軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十八話:宴会とプロケルのご褒美

アヴァロンへ戻る。

暗黒竜グラフロスにコンテナで運んでもらう。

クイナとアウラは黄金リンゴのポーションを飲むなり眠りについた。

二人は今回の戦いですべての力を使い切っていた。

俺が戻ったときに出迎えてくれたが、かなり無理をしていたのだろう。

クイナは俺にもたれかかって寝息を立てている。

可愛い子だ。頭を撫でてやる。

そうすると、眠っているのに笑ってくれた。

ロロノは【創成】によって進化した三騎士たちを調べている。

三騎士はオリハルコンを素材にして作られていたが、【創成】によって、オリハルコンすら凌駕する謎の魔法金属製になり、心臓であるゴーレムコアも新型ツインドライブゴーレムコアが進化し出力と安定性が上がっていた。

ロロノはその秘密を解き明かそうとしているようだ。

原理を調べ上げることで初めて応用が可能になる。

ロロノが全力で作り上げた三騎士から先に進化した機体を調べて糧にし、さらに先へ行こうとする。ロロノの向上心には頭が下がる。

「マスターの力でぶっとんだものができた。進化した三騎士がとてつもなく強くなったことはわかるけど、その原理、構造は一日、二日でわかりそうにない……悔しい」

ロロノが俺のとなりに座ってつぶやく。

「諦めるか」

「諦めない。一日、二日でわからないなら調べ続ける。……お願いがある。この金属がもっとほしい。これがあればもっとアヴァロンの戦力を上げられる」

「一度、マルコにも聞いてみる。オリハルコンの上の金属がないかをな。マルコなら何かを知っているかもしれない」

「ん。お願い。血がたぎる。私の知らない金属との格闘。オリハルコンやミスリルで培った加工技術がまったく通じない。一からの再出発。……すごく楽しみ」

まったく、この子は。

きっと、こういう子だから今までアヴァロンのために革新的な数々の発明をしてくれたのだろう。

ロロノはアヴァロンの心臓で切り札だ。

これからもがんばってもらおう。

宴会が終わったら、三騎士完成のご褒美を忘れずにやらないとな。

「そろそろ、アヴァロンだ」

グラフロスたちが急降下し始めた。

アヴァロンの街を通り過ぎ、【平地】に着陸しコンテナが開く。

眠っていたクイナのキツネ耳がピクっと動きを目を覚ます。アウラも眠そうに目をこすった。

「おとーさん、帰ってきたの!」

「もう起きて大丈夫なのか?」

「やー♪ 宴会を楽しむだけの体力は戻ったの! 宴会が終わるまでは倒れないの!」

凄まじい回復力だ。

むしろ、宴会を楽しむための執念だろうか。クイナはこういうお祭りごとが大好きだ。

「そうか、なら限界まで楽しめ。予算度外視でルーエにやらせたんだ。きっといい酒と食事が揃うぞ」

こういうことに関してルーエは信用できる。あいつは楽しむためには一切の手抜きをしない。なにより、人を使うのがうまい。

そんなルーエが予算という枷を外したのだ。最高の宴になる。

今から宴会が楽しみだ。

「今日は食べて飲んで騒ぐの!」

「ん。私もそういう気分。お酒をたくさん飲んで憂さ晴らし。明日から今まで以上に頑張ろう」

「私もお酒を飲みたい気分です!」

「なら、行こう。俺たちも準備をしないとな」

コンテナの外に出る。

他のコンテナからも次々と魔物たちが外に出る。

さて、ルーエにまかせっきりなのもあれだ。俺も馴染みの店でご馳走と酒を購入しよう。

ご馳走はいくらあってもいい。余ったら余ったで別に使える。

攻撃部隊を引き連れてアヴァロンの裏の顔ともいえる墓地エリアの工場に向かうと、すでに俺の魔物たちのほとんどが集まっていた。

ルーエの部下のオーシャン・シンガーたちがてきぱきと料理や酒を運び、ドワーフ・スミスたちが迅速かつ正確に設営を行っている。

急遽開催を宣言した宴会なのに、すでに形になりつつあった。

攻撃部隊の面々も宴会の準備を手伝いだす。

さすがにグラフロスたちは入れないので別の会場だ。

グラフロスたちもがんばってくれていた。彼らに褒美がないのは可愛そうなので、今回の【戦争】で大量に得たDPを使い【森】をもう一つ購入し、今までレースの勝者だけに許された【森】の動物食べ放題を【戦争】に参加したグラフロスたちに解禁した。

今頃、グラフロスたちは【戦争】以上の熱意で餌の取り合いに夢中だろう。

宴会にはカジノで時間を潰していたマルコも誘っている。

今回は彼女のアドバイスにも助けられているからだ。それに、たまには恋人らしいこともしたい。今日はゆっくりと語り合おうと思う。

俺の姿を見たルーエが駆け寄ってきた。

「ルーエ、さすがに手際がいいな」

「ふふん、歌と踊りと祭りは僕の得意分野だからね! はい、これが宴会に使ったお金の報告。デュークに頼んで倉庫から金貨持ち出したよ!」

ルーエに報告書を受け取る。

今回使った金額を見て少し驚いた。……カジノで三日かけて稼ぐ金額だ。

よくもたった一回の宴会でこれだけ張り込んだものだ。

おそらく酒や食事だけじゃないな。

あたりを見回すと見慣れない調度品の数々があった。ルーエの目利きだけあって、質のいいものばかり。

それらによって会場は華やかになっていた。

「まったく、おまえは。宴会が終わったあと、この調度品をどうするつもりだ」

「このまま工場に飾ろうよ!」

「……スケルトンのパン工場にこんなものを置いてどうする」

宴会にいつも使っているのはパン工場のほうだ。

武器工場よりはましだとはいえ、こんなものを飾る意味がわからない。

「まあまあまあ、固いことはなしだよ。あるとパーッとして宴会がより楽しくなるんだよ! いっつも宴会会場はここじゃん。これは投資だよ、投資」

「一応、言っておくが持ち出してお前の家に飾れば、その分を来月の給料から引くぞ」

「ぎくっ!? あははは、パトロン。そんなことするわけないじゃん。それじゃ、ああ、忙し、忙し。宴会の準備をしなきゃね!」

ルーエが走り去っていく。

まったく油断も隙もないやつだ。

さて、そろそろ来る途中に頼んだ料理ができているころだろう。取りに行かせないと。

クイナが大好物と言った超巨大スペアリブ、ロロノのお気に入りである巨大エビの炒め物、アウラの行きつけの菓子店の生クリームたっぷりのケーキ。それらを指定時間までに作れるだけ作ってくれと頼んでおいたのだ。

今回の戦争で中心的な活躍をした【誓約の魔物】たちへのご褒美だ。

もちろん、アヴァロンを守り抜いてくれたデュークへの褒美も別に用意してある。

それは今回の宴会ではなく、あとでデュークの愛の巣へ行き手渡す。【竜帝】になった褒美兼ねたものだ。

きっと喜んでくれるだろう。

慌ただしく魔物たちが働いてくれたおかげで、宴会の準備が想定よりも早く終わる。

パン工場は宴会のために華やかに装飾され、うまそうな料理と酒が山ほど並んでいた。

ルーエはさっそくオーシャン・シンガーたちに演奏を指示する。音楽は始まりより煌びやかな雰囲気が流れる。

魔物たちは【戦争】で疲れているが、それ以上に楽しみたいという気持ちが伝わってきた。お預けにするのは可愛そうだ。

早速、宴会の開始を宣言しよう。

「みんな、今回も勝った。相手は新人ではない、歴戦の魔王を真っ向からねじ伏せた。……俺たちはすでに新人魔王の軍勢にしては強いのではなく、強い軍勢となった。おまえたちのおかげだ。俺はおまえたちが誇らしい。さあ、今日の宴は褒美だ。いつも以上にうまい酒と料理を用意した。盛大に飲んで食って騒げ、足りなければ酒も食い物もどんどん追加する。全力で楽しめ!」

魔物たちが歓声を上げる。

そして、それぞれの好物の酒をジョッキに注ぎ掲げる。

「さあ、乾杯だ!」

「「「乾杯!」」」

声を合わせて乾杯といいジョッキをぶつけ合う。

そして、各々が料理に手を付け始めた。

笑い声が満ちていく。

こういう優しいひと時が大好きだった。

……守りたいと思う。奪われたくないと思う。俺の愛しい魔物たちを。

「おとーさん、ぜんぜん食べてないの!」

「マスターもこっち来て」

大量の料理が乗った皿を持ったクイナとロロノがやってきた。

クイナはスペアリブをロロノがエビの炒め物ばっかり取っているのを見てうれしくなる。

好物を買って良かった。

「ああ、俺もいろいろ食べようか」

料理が並んでいるところに行く。

ルーエがチョイスした数々のご馳走があった。さすがはルーエだ。俺ですら把握していないアヴァロンの名店を把握しているようで、初めて見る料理が並んでいる。

その中でも点心の数々が圧巻だった。米粉を使い蒸しているおかげで皮が透き通り、中身が見えて綺麗だし食欲をそそる。

そのうち一つを食べてみる。……これはすごいな。

たっぷりの甘い蟹の身が詰まっている、蟹味噌をあえているおかげでコクがすごい。別のを手に取った。こっちは牛肉の辛みそ和え辛さが食欲をそそる。

一つ一つ味が違い楽しくなる。

「おとーさん、美味しいの?」

「ああ、美味しいな。それ以上に次々に新しい味があって楽しい」

「じゃあ、クイナも食べるの!」

クイナがさっそく食べ始める。一つ一つの味が楽しいようでどんどん摘まんでいく。

そんなクイナを見つめていると肩を叩かれた。

白い狼耳と尻尾を持つ美女。マルコだ。

「プロケル、今回も完勝だね。Aランクメダル持ちで戦闘経験が豊富な魔王に真っ向から挑んで勝つ。新人魔王とは思えないよ」

「今回はやばかったな。前回のマルコの救出戦で調子に乗っていたことを思い知らされた。……マルコを襲っていた連中はマルコと戦い消耗し、マルコが怖くて身動きが取れなかったからこそ倒せただけだった」

もし、あれだけの魔王と真っ向勝負していたら敗北していただろう。

なにせ、たった一体の魔王相手にこれだけぎりぎりの戦いになったのだから。

「それに気付けたってだけで大収穫だよ。プロケル、可愛い私の子にたっぷりアドバイスをしてあげるよ。これだけの酒とツマミがあれば夜通し語れるしね」

「ああ、頼む……クイナ、ロロノ、すまない。俺はしばらくマルコと話をする。おまえたちは別行動をしてくれ」

「……わかったの」

「マスター、また後で」

クイナとロロノは一瞬つまらなさそうな顔をしたが、マルコとの会話が俺にとってどれだけプラスになるのかを理解し、去っていった。いい子たちだ。

あとで埋め合わせをしよう。

壁際に用意されたバーでマルコと語り合う。

……このバーはきっとルーエの発案だろう。ゆっくりと語り合うにはちょうどいい。

バーテンダーをアウラがにこにこしながらやっているのは気になる。

「ご主人様、マルコ様。おすすめは特製カクテル。体にいいですよ」

なんて言いながら酒とポーションを混ぜた怪しげな液体を差し出してくる。

一瞬、躊躇したが飲むと体から疲れが抜け、アルコールが染み渡り気持ちよくなってくる。

「あっ、これいいね。私の好きな味だ。もういっぱい」

「はいすぐに。ご主人様は?」

「俺もお代わりをもらおう」

アウラがてきぱきとカクテルを作る。ポーションの比率があがってるのは気のせいだろうか?

というか、どこでアウラはバーテンダー服なんて手に入れたんだ。似合いすぎて怖い。

「プロケルのところの宴会は本当に素敵だね。お酒も料理もいいけど、何より魔物たちがいい顔をしてる」

「俺の自慢だ。みんないい子たちだ」

「きっと、君の影響だろうね。魔物たちは魔王の鏡。魔物がいい子ってことはプロケルがいい子ってことだ」

それから、マルコはいろいろとアドバイスをしてくれた。

俺の知らない魔王の戦い方。反則ギリギリのラフプレイ。

もうすぐ生まれて一年が経ち、新人を守るルールがなくなる俺にとって、最高の餞別だ。

「参考になった。さすがはマルコだ。ありがとう」

「まあね、頑なに私の力に頼らないプロケルにできるのはこれぐらいだからね。……一応言っておくけど、今後複数の魔王との【戦争】になれば私は黙ってないから。今回と違ってね」

今のマルコは俺の魔物であり、マルコのダンジョンも実は俺のダンジョン扱いだ。

今回の【戦争】では、マルコが言うには【戦争】開始直後にプロケル陣営として参加するか参加しないかを選択できたようだ。

この決定権がマルコにあるのは驚きだった。

「断ってくれてありがとう。切り札を見せるのはまだ早い」

「そういうと思っていたよ」

マルコと、マルコの魔物がいれば今回の【戦争】は余裕で勝てた。

だが、それはしたくない。

マルコを俺が救ったことは周知の事実だ。

だが、【新生】により俺の魔物となり、マルコのダンジョンが俺の支配下にあることは俺たちの他には【竜】と【刻】しかしらない。

【戦争】開始時にマルコのダンジョンと魔物が現れれば、相手の戦略を覆せる。

マルコの力に頼らないのは俺のプライドだけの問題ではない、いざというときのための切り札とするためだ。

「プロケル、君はきっと最強の魔王になる。私が導くからね……というわけで、まずは君に女を教えたいと思うんだけど、今夜どうかな?」

「……ごふっ、いったい。なんの冗談だ」

「本気なんだけどね。そろそろ恋人らしいことをしたいよ。それにプロケルは童貞だよね? 魔王がそれじゃかっこがつかないよ」

痛いところを突かれた。

俺は童貞だ。自分の娘たちに手を出すほど外道ではない。……そして、何度か娼館に行こうとしたがその勇気がなかった。

「わかった。抱かせてもらう。一応言っておくが童貞を捨てたいから抱くわけじゃない。マルコが好きだからだ」

「ふふっ、そういう可愛いところ好きだよ」

こうして、宴会の後の予定が決まった。

今日は酒はほどほどにしよう。

……飲みすぎると、うまくいかないと言うし。

そして朝方になり宴会は終了し、俺はマルコと共に別荘である黄金リンゴの馬車のほうに向かった。そこなら邪魔は入らないだろう。