作品タイトル不明
30-13 ゴーレム競技開幕
〈それではいよいよ、『 ゴーレム競技(ゴンペテイション) 』開幕です! 私は司会のエムサストン、通称エムシィと申します〉
〈解説のトルフェデスト、通称トルフです〉
〈トルフさん、今日はよろしくお願いします〉
〈はい、こちらこそ〉
〈我が国における最初の『 ゴーレム競技(ゴンペテイション) 』と言うことですので、簡単に説明していただけますか〉
〈わかりました。一言で言えば、ゴーレムを競わせて優劣をつける、というものです。そしてその内容、つまり競技についてを説明させていただきます〉
〈お願いします〉
〈大別して、身体能力、つまり力や速さを競うものと、動作の精密さを競うものに分けられます。前者は短距離走や 錘(おもり) 投げですね。そして後者はコイン積みなどですね〉
〈わかりやすい例えをありがとうございます〉
〈最後に、模擬戦というのもありますが、これは説明はいらないでしょうね〉
このようにして、競技の説明が行われていった。
〈では皆様、具体的な競技の説明をいたします。詳細は競技前にまた行うことにしまして、まずは概要です。トルフさん、お願いできますか?〉
〈トルフです。まずは陸上競技としてお馴染み、短距離走。それから高跳び。そして槍投げです〉
〈わかりやすいですね。それだけで大体の内容が推測できます〉
ショウロ皇国では錘を投げたが、ここでは槍投げとなったようである。
〈それから精密動作競技ですが……〉
〈先程のコイン積みのようなものですね〉
〈そうですが、コイン積みでは絵的に見栄えがしませんので、『的当て』となっていますね〉
〈なるほど、的を目掛けて何かを投げて当てることを競うのですね〉
〈そのとおりです〉
仁もそれを聞いて面白そうだな、と思った。
〈そこまでが本日行われ、明日が模擬戦となります〉
〈よくわかりました。ありがとうございます。……さて、出場者の準備もできたようです。製作者もしくは所有者とそのゴーレム、総勢40組。それぞれ番号を振ったゼッケンをつけてもらっています〉
〈番号は申し込み順となっているようですね〉
〈今回は招待選手もいらっしゃいます。それでは、選手の皆さんを拍手でお迎え下さい!〉
控え室の扉が開き、ゼッケン1を付けたゴーレムと、その所有者(もしくは製作者)が出てきた。それに続き、ゼッケン2、3、と続いて出てくる。
〈ゼッケン1、ショウロ皇国からの招待選手です。エーリッヒ・ジフロ氏! ゴーレムは『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』!〉
拍手と歓声が沸く。細マッチョ、といった体型のゴーレムは、洗練された感がある。
(エーリッヒ・ジフロ? ……知らないが、あのゴーレムはなかなかのものだ)
とは仁の感想である。
〈ゼッケン2、エゲレア王国からの招待選手です。ヤルイダーレ氏、ゴーレムは『ザーベラー』!〉
(確か、ゴーレム 園遊会(パーティー) の時、歌を披露した『ズィンゲル』を作った 魔法工作士(マギクラフトマン) だっけ。あんな人だったんだ)
歌うゴーレムということで印象深かったため、仁は名前を覚えていたのである。が、当時は財務相ブラオロートの依頼で作った、という情報のみで、どういう人物かはわからず仕舞いだったが、はからずもこのような場所で知ることができたのであった。
〈ゼッケン3からは我が国の選手です……〉
選手の紹介が続くが、仁としては一々全部覚えていられない。そもそももらった資料に選手の一覧表があるので、必要ならそれを見ればいいからだ。
〈……40番、かつて『アルファ』を名乗ったこともあるドナルド・カロー氏、『 古き戦士(アルトクリーガー) 』! 以上40組です!〉
(ジン兄、あれは見たことある気が、する)
(そうだろうな)
そう、『 懐古党(ノスタルギア) 』のナンバー2、ドナルドである。
『 懐古党(ノスタルギア) 』のバックアップを受け、個人名義で出場していたのである。
(……納得。ちょっと楽しみ)
(そうだな)
仁とエルザも、知らない相手ではなし、少し期待を抱いたのであった。
そして、40組の紹介が終わり、いよいよ競技開始である。
* * *
〈短距離走は500mを走ってその記録を競います!〉
〈10組ずつ、4回の予選を行い、上位2組が決勝進出できます〉
解説の説明を聞きながら、仁は以前、礼子は2秒を切り、マルカスのゴーレムは12秒くらい、その他のゴーレムは20秒超位だったな、などと思い出していた。
〈3、2、1、スタート!〉
〈なかなか速いですね。皆さん優秀です〉
1組目のトップはエーリッヒ・ジフロの『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』でおよそ10秒。2位は僅差でヤルイダーレの『ザーベラー』であった。
(やっぱり、あのゴーレムは、パワーの配分を変えられるようだな)
『あのゴーレム』というのは『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』のことである。
仁の目は、その特徴を見抜いていた。
おそらくパワーソースは 魔力貯蔵庫(マナタンク) 、その限られた出力を自由に割り振ることで、さまざまなシーンに即対応できるようになっていると仁は考えた。
(いいアイデアだな……)
今回は脚力に割り振ったのだろう。
体操選手に比べ、陸上選手、特にランナーの腕は細い、というようなものだろうか。
比して、ヤルイダーレの『ザーベラー』は、その『魔術師』という名のように、パワー型ではないのだろう。
そんなことを考えていたら、第2組が走り終えていた。特に見るものはない、と仁は感じていたが、観客が沸いているところを見ると、16番、『 蒼天の騎士(ブルーナイト) 』というゴーレムは人気があるのだろう。
(格好は騎士っぽくていいけど、パワーが不足している上に配分も悪いな……)
仁の評価は、本日の中では中の下である。
そして第3戦が終わり、第4戦。
(おっ、いよいよか)
〈……40番、ドナルド・カロー氏、『 古き戦士(アルトクリーガー) 』!〉
〈ドナルド・カロー氏は、先日引退された『アルファ』でしたからね。これは期待できますよ〉
〈年齢を理由に、王権が交代した際、後進に道を譲ると言って引退したとはいえ、元『アルファ』のドナルド・カロー氏、期待大ですね〉
仁も、ドナルドのゴーレムに注目した。
パワーのバランスもよく、動きもいい。『 統一党(ユニファイラー) 』時代よりさらに洗練された感がある。
〈……スタート!〉
(……やっぱりな)
〈おおっ! 『 古き戦士(アルトクリーガー) 』、やはり速い!〉
〈元アルファの実力これにあり、といったところですね〉
『 古き戦士(アルトクリーガー) 』は他9体のゴーレムに圧倒的な差をつけ、7秒でゴールインしたのであった。
そしていよいよ決勝戦となる。
〈やはり1番、2番、16番、35番、40番に期待ですね!〉
〈そうですね。招待選手のレベルが高いのは当然として、我が国にも16番『 蒼天の騎士(ブルーナイト) 』や35番『 鉄戦士(アイアンウォリアー) 』、そしてなんといっても『 古き戦士(アルトクリーガー) 』がいますからね〉
〈決勝戦は10秒前後の争いとなるでしょう。期待大です!〉
そしてスタートのカウントダウンが始まった。
〈5……4……3……2……1……〉
「おっ?」
〈……スタート!〉
競技場の外から、黒い影が駆けてきた。
〈なんだ、どうした!? これはなんということだ! 飛び入りで謎のゴーレムが参戦! しかも速い速い!〉
どこからともなく現れた謎のゴーレムは、一足先に走り出していた8体のゴーレムをゴボウ抜きにしてゴールイン。
測定はしていないが、5秒そこそこの記録であろう。
〈い、1位は飛び入り参加のゴーレム! 2位は40番、ドナルド・カロー氏、『 古き戦士(アルトクリーガー) 』、3位はヤルイダーレ氏の『ザーベラー』、4位は1番、エーリッヒ・ジフロ氏の『 鋼鉄騎士(シュタールリッター) 』です!〉
司会も戸惑っている。2位の『 古き戦士(アルトクリーガー) 』も予選よりも速く走り、6秒くらいのタイムだったことを考えると、謎のゴーレムの速さは際立っていた。
(あれは……!)
飛び入りのゴーレムは、まず間違いなく、エゲレア王国で報告された謎のゴーレムであった。