作品タイトル不明
29-10 会議終了
最終的に、文化交流は各国持ち回りで行うこととなった。
最初は年1回。だがこれが有意義とわかれば回数は増やしていくことになるだろう。
内容も特に決めず、5日間ほど共に過ごし、開催地を巡りながらいろいろと意見交換をする、ということで落ち着いた。
そうなると問題は開催地である。
「最初はどこの国で行うか、くじ引きはどうかな?」
「いいですな」
参加者全員が賛成したので、司会役であるデウス・エクス・マキナが仁に向かって言った。
「では、ジン殿にくじを作ってもらいましょう」
「わかりました」
どんなくじにするか、仁は少しだけ考えたが、簡単にできて誰にも結果がすぐにわかるものにすることにした。
まず、木紙を用意し、適当な大きさに切る。
枚数は6枚。そこに今回参加した国の名を書き、4つに畳んだ。
ここまで、衆目の中で行っている。
これを箱に入れ、蓋をしてよく振る。
「さて、これを、これから自分が取り出します。念のため目隠しもしましょう」
仁はマキナに目隠しをしてもらった。
「6枚全部を順に取り出します。取り出した順番が持ち回りの順番ということで」
「うむ、よろしい」
「異議なし」
「頼みましたぞ」
こうして仁はくじを作り、引いて見せた。結果を読み上げるのはマキナである。
「1番目はクライン王国ですね」
「おお!」
「2番目は……ショウロ皇国です」
次々にくじが引かれる。
3番目はフランツ王国、4番目はエリアス王国。5番目はエゲレア王国で、最後はセルロア王国であった。
「それでは、くじの結果を尊重し、第1回目の『文化交流会』はクライン王国で行うことになりました」
「栄誉ある1回目を開催できることになり、精一杯務めようと思います。期日や場所が決まり次第、ご連絡を差し上げます」
クライン王国の代表としてアーサー第2王子が簡単に挨拶を述べた。
仁としても、今のクライン王国なら、あまり大勢集まる交流会は予算的に厳しいだろうから、一国あたり2名でよかったのでは、などと思っていたりする。
「時刻は午後4時少し前ですが、会議はこれで終了といたしましょう。皆さん、お疲れ様でした」
「おお、お疲れ」
「有意義な2日間でしたね」
「あっという間だったな」
そこへ仁が声を掛ける。
「明日、午前9時頃、飛行船で順次お国へお送りしますが、それでよろしいでしょうか?」
「おお、それで結構。手間を掛けるがよろしく頼む」
真っ先にセルロア王国のセザール王が返事をした。
「ええ、『崑崙君』。お願いします」
エリアス王国のフィレンツィアーノ侯爵も続いて返事を。
「うむ、よろしくお願いする」
そして、フランツ王国国王ロターロ、エゲレア王国のボイド・ノイス・ガルエリ宰相も返事をした。
「ショウロ皇国、クライン王国の方々はどうされますか?」
返事のなかった両国代表に尋ねると、
「予備日が1日あるので、できればこちらでゆっくりしていきたい」
との答えが返ってきた。
それを聞いた他国代表が皆、
「そ、それなら我々も少しのんびりしていきたいと思う」
と言い出す始末。皆、ここ崑崙島が気に入ったようだ。
「わかりました。明日改めてお尋ねしましょう」
仁が答えれば、マキナから司会として最後の発言が。
「今回は、会議と言うよりも、会議のための議題決めという形になりましたが、次回以降はしっかりと議論を重ねたいと思います。で、次回はもう一度、ここ崑崙島で行う、でよろしいでしょうか? 期日は一年後くらいということで」
「うむ、いずれ各国持ち回りにしたいものだな」
「もう少し頻繁に行いたいですが、最初から無理は禁物ですね」
「我が国はそれで結構」
と、同意が返ってきた。
これで要件は全て終えたということで仁が締めの言葉を述べる。
「これで第1回世界会議を終了とさせていただきます。参加ありがとうございました」
立ち上がって礼をすると、出席者全員から拍手が贈られた。
「では、これにて解散と致します。まだ夕食までには時間がありますので、お好きなようにお過ごしいただければと思います」
仁の言葉が終わると、参加者たちは立ち上がる。それぞれ伸びをしたり、肩を回したり、首を動かしたり。
少々疲れたようだが、その顔は晴れやかであった。
彼等はゴーレムメイドに案内されてそれぞれの部屋へと引き上げていった。
* * *
「ジン!」
会議室を出た仁に声が掛かった。
「会議が済むまでは、と我慢しておった」
クライン王国のリースヒェン王女である。
「会議、お疲れ様」
と、エゲレア王国のアーネスト王子。
2人とも、仁主宰の世界会議が終了するまで、待っていたようだ。
昨夜遊びに来なかったな、と仁は思っていたのだが、その理由が会議が終了するまでは公の時間だから、と自重してくれていたようだ。
「改めて、久しぶりですね」
昨日顔を合わせてはいるが、こうしてゆっくり話すのは本当に久しぶりだ。
「うん、待ち遠しかったよ」
歩きながらの会話。護衛として付いているのは、アーネストにはライラ・ソリュース、リースヒェン王女にはグロリア・オールスタットである。
「ライラも久しぶり。元気そうだね」
「はい、おかげさまで 王宮隠密侍女隊(ロイヤルシークレットメイド) から、アーネスト様付きの護衛兼侍女となりました」
にっこりと微笑むライラ。
「グロリアさんもお疲れ様です」
「ありがとう」
昨夜話をしているので『久しぶり』でもない。
そのまま仁たちは1階へ下りた。礼子は黙ってそんな一行の最後尾を付いてくる。
「ジン、少し時間を取ってもらえるか?」
「ええ、いいですよ」
会議が終わるまで我慢していたという、その気遣いを酌んで、仁は2人の相手をすることにした。
手にしていた幾つかの書類は、そばにいたゴーレムメイドに手渡し、保管するように言いつけた。
そして仁たちは一旦『翡翠館』の外へ出た。
時刻は午後4時を少し回った頃、夏の日はまだまだ高い。
「じゃあ、『五常閣』へ行きましょうかね」
五常閣の方は、首脳陣には紹介したが、一部の護衛や使用人たちには紹介しておらず、アーネスト王子とリースヒェン王女はまだレファを見てはいなかったのである。
「おお、楽しみじゃ」
「うん、いいね」
小径を抜けて五常閣へ向かう途中も話が弾む。
「ジン、支配人役の『ロル』というのは、 妾(わらわ) の所にいるティアと同型じゃな?」
「よくわかりましたね」
「うむ、任せよ」
薄い胸を反らすリースヒェン王女。
「五常閣には『レファ』という 自動人形(オートマタ) がいますよ」
「おお、そうじゃったか! 早く会いたいのう」
リースヒェン王女の歩く速度が速くなった。
「姫殿下、急がれると危ないですよ」
さっとばかりにグロリアが歩み出てリースヒェンに並んだ。
「うむ、わかっておるのじゃが……」
だが、小径はすぐに尽き、広々とした庭園、『五常園』に到着した。
仁は五常閣の玄関を指で差し示す。
「ほら、もう着きました。あそこで出迎えているのがレファです」