軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30-23 準決勝1戦目

「つまり、この鎧に液体金属を染み込ませて、その液体金属に『 流体変形式動力(フルードフォームドライブ) 』を使う、ということ?」

エルザの言葉に、仁は嬉しそうな様子で頷いた。

「そのとおり。とはいえ俺の推測だけどな」

だが、仁としてもそれほど的外れではないと思っている。

「で、だ」

さらに言葉を続ける仁。

「最初にエゲレア王国で『 懐古党(ノスタルギア) 』の警備ゴーレムを襲った奴はこれとは違うと思う」

「……重さが違う?」

「さすがだ、エルザ。そうなんだよ。鎧の中を液体金属で満たしていれば、あのくらいの重さになるかもしれないが、この鎧に染み込んだくらいでは、せいぜいが普通のゴーレムと同等か、少し重い程度だ」

『仰る通りですね、 御主人様(マイロード) 。私も今、 御主人様(マイロード) の推論を検証してみましたが、そのとおりだと思います』

老君も同意してくれた。

「となると、エゲレア王国で 懐古党(ノスタルギア) の警備ゴーレムに喧嘩を売ったゴーレムと、今 ゴーレム競技(ゴンペテイション) に飛び入り参加したゴーレムは別物で間違いなさそうだな」

『はい。2種類のゴーレムが、同じ組織・勢力もしくは人物に所属している可能性は半々くらいです』

「だが、それぞれ別の所属だとしても、やっていることは動作パターンの充実だな」

どちらも非合法……『ファントム』の方は認められたから違法ではなくなっている……に動いているが、やり方は別にして、その目的は一緒であるようだ。

「競争、してる?」

「え? エルザ、今、なんて?」

「競争。2種類のゴーレムは、それぞれのやり方で、どっちがより強くなれるか競争しているのかと、思って」

「ふうん……」

その可能性はまったく考えていなかったため、仁はエルザの発想に感心した。

「だとすると、ジックスという奴ではなく、今、気を失っている奴がジダンのところから技術を盗んだ男なのかもな」

「……それでも、その『強くなってどうするのか』という答えは出ない、けど」

「そうなんだよな」

仁にしてみれば、単に研究者として強いゴーレムを作り出したいなら、やり方はもっとあると思っている。

ジックスたちのやり方は、後々のことを考えていない。自ら敵を作り出してしまっているからだ。

「とりあえず、その『樽』の中身が気になるな……」

どんな『流体金属』なのかが非常に気になる仁であった。

* * *

一方、セルロア王国の ゴーレム競技(ゴンペテイション) 会場、その救護室。

「うう……ここは?」

気を失った男が目を覚ました。

「ここは医務室だよ」

付き添っていた治癒師がそう告げると、男は目を見開いた。

「…… ゴーレム競技(ゴンペテイション) はどうなっている?」

「ん? 見物に来たのか? まもなく午後の部が始まる頃だ」

その時、大歓声が聞こえてきた。

「おお、始まったな」

すると男は小さく溜め息をつく。

「……間に合ったか……」

* * *

〈さあ皆様、お待たせしました! ゴーレム競技(ゴンペテイション) 最終戦! 泣いても笑ってもこれが最後です!〉

〈準決勝2戦と決勝の計3戦が行われ、ゴーレムの頂点が決まるわけですね。楽しみです〉

貴賓席にいる貴族たちも興味津々である。高得点を出した製作者を囲い込もうと考えているのだろう。

〈解説のトルフさん、今回は盛り上がりましたね〉

〈そうですねエムシィさん。これは来年以降も期待できますね〉

ショウロ皇国での『 魔導人形競技(ゴンクレンツ) 』は不定期だが、ゴーレム技術・ゴーレム産業が発達したセルロア王国では毎年行ってもやっていけるだろう。

〈さて模擬戦本戦、準決勝第1試合は……1番、『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』対、40番『 古き戦士(アルトクリーガー) 』です!〉

一際大きな歓声が上がった。

〈両者、試合場に上がりました。この試合場は10メートル四方の壇となっておりまして、ここから落ちたらその時点で負けとなります〉

〈一撃を受ける以外にも負けとなる要素があると言うことですね。因みに、この壇は石造りでして、何人もの魔導士によって『 強靱化(タフン) 』が掛けられておりますので、ゴーレムが戦ってもそうそう破損はしないということです〉

〈トルフさん、ありがとうございます。……さあいよいよ始まります。武器は双方グレートソードです!〉

〈大剣というのは見ているだけで威圧感がありますね。楽しみな一戦です〉

『始め!』

開始の合図が掛かるが、双方睨み合い、動き出さない。

同じようなタイプ同士のため、様子見をしているようだ。

〈動きませんね〉

〈いえ、見てください。2体の距離がわずかずつですが詰まっています。動いているんですよ〉

解説の言葉どおり、3メートルほどあった2体の距離が、今では2.5メートル程になり、さらに少しずつ詰まっていく。

じりじりと、それこそ蟻の歩みほどの遅さで、2体は距離を詰めていたのだ。

そしてその距離が2メートルを切った時。

かん、という木剣と木剣がぶつかり合う音が響いた。

2体同時にグレートソードを振り下ろし、それが空中で交差していたのである。

それから2体は動き出す。

〈すごい! すごい戦いです!〉

グレートソードを、まるでショートソードのように振り回し、切り結ぶ2体。

その剣技は互角に見えた。

だが。

当初互角に見えていた戦いは、少しずつ『 古き戦士(アルトクリーガー) 』が押していく。

〈解説のトルフさん、これはどういうことでしょうか?〉

〈はい。技術的には同等ですが、力の差が出たようですね〉

〈力、ですか?〉

〈そうです。技術が同じでも、『 古き戦士(アルトクリーガー) 』の方が力が少し上だったのでしょう〉

その様子を、仁の『 分身人形(ドッペル) 』は、審査員席で観察していた。

もちろん操作しているのは老君だ。

(『 御主人様(マイロード) が見抜かれたように、『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』は限られたパワーソースを自由に配分できるようですね。ですが、その切り替え速度はあまり速くないようです』)

この戦いは、総合的な力が必要となる。腕、腰、脚、それぞれに力がなければ押し負ける。

『 魔力貯蔵庫(マナタンク) 』からの出力には限りがあるので、剣を振るときには腕に、剣と剣がぶつかり合ったときには腰と脚に、踏み込むときには脚に、と限りある出力を振り分けていた『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』であったが、その切り替え速度にも限界があったのだ。

そのため、仕方なく出力配分を平均的に固定してしまった結果、『 古き戦士(アルトクリーガー) 』に総合力で押し負ける事態となったのである。

〈互角と見えた戦いでしたが、次第に『 古き戦士(アルトクリーガー) 』が押しています!〉

最早、『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』は防戦一方だった。

そしてついに。

〈ああっ! 『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』、剣を弾かれた! 大きな隙ができた! そこに『 古き戦士(アルトクリーガー) 』、一撃を叩き込みました!〉

上方に跳ね上げた剣。当然胴はがら空きになる。そこへさらに一歩踏み込んだ『 古き戦士(アルトクリーガー) 』は胴を薙ぐ。

『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』の防具には、横一線にくっきりと線が浮かび上がっていた。

『それまで!』

審判の声が響く。

『勝者、40番『 古き戦士(アルトクリーガー) 』!!』

大きな歓声と、万雷の拍手が響き渡った。

〈トルフさん、見事な戦いでしたね〉

〈はい、エムシィさん。同じようなタイプ同士だったので、最後は基本性能の差が出ましたね〉

いよいよ次は『ファントム』の番である。

『 分身人形(ドッペル) 』を操っている老君は、直接見てもらおうと、仁を呼んだ。

「いよいよか。……呼んでくれてありがとう」

工房から司令室へとやって来た仁は、老君に礼を言った。そして正面の 魔導投影窓(マジックスクリーン) を見つめる。

そこでは今しも、41番『ファントム』と、2番『ザーベラー』の戦いが始まろうとしていた。