軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

96.ドラゴンの母艦と最強の艦長

「すごい、すごい、すごいですわ!」

身をのり出しながら、地平線にむかって伸びていく街道を見て、カトリーヌ嬢は大興奮していた。

それを少し離れた所で、座っている俺とジャンヌが眺めている。

今、俺達はリボーに向かっている。

最初は手紙をもらうだけの筈だったのだが、カトリーヌ嬢が急遽自分もいって、直接ブーケ男爵に頼むといいだしてくれた。

手紙よりも本人が行って頼んでくれた方がいいのは間違いないので、俺はお礼をいってカトリーヌ嬢に同行してもらうことにした。

カトリーヌ嬢というゲストが同行することになったから、歩きでも馬車でもなく、パトリシアで行くことにした。

パトリシアは大型種さながらの運搬力と、俺が作った竜具によって「受肉」したため、体を自由自在に変形することが出来る特徴がある。

今も、俺達はパトリシアの背 中(、) に入っている。

まるでラクダのコブをくりぬいて、そこを部屋みたいにした感じだ。

それに乗ったカトリーヌ嬢が大興奮しているというわけだ。

そのカトリーヌ嬢は大興奮したまま、こっちをむいた。

「すごいですわシリル様! こんなドラゴン初めて見ますわ」

「ああ、パトリシアは世界でたった一人だけの存在なんだ」

「一頭だけ!? そんな希少なドラゴンを……さすがシリル様ですわ!」

パトリシアがオンリーワンだって聞くと、カトリーヌ嬢はますます大興奮した。

「それよりも立ちっぱなしは疲れるだろ。リボーまで長いんだから座るといい」

「そうですわね、では失礼して――」

カトリーヌ嬢はすこし落ち着いた様子で、まわりをきょろきょろして、座る場所を探した。

「ああ、パトリシア。彼女のそばに椅子を作ってやってくれ」

『はぁい、わかりました』

パトリシアが俺のオーダーに応じてくれた。

彼女の身体の中にいるという形だからか、聞こえてくる声は四方の壁からという、なんとも不思議な聞こえ方だった。

その直後、カトリーヌ嬢の少し横に、にゅっ、って感じで椅子が出てきた。

まるで粘土を迫り上げて捏ねてできたような出来方で不思議な光景だ。

「なにこれ! すごいですわ! これ、今のシリル様のご命令でなったのですわよね」

「そういうことだな」

「すごいですわ!!」

カトリーヌ嬢はめちゃくちゃ興奮した。

ボワルセルを出てからと言うものの、彼女は目についたものすべてに興奮していた。

そんなに興奮しなくてもいいのに、って位興奮した。

箸が転んでもおかしい年頃――に近い興奮の仕方だった。

「めちゃくちゃ興奮するんだな……」

「気持ちはわかります」

横から、それまでずっと黙っていたジャンヌが静かに口を開いた。

「シリル様のまわりは刺激的な事ばかり、家の中で大事にされて育った者には何もかもがすごい事ばかりなのです」

「そういうものなのか」

俺はなるほどと頷いた。

ジャンヌも王女様なのだから、立場とか経験はカトリーヌとほぼ同じなので、彼女の気持ちがわかるんだろうな。

「あら?」

「どうしたんだ?」

「あれはなんですの?」

カトリーヌ嬢はそう言って、「窓」から外を指さした。

俺は彼女の横に行って、彼女が指さす先に目を凝らす。

地平線の向こうで、大量の砂煙が巻き起こっていて、それがこっちに向かってきていた。

「なんでしょう」

ジャンヌも横にやってきた。

「…………ああ、トニービン・ウルフだな」

「ええ? では魔物なのですか?」

驚くカトリーヌ嬢。

「ああ」

「ま、魔物……大丈夫、なのですわよね」

「ああ、大丈夫だ」

俺は即答した。

「で、ですが。こちらに向かってきますわよ」

「問題ない。エマ、ルイーズ。出撃だ」

『分かりました!』

『任せてゴシュジンサマ!』

二人が返事して、俺達の下から飛び出した。

俺達の下にも部屋があって、その部屋の中にエマとルイーズが乗っている。

そして俺の号令とともに、パトリシアがその部屋を開いて、エマとルイーズが飛び出していった。

飛び出した二人は、迫ってくるトニービン・ウルフの群れに飛び込んでいった。

エマは俺の作った竜具をつけてトニービン・ウルフに敢然と立ち向かい、ルイーズは少し進んだところで立ち止まって、特技のビームを放ってトニービン・ウルフをなぎ払っていた。

戦闘向きのドラゴン二人が、トニービン・ウルフの群れを相手にたちまわる。

「すごい! ドラゴンの中からドラゴンが出てきましたわよね!」

「ドラゴン・キャリアってやり方だ。大型種じゃないとできないやり方だな」

「ドラゴン・キャリア……なんだか格好いいですわ!」

「私もそう思います。話には聞いてましたが、実際に見たのは初めてです」

ジャンヌはカトリーヌ嬢に同調した。

やはり生まれが似ている者同士、二人は同じ感覚で興奮していた。

「そういえば、どうして今回はルイーズを連れてきたのですか?」

ジャンヌが思い出したかのように聞いてきた。

「今まで戦闘があるときに連れて行かなかったのは彼女がねぼすけだからなんだけど、パトリシアで運べばその間は寝れるからな」

「なるほど」

「パトリシアのおかげでルイーズも働く場面が増えたわけだ」

「もっと、ドラゴンを増やすと壮観になりそうですね」

ジャンヌはそういった。

それがまさに、トタンを集める目的だから、俺はにこりと微笑んで小さく頷いた。

『あっ!』

『ごめんなさいゴシュジンサマ!』

前線に出撃していった二人が同時に声を上げた。

二人が抜かれて、数頭のトニービン・ウルフがこっちに突進してきた。

「こ、こっちに来ますわ」

「大丈夫」

俺は両手を突き出して、指から炎を放った。

九指炎弾。

無数の炎の弾が、突進するトニービン・ウルフを打ち落とした。

「ここは俺がいるから」

「は、はい!」

「さすがシリル様……」

トニービン・ウルフをあっさりと撃ち倒した俺を、左右から、カトリーヌ嬢とジャンヌがうっとりした目で見つめてくるのだった。