軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十七話:創造主のご褒美

【水晶】を砕き、【戦争】が終わった。

創造主によって【転移】させられる。

さて、元居た場所に戻されるか、それとも創造主の元か。

今回はどちらだろう?

ゆっくりと目を開ける。

円卓に座っていた。

少なくとも【転移】させられる前にいた【豪】の魔王のダンジョンではないようだ。

「思い出した。ここには来たことがある」

【鋼】をはじめとした三体の魔王との【戦争】のあとに連れてこられた場所だ。

円卓の中央の座に光が満ち、人の輪郭を形どる。

落ち着きのある老人が現れた。

創造主は決まった形を持たない。創造主に相対したものがイメージした姿となる。

俺にとっての創造主がこういう姿なのだろう。

「【創造】の魔王プロケル。今日も楽しませてもらった。プロケルほど強く輝く星の子はそうはいない。いずれプロケルなら星の子ではなく、真に輝く星へ至るかも知れぬ」

しわがれた声で機嫌が良さそうに創造主が俺をほめる。

さりげなく、重要なことを言っている。

星の子ではなく、星になる。きっとそれはただの比喩表現ではない。

創造主の顔を見るとにやにやと笑っていた。

おそらく、星になることの意味を聞いてもはぐらかせるだけだろう。この人は意味ありげなことを言って俺の反応を見て楽しんでいるのだ。

いい加減、俺も創造主のことがわかるようになっていた。

だから、あえて無視して話を進める。

「楽しんでいただき光栄です。……今日この場に呼んだのはこうして、お褒めの言葉を与えるためでしょうか?」

一応は俺を生み出した存在だ。

敬意をもって接しよう。

「いかにも。だが、我は言葉だけで済ませるほどケチではない。楽しませてくれた星の子らには報いる。褒美を取らせよう……しかしのう。なぜおまえはせっかく与えた褒美を使わない? 我は悲しいぞ」

それは、【鋼】を含めた三魔王と戦ったときに得られたときの褒美のことを言っている。

俺はできる限り創造主から与えられた力は使わないようにしていた。

マルコから忠告を受けていたからだ。

創造主は魔王たちに苦悩を楽しむ。

創造主から与えられた力は魅力的で魔王の力になるが、同時に必ず落とし穴がある。

ただ理不尽を与えるだけならば魔王は創造主を恨んで終わりで苦悩にならない。

だから、落とし穴は正しい判断をすれば避けられる代わり、わずかでも道を誤れば魔王たちが一生悔いて苦しむように設定されている。……非常に性質が悪い。

それがわかっていて、【新生】は二回とも使ってしまったが、そうしないとデュークとマルコを失っていた。たとえ、今後苦悩するとしてもあの場で二人を失うよりもいいと決断して使ったのだ。

幸い、もう一つの褒美を使わないいけないほど追い詰められたことは今のところ一度もない。

「創造主の力に頼ってばかりでは甘えが出ます。私はできる限り私の力で戦いたいのです」

あんたの褒美には地雷があるからできるだけ使いたくない。

そんなことは言えないのできれいごとを言う。

「立派な心掛けだがつまらんのう。力は使うためにあるのだ。そうだ、使用期限を設けよう。……先の褒美、【ランクアップ】はそうさのう、これから二か月以内に使わえ。でなければひどいことになろう」

めちゃくちゃを言う。

ひどいこととあえてぼかして言うあたりが嫌らしい。

……二つ目の戦いで得た褒美、【ランクアップ】。

その名前の通りの能力だ。魔物を一つ上のランクに押し上げる。

それだけでも強いが【ランクアップ】の際には魔物の傷を癒し、魔力を最大回復させる効果がある。

これを温存していたのは、魔物たちが瀕死の重傷を負ったときに救うためだ。

魔力が回復できることもあり【ランクアップ】した直後に、勝てなかった相手にランクを一つ上げて万全の状態で挑める。

十分に切り札足りえる力だ。

だが、どう考えても便利で強すぎる。落とし穴も大きいはずだと警戒を強めていた。

「わかりました。二か月以内に使いましょう」

使いたくない能力だが、脅された以上使わざるを得ない。

Sランクの魔物をさらに【ランクアップ】したらどうなるかは気になるがクイナたちには使わない。

大事な娘たちをギャンブルのチップにする気はない。誰に使うかはきっちりと考えよう。

「うむ、いい心がけだ。そして、喜ぶといい。新たな褒美を今から与えよう」

創造主の指先に光が宿り、その光がふわふわと飛んできて俺の額にあたる。

新たな能力が与えられた。

これは一見便利そうな能力だが……。

「ありがたくいただきます」

「うむ、喜んでもらえて我もうれしいぞ。すみやかにその力を使うことだ。期限は儲けぬが、また我に催促なんてさせるな」

「はい、使うべきタイミング使わせていただきます」

創造主からの褒美はちょっと考えないとな。

今までは使わないという選択肢があり、もしもの保険に温存で来ていたからこそ、可能な限り褒美を得ておきたいという気持ちがあった。

実際、【ランクアップ】もクイナたちが瀕死になり、使わなければ助からないなら使っていただろう。落とし穴があるとはいえ、保険があるという事実で精神的に余裕ができていた。

だが、こうして強要されるなら、今後は創造主を楽しませない勝ち方をする努力が必要かもしれない。

「では、【創造】の魔王プロケル。新たな星の子の中でひときわ輝く子よ。帰るといい。さらなる輝きを期待する」

体が【転移】の浮遊感に包まれる。

今回の創造主との謁見はある意味、【戦争】以上に疲れた。

アヴァロンに戻ってゆっくりと休みたいものだ。

【転移】が終わる。

俺がいたのは平地だ。そうか、水晶が砕かれて【豪】の魔王のダンジョンは消えてなくなったのか。

俺の配下たちが勢ぞろいしており、一斉に俺を見る。

「みんな、待たせたな。アヴァロンに帰ろうか」

「おとーさん、お帰りなさいなの。帰ったら宴会なの!」

「ん。ゴーレムたちにも手伝わせる」

「私ももちろん参加しますよ! 【戦争】の間、黄金リンゴに体重を預けて寝ていたら、だいぶ回復しました!」

俺の【誓約】の魔物たち。クイナ、ロロノ、アウラが最初に駆け寄ってきた。アウラは【戦争】の途中にアヴァロンに戻ったが、【戦争】開始前の場所に【転移】されてここにいるようだ。

「宴会か、悪くないな。祝勝会を開こうか」

「今日はご馳走なの!」

今回の【戦争】はあまりにも急だから、そんなことは考えていなかった。

だが、いつも勝てば宴会を開きご馳走を振舞っている。

今回だけないとなるとみんながっかりするだろう。

「盛大にやるぞ。ルーエ、聞こえているか? おまえはアビス・ハウルの力で先に戻り、アヴァロン待機組と力を合わせて宴会の準備を始めておけ」

近くにあった水たまりに波紋ができ、次の瞬間青い髪の美少女が飛び出す。

ルルイエ・ディーヴァ。異界の歌姫のルーエだ。

「ええええ、今回かなりがんばったのに。僕にまだ働かせるの。パトロンは人使いが荒いよ」

「……ちなみに今回の宴会は予算の上限なしだ。ついでに酒のチョイスはおまえに任せようと思うんだが」

ルーエがめんどくさそうな顔から一転してとてもいい笑顔を浮かべる。

餌に喰いついたようだ。

「愛しのパトロン、僕は今すぐ戻って宴会の準備を始めるよ! みんなも早く戻って来てね。ぐふふふふ、飲みたかったビンテージワイン、あれとか、あれとか、あとは超一級品のブランデーに最近ウイスキーの高くていいのがアヴァロンに出回ってたよね。ふふっ、飲みたいけど、無駄に高くて自分のお金じゃアレなやつ買い占めないと。いいお酒にはいいツマミ。そっちも厳選しないとなーやることがたくさんだ!」

怪しげに笑ってルーエがアビス・ハウルと共にアヴァロンに戻っていった。

ルーエに任せれば、最高の酒とツマミを集めてくれるだろう。いろいろあれな奴だが、芸術センスと味覚のセンスは飛びぬけている。

それにアヴァロンにはデュークも残している。

連携してうまくやってくれるはずだ。

「さあ、撤収だ。総員、コンテナに乗り込め!!」

魔物たちが一斉に動き始める。

【戦争】の余韻を噛みしめ、宴会楽しみなどと笑いあう。

そんな魔物たちを見るとほっこりする。

今回も勝てて良かった。もし、負ければ……。

「すべてを失うか……何もなくなるんだな」

ただの平地になった【豪】の魔王のダンジョンを見て、胸が苦しくなった。

水晶が砕かれれば、ダンジョンも魔物もすべて消える。

今笑いあってはしゃいでいる大事な魔物も、ようやく俺の理想を叶えつつある街もすべて。

その現実を改めて感じる。

俺の体が内側から熱くなった。水晶を砕いたことで【豪】の魔王の能力が宿り、月に一度のメダル生成で【豪】のメダルを選べるようになったのだ。

Aランクのメダルが自分で作れるのは【創造】を使う俺にとって大きな意味を持つ。

そして、【豪】の魔王の能力は非常に使いやすい。

犯した雌を支配する能力は必要ないが、身体能力の強化は非常にありがたい。魔王が死ねば終わりだ。魔王は強いにこしたことはない。

思えば、水晶を砕けば魔王の能力を得るという能力をろくに使っていなかったな。

俺がこれまでに砕いた水晶は【豪】を入れて四つだ。

【鋼】:鋼を任意の形で呼び出せる。武器の生成などに利用

鋼の武器を生み出す力にまったく必要性を見いだせない。弱い素材の武器など必要ない。

【粘】:粘液を自在に出せる。粘液の硬質化も可能。

この粘液は耐衝撃・耐魔術能力がある他、炎の遮断や不凍液の代わりにも使える。傷を癒す効果まであり意外に便利だ。固めれば鋼の高度を得て即席の武器にもなる。ただ、今まで使う機会がなかった。

【邪】:犯した雌に魔物を孕ませる。母体の強さに応じた強さの魔物が生まれるが母体への負担は非常に大きい。

……いったい、これをどう使えと。俺の娘たちに使うのは論外。他の魔王の魔物に手を出すつもりもなければ、俺は人間との共存を目指しているので人間を襲うつもりもない。一生使うことはないだろう。

ここに来て、ようやく使える能力を得た。

並べてみると【創造】の強さがよくわかるな。頭一つ抜けてる。

「おとーさん! 出発の準備ができたの!」

クイナが呼んでいる。

そろそろ行こうか、みんなが待っている。

俺は絶対に負けない。街も魔物たちも失わない。

そのためにもっと強くなろう。今回のような苦戦を二度としないぐらいに。

俺はコンテナに向かって走る。さあ、帰ろうか。俺たちのアヴァロンに。