作品タイトル不明
28-17 メンバー紹介
「ここが 崑崙島(こんろんとう) か、いいところだな」
芝生の広がる庭から、館を見て感心するクズマ伯爵。
ビーナは2度目であるが、やはり感激しているようだ。
「ああ、懐かしいわね。あの時はエルザ……と一緒だったけど」
そんな2人に、仁は話しかける。
「さて、これで終わりじゃないんだ。世界会議のために、新しく建てたものがあるんだよ」
「え? 建てたの?」
「そうさ。詳しい話は後にして、是非見て欲しい」
ということで、『バリアクッションカー』で海岸へと向かう。
「な、な、何これえ!」
「『バリアクッションカー』っていうんだ。『結界』を車の下に発生させて車体を浮かせているんだよ」
仁が説明するが、ビーナはそれでも納得しない。
「それじゃあ、浮くことはできても、進めないじゃないの!」
瞬時にそうしたことに思い至るあたり、やはりビーナには才能がある、と仁は思う。
「まあまあ。後でゆっくり、全部説明するから」
と宥めておくに留めたのである。
クズマ伯爵はバリアクッションカーにも驚いていたが、その速度とほとんど揺れない乗り心地にも感心していた。
15分ほどで海岸だ。
「ほら、あれが『翡翠館』だ」
「……」
ビーナは無言。クズマ伯爵は感想を口にしてくれた。
「……文字通り翡翠でできているのか。あまり人気のない石とはいえ、贅沢な使い方だな」
ここアルスでは、翡翠の人気は現代地球ほど高くはない。理由として、こちらでは透明な石が好まれることと、翡翠の産出量が地球より多めであることが挙げられるだろう。
「それから、こちらが『五常閣』だ」
林を抜け、日本庭園へと案内する。
「おお、これは!」
「すごいわ!」
やはりこれには2人とも驚いてくれた。
「庭園は散歩できるようになっていて……」
「この休憩舎は 四阿(あずまや) っていうんだ」
「これは 囲炉裏(いろり) 。まあ、夏は火を入れないけどな」
仁の説明を、2人は目を輝かせながら聞いていたのである。
* * *
『翡翠館』と『五常閣』を案内し終わると、もう午後3時。
途中、翡翠館で昼食を摂り、その感想も聞かせてもらう。
2人からの意見は、非常に参考になり、本番である世界会議に反映させよう、と仁は思った。
「さて、もうじき夕方なわけだが」
五常閣の庭園にある四阿でお茶を飲みながら、仁は口を開いた。
「驚かせてばかりで悪いけど、お2人には、まだ他にも驚かせることがあるんだ」
「ええー……何よ、ジン?」
「ジンがわざわざ言うからには、相当とんでもないことなのかい?」
身構える2人。
「うーん、ある意味とんでもないかもな」
と仁が言えば、
「それならもったいつけないでちゃっちゃと話しちゃってよ!」
「ビーナの言うとおりだな。さあ、聞かせてもらおう」
と、2人は聞きたそうに身を乗り出してきた。
「それじゃあ、言おう。……俺の本当の拠点はここじゃあないんだ」
「え?」
「ここから更に東の海にある『蓬莱島』が俺の本当の拠点なんだ」
「ほうらいとう?」
仁は頷いた。
「ああ。今からそこへ、2人を招待しようと思う。来てくれるかい?」
「もちろんよ!」
間髪入れず、ビーナは返事をした。
「ああ、お邪魔させていただこう」
クズマ伯爵も大きく頷いた。
「よし、それじゃあ、行こう」
仁は2人を五常閣地下に設置した 転移門(ワープゲート) へと案内した。
そして蓬莱島へ移動。
「こ、ここは!?」
「こ、これ、全部が 転移門(ワープゲート) なの!?」
今度は直接ではなく『しんかい』経由。
受け入れの 転移門(ワープゲート) 、送り出しの 転移門(ワープゲート) がずらりと並ぶ壮観さにまず度肝を抜かれた2人。
「ここは万が一の侵入者対策のために設置した中継基地なんだ、蓬莱島へはもう一度転移するんだよ」
そして仁、礼子、ビーナ、クズマ伯爵の4人は蓬莱島へと移動した。
「さあ、着いた」
そして階段を上がり、研究所の外へ出て、
「ようこそ、蓬莱島へ」
定番のセリフである。
研究所を見た2人は驚いている。
「ジン、こ、ここがそうなの?」
「ああ。『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』の拠点だよ」
「来たか、ルイス」
そこへラインハルトが声を掛けた。
「ラインハルト、君か!」
「ああ。悪いが、一足先に、ジンからここに招いてもらっていたんだ」
「いや、それはいいが……」
クズマ伯爵は、ラインハルトの後ろに居並ぶ面々が気になっていた。
「紹介しよう。みんな、『仁ファミリー』のメンバーだよ。……エルザは知っているな」
まずエルザが会釈した。
「エルザの実の母君のミーネ」
ミーネも会釈をする。
「サキ・エッシェンバッハ。その隣がサキの父上のトア・エッシェンバッハ。父子共々、ショウロ皇国の錬金術師だ」
サキとトアが揃って会釈をする。
「ステアリーナは知っているよな? 今はセルロア王国から亡命して、トアさんと結婚しているんだ」
「お久しぶりですわね、お二方」
ステアリーナも会釈をした。
「そのお隣がステアリーナの友人で語り部のヴィヴィアン。やっぱりセルロア王国からショウロ皇国に亡命している」
「ヴィヴィアンです」
「さて、こちらが、エリアス王国の 造船工(シップライト) 、マルシアとその父上のロドリゴさんだ」
「よろしく」
2人も会釈をした。
「そして、ラインハルトの奥方の……」
「ベルチェ・ランドル・フォン・スカーレットと申します」
ベルチェが軽く頭を下げた。お腹が大きいので深いお辞儀やカーテシーはやめさせているのだ。
「で、こちらが……」
「エゲレア王国伯爵、ルイス・ウルツ・クズマです」
「つ、妻のビーナ・ラウフ・クズマです」
2人も自己紹介をし、仁も、一番の秘密である、己の出自について説明を始めたのである。
「2人には話しておくことがあるんだ。俺は……」
ビーナとクズマ伯爵は、ただ黙って耳を傾けるしかなかったのである。