軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

05-09 vsゴーレム

賊の首領は魔導士だった。

ゆえに、前に出て戦うことはせず、配下をうまく配置して仕掛けたのだ。

狙うは貴族の娘。容姿に秀で、魔法も使うという。とある筋から依頼された獲物だった。

上手いことに、ゴーレムを使う従兄の貴族は別行動をしているという。絶好の機会であった。

正面から狙うと見せかけ、背後に手練れ2名を配置。正面の配下を倒した時に生じる油断、それを突いて娘をさらう計画。

正面の配下は捨て駒。魔法で操り人形にした食いつめ者、どうなろうと知ったことではない。

だが、その策も易々と打ち砕かれた。

残った戦力と言えば、以前謎の男から譲られたゴーレム。

無償で譲られたそのゴーレムは、術者の魔力と引き替えに、とてつもない威力を発揮した。

過去、試しにと思って使った時、1中隊をあっという間に皆殺しにしてしまった。自身は無傷で。

以来、このゴーレムは賊の首領にとって最後の切り札となったのである。

* * *

残った賊は魔導士らしかった。

「 我が魔力と引き替えに(エクスチェンジ・フォア・マイ・オド) 」

手に持った赤ん坊の頭ほどもある透明な玉。それが輝く。

「『 来たれ(サモン) 』『 従え(フォロウ) 』『 戦え(アタック) 』」

そしてその玉を頭上に掲げる、それと同時に、賊の背後から巨大な影が姿を現した。

「あれは……ゴーレム!」

執事のアドバーグが驚いた声をあげた。まさか賊がゴーレムを持っていようとは思わなかったのだ。

「あのゴーレムは!?」

仁が驚きの声をあげる。

「ジン君、知ってるの?」

エルザはミーネを庇いながら、仁の発した言葉を聞き、そんな問いを投げかけた。

「ああ、以前、クライン王国で似たゴーレムを見たことがある。しかし、あれは……」

そのゴーレムは、トカ村近くで遭遇し、ゴンとゲンの原型となったそれより、2倍は巨大であった。

身長は4メートル、表面は銀灰色に鈍く光り、禍々しい雰囲気を漂わせていた。

「エルザ、3人をこっちに呼び戻すんだ!」

不吉なものを感じた仁はエルザにそう叫んだ。エルザも、ただならぬものを感じたらしく、

「爺! ヘルマン! オットー! こっちへ!」

オットーというのは下男の名前らしい。

だが、エルザの呼ぶ声にも3人は従わない。あくまでもゴーレムを迎え撃つつもりらしい。少なくとも執事のアドバーグと護衛のヘルマンは。

「駄目だ! 人間の敵う相手じゃない!」

仁も叫ぶ。礼子なら余裕だろうが、トカ村での例もある、他にゴーレムが現れないとも限らない。

傷付いた乳母、ミーネとそれを庇うエルザ。礼子といえど、2箇所を同時には守れない。

「だめ。あの2人は言うことを聞かない」

呼んでも戻らない2人にエルザが溜め息をつく。

「こうなったら、こっちから助けに行くしかないか」

「え?」

冷静に考えて、1番攻撃力が高いのは礼子。そして、仁も特別製の腕輪を持っている。

そして、防御力。仁は腕輪、礼子はペンダント、エルザも 保護指輪(プロテクトリング) を付けている。

どう考えても、礼子が救援に向かうべきだ。仁はそう考えた。

「エルザ、ミーネをしっかり抱いて、バリアと唱えるんだ」

「うん。『バリア』」

そしてエルザは 魔鍵語(キーワード) を唱える。周囲に障壁が張り巡らされた。それを見た仁は、

「礼子、出来るだけ急いで奴らを倒して戻ってきてくれ」

「はい、お父さまがそうおっしゃるならば」

そして走り出す礼子。

仁はあたりを警戒するように見回し、万が一、賊からの攻撃が来ないとも限らないので、エルザ達と賊の間に立ち、賊の動向に目を凝らし、警戒する。

エルザはそんな仁の後ろ姿に縋るような視線を向けていた。

* * *

「くそっ!」

ヘルマンの振るう剣は、ゴーレムに届くものの、表面に傷一つ付ける事さえ出来ていない。

「まさか……アダマンタイトかよ?」

銀灰色の鈍い輝き、それはアダマンタイトのもの。だとすれば、自分の剣では斬れようはずが無い。

だが、エルザの護衛として、ヘルマンは引く気はなかった。

アドバーグは、ゴーレムを操っている敵を叩くつもりだった。だが。

「なんと!」

鋼の芯が入った杖で殴りつけると、こちらの手が痺れるような手応え。

「ふふふ、術者が無防備だと思ったのか?」

魔導士は自分の周囲に結界を張っていたのだ。

「こいつは……やっかいな相手ですな」

アドバーグにも焦りが出る。

「しかし、狙いはおそらくお嬢様。ならばどうあっても倒さなければいけませ……お嬢様!?」

その守るべきエルザの方を見た執事、アドバーグは背筋が凍るような恐怖を覚えた。

エルザの背後に、ここにいるのと同じ型のゴーレムが迫っていたのだ。

「お嬢様!? それにミーネ!?」

血だらけで倒れているミーネとそれを抱きかかえるエルザ。ゴーレムはそんなエルザ目掛け、突進していった。

「くっ、やはり2体いたか!」

振り向いた仁が叫んだ。

トカ村で襲ってきたゴーレムも2体だった。その予想は当たったが、襲ってきたのは反対側から。

「さっきの賊も後ろからだったな、ゴーレムも同じだったか!」

僅かに後手に回ってしまった仁。その目の前でゴーレムがエルザ達を襲う。

「ふふふ、これで終わりだ」

賊の首領は、一見無防備になった獲物を見て舌なめずりをし、更なる命令を下さんと口を開く。

「ゴーレ……」

だがそこまでしか言えなかった。賊の天地がひっくり返ったのである。

「……あ?」

賊の首領は宙を舞い、次いで地面に背中から叩き付けられる。

ぐうとも言えずに賊は気を失った。

「簡単ですね」

そう呟いたのは礼子。張られた結界を力業で強引にこじ開け、賊を投げ飛ばしたのだ。

次いで、ゴーレムに正対、『桃花』を一閃。

「うおお!?」

それを見ていた護衛、ヘルマンは目を疑った。

自分がいくら攻撃しても傷一つ付けられなかったゴーレムが一刀両断されたのである。

上下に分かれ、金属音を上げてゴーレムは倒れた。魔力回路も切断され、もう動くこともない。

「お父さまは?」

そして礼子は仁を見返った。

エルザとミーネにゴーレムの腕が迫る。

「きゃああ!」

「お嬢様あ!」

思わずエルザとミーネは抱き合い、悲鳴を上げてしまった。

だが、エルザの目に映ったものは、エルザの手前で止まったゴーレムの手。

「……?」

青ざめながらもきょとんとした顔をするエルザに仁の声が、

「『 光束(レーザー) 』」

それは仁単独で使える『 光束(レーザー) 』の数十倍の威力を誇る。

太いレーザー光が通過した後には、下半身が蒸発して無くなったゴーレムが転がっているだけであった。

「ふう、役に立って良かった。その指輪は大抵の攻撃は防ぐんだよ」