作品タイトル不明
29-08 二日目
グロリアの来訪以外、特に何も起こることはなく、日は落ち、平穏な夜の時間が流れ、朝が来る。
世界会議2日目である。
時刻は昨日と同じく午前9時、場所も同じ大会議室。
「それでは『世界会議』、2日目を始めることにしましょう」
司会役のデウス・エクス・マキナが宣言を行った。
「本日の議題は、こちらでは特に決めておりません。何か討議したい議題があれば挙手をして提案して下さい」
「では、私から一つ」
真っ先に手を上げたのはフランツ王国のロターロ・ド・ラファイエット国王である。
「マキナ殿が出席されているのは幸いだ」
そういうと一同を見回した。
「国という括りを越えた軍……というか、組織を作ったらどうか、という提案をしたく思う」
これに反応したのはクライン王国のアーサー王子。
「なるほど、犯罪者には国境などあまり意味がないですからね」
続いて各国首脳陣が反応を見せる。
「ほほう」
「なるほどなるほど」
「……そういうことですか」
次第に参加者たちの顔に理解の色が浮かぶ。
それを見計らったのか、アーサー王子が再度口を開いた。
「犯罪者には国とか国境という縛りは意味をなさない。ならば、そういう犯罪者を取り締まる『組織』も、そうあるべきだ、ということですね」
国王ロターロは大きく頷いてみせた。
「さすがはアーサー殿下。そのとおりです」
(国際警察……ともちょっと違うか)
意見を聞いていた仁は、昔を思い出していた。
施設で見たTVアニメで、インターポールの警部が世界的な怪盗を追いかけていた。主人公は怪盗の方だが。
(ICPO……ともいったっけ)
とはいえ、今彼等が議論しているのは、もう少し武力を持つ組織のようだ。かつての『 統一党(ユニファイラー) 』のような犯罪組織にも武力で対抗できるような。
だから『マキナが出席している』ことが幸いだったのだろう。
(……とすると国際救助隊の方が……)
などと仁が考えていたら、
「ジン殿はどう考えますか?」
と、お鉢が回ってきた。
「結構なことだと思います。警備に拘らず、学問なども教えられたら、と思わなくもないですが」
「ほほう」
仁としては、場の雰囲気に流されて、ずっと温めている構想をつい口にしてしまった、といったところ。
「確かに、ジン殿の知識を学ぶことができたら、世界はもっと良くなることでしょうな」
だが、その言葉に被せるように、
「そのためにも、まずはどの国家にも媚びない『世界警備隊』を設立し、運用する必要がありますでしょう」
との、デウス・エクス・マキナの声が響き渡った。
老君のナイスフォローである。
「確かにそうですね。でも、話の上だけでも、そういう理想の『 学舎(まなびや) 』を語るというのは悪いことではないでしょう?」
と、これはショウロ皇国女皇帝。
「確かにそうですね」
と、仁も同じように頷く。
「目指すものをはっきりさせ、その実現のために努力する、というのもまた、為政者の辿るべき道の一つではないでしょうか」
そう締めくくった女皇帝は、もう一度マキナを見て、
「まずはその『世界警備隊』について話し合ってみたいです」
と言う。
「そうですな」
「異議なし」
他の列席者も同意した。
「では、私が仮にと命名した呼称ではありますが……『世界警備隊』について話し合いたいと思います」
司会のマキナが宣言を行った。
「そうなりますと、司会というより議長、ですね」
そんなセリフを言ったマキナに、場の空気が少し緩む。
「まずはその目的、存在意義を決めたいですね」
この言葉を受け、言い出しっぺであるフランツ王国国王、ロターロが発言した。
「それはまず、世界の平和を守るということでしょう」
「いや、確かにそうではありますな」
「自分はいいと思います。まずそれが大前提になるわけですよね」
仁としては、組織の理念としてはいいのではないかと思う。要は旗印のようなものだ。
「ですね。 旗幟(きし) を鮮明にすることは組織の透明化にも繋がります」
アーサー王子も同意した。
「なるほど、そういう意味では、これほどわかりやすい旗印はないですな」
「組織の目的がはっきりわかるわけですからな」
次第に理解の輪が広がっていく。
「それでは、『世界の平和を守る』。これを理念とするのはいいでしょう。では、どのようにして、ということが次に来ると思いますが」
これはセルロア王国国王、セザールの言葉である。
「それが難しいですな」
「左様。だからこそ話し合う必要があるのですよ」
クライン王国の宰相、ダーナーの発言に反応し、セザールが答える。
更に、エリアス王国のフィレンツィアーノ侯爵が発言した。
「力がなければ、何も行えないでしょう。ですが、大きな力を持ったとして、それを誤ったことに使わないというのは誰が保証するのですか?」
「いや、それは国家でも個人でも同じでしょう」
「そのために良識というものがあり、倫理、道徳の教育をする必要があって……」
と、次々に意見が出てくる。
「まずは、小規模なものから始めるのがいいでしょうな」
「組織としては、この『世界会議』の下部組織になるのですかな?」
等の意見も出る。
「独立させた方が動きやすいと思いますがな」
「いざという時に世界会議をしてからでないと動けないというのはさすがにまずいでしょう」
「いかにも」
決まらずとも、いろいろなことを考えていくだけでも意味がある、と、出席者は皆考えているようで、自由な意見が飛び交っていた。
「本部を置く場所としては、やはり大陸の中央部が望ましいと思うのですが」
「一理ありますが、そうすると必然的にセルロア王国付近になりますぞ」
確かに、崑崙島では東の外れにあるので、行動しづらいであろう。
『 統一党(ユニファイラー) 』のこともあるので、それに関しては慎重にならざるを得ないだろう。
「クロゥ砦跡でよければ、使っていただいて構わないのですがな」
「おお、それはよい提案ですな」
かつての『 魔導砦(マギフォートレス) 』、クロゥ砦なら、再整備すればよい拠点になりそうではある。
「あるいは、セルロア王国・ショウロ皇国・フランツ王国の3国間に 聳(そび) える山中、というのも」
「おお、なるほど。ジン殿やマキナ殿なら開発は簡単にやってくれそうですな」
などと言う意見も出た。
更に組織についての意見も飛び交う。
「実績がある方を総帥あるいは顧問とすることで、誤った方向に行かないようにするというのはいかがです?」
フランツ王国国王、ロターロはそう言うとマキナの方を見た。
「現にマキナ殿は、これまで幾度も世界の敵といえる相手を懲らしめてくれている。であれば、総帥に相応しいのではないでしょうか? そして兄弟弟子であるジン殿は顧問として……」
「それは納得できる論拠ではありますな」
だんだん、仁も巻き込まれそうな気配に。
世界会議二日目は盛況である。