軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28-15 招待状

「ほう、世界会議ですと?」

6月22日、エゲレア王国・エリアス王国・クライン王国・フランツ王国の順に、世界会議の招待状が届いた。

仁が出来る礼を尽くしつつ、『コンロン3』で訪問して回ったのである。

一応、という但し書きが付くが。

「興味深い。我がエゲレア王国からはボイド・ノルス・ガルエリ宰相とケリヒドーレ魔法相が出席させてもらう」

「うむ、承知した。エリアス王国からは、ゴドファー侯爵とドミニク・ド・ザウス・フィレンツィアーノ侯爵が出席する」

「出席させてもらおう。アーサー第2王子とパウエル・ダーナー・ハドソン宰相が伺うことになろう」

「喜んで出席する。私自身と、アーダルク・ド・ヒーブル宰相が伺おう」

と、各国共、非常に好意的な返事をしてくれたのである。

これは前日夕刻の『 魔素通話器(マナフォン) 』による定時連絡で、ショウロ皇国女皇帝とセルロア王国国王が説得してくれたことも大きな要因となっていた。

他国が出席するということを聞くと、乗り遅れてはならないという心理がうまく働いた結果といえよう。

そしてもちろん、セルロア王国からはセザール国王と、第一技術省長官ラタントが。ショウロ皇国からは女皇帝その人と、デガウズ・フルト・フォン・マニシュラス魔法技術相が参加表明を出した。

この他、護衛と使用人に関しては検討して返答する、ということであった。

こうした結論は、翌日には仁の元にもたらされた。

「そうか、まずはよかった」

「ジン兄、おめでとう」

「ありがとう。だけど、まだ終わったわけじゃない。これからだな」

世界会議までにはまだ日がある。仁はそのための下準備をしていこうと思っていたのである。

* * *

「奥様、これでよろしかったでしょうか?」

出入りの商人が 魔結晶(マギクリスタル) と 魔石(マギストーン) 、それに青銅のインゴットを並べていく。

「ええ、それでいいわ。ご苦労様」

奥様と呼ばれた女性は満足そうな笑みを浮かべた。

「さて、これでまた仕事ができるわね」

ここは、庭に建てられた専用の工房だ。

「ええと、予定としてはライター30個と温水器10機、それに大型冷蔵庫3台、か」

女性の名前はビーナ・ラウフ・クズマ。 伯爵夫人(コンテッサ) である。

平民の 魔法工作士(マギクラフトマン) から伯爵に見出されて奥方になった彼女は、一般庶民からの人気が高かった。

因みに、貴族の雅号である『ラウフ』は、ブルウ公爵から賜ったものである。

「大変そうだな、手伝おうか」

「ううん、これくらい、いつものことよ」

「そっか。じゃあ、ここで見させてもらうよ」

「うん、見てなさい……って、えええ!? ジン!?」

「やあ、ビーナ、久しぶり」

ビーナの目の前に、仁が立っていた。礼子を伴って。

「ひ、久しぶりじゃないわよ! どうしてジンがここにいるの?」

いるはずのない人物が目の前に現れたので慌てるビーナ。仁はそんなビーナを宥める。

「 転移門(ワープゲート) で来たんだよ」

「そ、そういうことを聞いてるんじゃないわよっ!」

「落ち着け。伯爵夫人になっても変わらないな」

「ビーナ、彼を連れて来たのは私だよ」

「あ、あなた?」

そこへクズマ伯爵が現れた。

「……と、いうわけさ」

ビーナの工房の中で、仁はビーナと伯爵に事情を説明した。

「ふむ、世界会議、か」

「そうです。近いうちにこちらにも連絡が入ると思いますよ」

仁の言葉にクズマ伯爵は、

「ジン殿、いや、『崑崙君』。貴殿はもう、私よりも格が上なのだし、前にも言ったではないか……そう、ビーナやラインハルトへと同じように話してくれないか?」

と言った。

「分かりま……いや、分かった、そうさせてもらうよ」

仁は頷き、言葉づかいを改めた。以前にもクズマ伯爵からはそう言われていたのだが、久しぶりなので忘れていたのである。

「それで、お2人を崑崙島に個人的に招待しようと思って」

「ほう、それは嬉しい。ビーナから話を聞くたびに、行ってみたいと思っていたのだよ」

「崑崙島! また行けるのね、嬉しいわ!」

2人とも喜んでそれを受けた。

「あ、それからこれ、おみやげだ。……礼子」

「はい」

仁は礼子に持たせた籠を差し出した。

「あっ、ペルシカね! ありがとう!」

招待の話が済み、クズマ伯爵は執務のために屋敷へ戻り、仁はビーナの工房に残った。

「仕事の邪魔してごめんな」

「ううん、いいのよ。ちょっとびっくりしたけど」

「ごめん。驚かせたかったんだ」

そう言われたビーナはちょっと膨れてみせる。

「……もう。でも来てくれて嬉しいわ」

そして、作業に取りかかった。

魔石(マギストーン) を 魔導基板(プレート) に配置し、 魔導式(マギフォーミュラ) を書き込んでいく。

「『 書き込み(ライトイン) 』」

「ライターか。懐かしいな」

かつてビーナがまだ名もない市井の 魔法工作士(マギクラフトマン) で、借金返済に追われていた時、仁の手助けで作り始めた魔導具である。

その時のことを思い出し、仁は懐かしくなった。

「庶民のためになる道具を、か……」

「え?」

「ほら、昔、ビーナが言った言葉じゃないか」

「そうだったかしら?」

「そうさ。……俺も、初心に戻らないとな……」

まだ蓬莱島も開発初期で、この世界にも慣れておらず、仁自身もお金が必要で、いろいろと試行錯誤していた日々。

今では『崑崙君』などと名乗り、各国の要人と面識があるが、仁自身は何も変わっていない。……はずである。

「よし、俺も、手伝うよ。いや、手伝わせてくれ。ほら、あの頃みたいにさ」

「……あの頃みたいに?」

その言葉を聞いて、ビーナは頷いた。

「ええ、それじゃあお願いするわ」

「よしきた」

仁は 魔導基板(プレート) に 魔導式(マギフォーミュラ) を書き込み、ビーナは 魔石(マギストーン) を配置していく。

筐体を仁が作り、組み立てをビーナが行う。

ライター30個と温水器10機はたちまちのうちに完成してしまった。

「ありがと、ジン。さすがね」

「いや、ビーナも腕を上げたじゃないか」

「……ジンに褒めてもらえる日が来るなんて思わなかったわ」

ビーナは笑ってそう言うと、大物の製作に取りかかった。

「でかい冷蔵庫だな。……へえ、2段式か」

「ええ。上の段では氷も作れるのよ。下の段は普通の冷蔵庫ね」

要するに冷凍冷蔵庫である。仁の知るところでは3ドア、4ドアなど、細かく区切られているものが主流であるが、昭和の頃には2ドアタイプが一般的だった。

それをビーナは独力で考えついたのである。

やはりビーナは生活に根付いた魔導具を作るのに向いているんだな、と思った仁であった。