軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30-36 暴走する2人

「これに鎧を浸します」

鎧が液体金属を吸収し、『 鈍色(にびいろ) 』になっていく。

「次は『 制御核(コントロールコア) 』です」

ガンノは『ファントム』を呼び寄せ、その頭部から 制御核(コントロールコア) と思われる 魔結晶(マギクリスタル) を取り出した。

同様に、鎧の頭部からも 魔結晶(マギクリスタル) を取り出す。

「内容を複写します。……『 複写(コピー) 』!」

ジックスはガンノからコピーされた 制御核(コントロールコア) を受け取り、セザール王たちに見せた。

「これで『ファントム』の動作制御は全て複写されました」

コピーしたその 制御核(コントロールコア) を鎧の頭部に収める。

(なるほど、魔導神経の配線がいらないというわけだ)

仁はその作業を観察しながら情報を得ていく。

その頃には、鎧は完全に 鈍色(にびいろ) となり、樽の中の液体金属は半分に減っていた。

同じことをもう1体にも行ったジックスとガンノは一歩下がり、2体の鎧を指差して声を掛けた。

「『起きろ』」

「『起きろ』」

起動の 魔鍵語(キーワード) を唱えれば、鎧はゴーレムとなって立ち上がった。

「おお」

「もう完成したのか」

「確かに早いな」

目を見張るセザール王たち。

ジックスの顔に笑みが浮かんだ。

確かに、仁が本気でゴーレム1体を作るよりも早いといえよう。だが。

「その鎧を準備する時間や、液体金属を作り上げる時間はどうなんだ? それから、頭部には視覚情報・聴覚情報の受容器官だってあるはずだろう? それはどうやって作ってる?」

仁(の 分身人形(ドッペル) )が指摘すると、ジックスらの顔に浮かんだ得意げな色が消えた。

例えば、レトルトカレーを買ってきて調理するのは簡単だ。だが、そのレトルト部分を作るには手間が掛かっている、というような指摘である。

あるいはカップ麺の方が例えとして近いかもしれない。

お湯を注いでハイでき上がり、と言っても、お湯を注いだ人がカップ麺を全部作ったとは言えないだろう。

発泡金属を作るのが簡単なはずはなく、『流体金属』にしても同じだと仁は思っている。

「そ、それは……」

言い淀むジックス。

「いや、非難しているわけではない。説明はできるだけ省かずにしてもらいたいと思っているだけだ」

「……鎧は……その……」

ジックスは、さらに言い淀む。

「……い、いいじゃないですか。おい、ガンノ、全部を起動させろ」

「兄貴、了解だ」

「お、おい?」

「そこまでしろとは言っていないぞ!」

止める間もあらばこそ、動き出したゴーレムにも手伝わせ、計7体の鎧が『流体金属』に浸け込まれた。

「『 複写(コピー) 』『 複写(コピー) 』『 複写(コピー) 』……」

仁(の 分身人形(ドッペル) )は、ジックスたちを押しのけてまでも止めることはあきらめ、ことの成り行きを見守ることにした。

「『起きろ』」

「『起きろ』」

「『起きろ』」

……

そして、計10体のゴーレムが立ち並んだ。

うち1体はガンノが連れてきたゴーレムで、1体は『ファントム』、残る8体は『ファントム』のコピーである。が、最早どれがどれやらわからなくなっていた。

「どうです、陛下。この勇姿!」

自慢げなジックス。

だが、セザール王は冷たく言い放つ。

「……残念だよ、ジックス、ガンノ。君たちはこの国には必要ない人材のようだ」

「な、なぜですか、陛下!」

「……協調性の欠片もなく、人の話を聞かない。自分の考えを他人に押しつけ、顧みることをしない。技術を持っていても、それを生かそうという意志がない。これでは、一国の王としては、家臣に加えることはできないな」

「……」

「……」

ジックスもガンノも無言のまま拳をわななかせながら握り締めている。

「……ならば」

顔を上げたジックスの目は血走っていた。

「我々だけで復讐を行うまで!!」

* * *

仁は、蓬莱島研究所の司令室で一部始終を見ていた。

「やっぱり、ジックスとガンノ……特にジックスはおかしいぞ」

『 御主人様(マイロード) の仰る通りですね。情緒不安定といいますか、感情を制御できていないようです』

「……精神魔法?」

形のよい眉をひそめてエルザが呟いた。

「その可能性もあるな。誰が、いつ、何のために施したのかわからないが」

精神魔法の特性は、意志の力、つまり理性を弱めて傀儡にすることにある。つまり、特定の感情を抑えられなくなるのだ。

かつて『 統一党(ユニファイラー) 』が施していた精神魔法の場合は、特に『アドリアナ・バルボラ・ツェツィ』に関する物事で感情が爆発する特徴があった。

画面内では、ジックスが『我々だけで復讐を行うまで』と言い放ったところである。

「あの馬鹿!」

思わず仁は画面に向かって叫んでしまった。

セザール王や第一軍事省長官ラゲード、第一技術省長官ラタントといった要人も一緒にいる場所でそんな発言をしたなら、最早取り返しはつかないだろう。

「『スチュワード』だけでは厳しいかもな」

「お父さま、私が行きます」

仁の呟きに礼子が即反応した。

「それが一番いいか」

仁は礼子に『 魔法無効器(マジックキャンセラー) 』と『桃花』を持たせ、送り出した。

* * *

『転送機』により、練兵場付近に礼子は転移。そこから走り出せば、瞬く間に現場に到着する。

『コンロン3』に待機していて、今駆けつけてきた風を装った。

「お手伝いに来ました!」

現場では、暴れようとする8体の 鈍色(にびいろ) ゴーレムを、『スチュワード』が1体で相手取っているところだった。

残った2体はジックスとガンノを守っている。

とはいえ、8対1では、さすがの『スチュワード』も少々手を焼いていた。

そこへ礼子の参戦である。

「礼子、頼むぞ!」

仁(の 分身人形(ドッペル) )が礼子に声を掛ける。

「はい!」

礼子はスチュワードから最も遠いゴーレム目掛け、『 魔法無効器(マジックキャンセラー) 』を放射した。

だが、その波動を受けているはずなのに、 鈍色(にびいろ) ゴーレムは停止しない。

「……仕方ないですね」

礼子は背中の『桃花』を抜き放った。