、ジン様、エルザさん」

「やあ、ベルチェ」

ベルチェはもう床を離れていて、赤ん坊……ユリアーナをあやしているところであった。

ユリアーナは天蓋付きの寝台に寝かされていた。今は起きているようだ。

「ベル、仁たちからこれをもらったよ」

「まあ、何ですの?」

「『メリーゴーランド』っていうんだ。これはこうして……」

ラインハルトは早速天蓋にメリーゴーランドを取り付けた。そして一言。

「『動け』」

すると、メリーゴーランドはゆっくりと回り始めた。同時に軽やかな音が鳴り始める。

「まあ!」

目を見張るベルチェ。

ユリアーナはきゃっきゃっとはしゃぎだした。

「おお、喜んでるみたいだ」

「まだ目は見えていないと思うけど、音は聞こえているだろうからな」

ご機嫌そうなユリアーナを見ていると、仁の顔にも自然と笑みが浮かんでくる。

そしてそれは隣にいるエルザも同じようだった。

ラインハルトとベルチェも、2人の愛の結晶を見つめ、幸せそうに微笑んでいたのである。

ベルチェも、名前入りの銀のスプーンをその由来を聞いて喜んでくれたのは言うまでもない。